浅草に3月、日本酒をたっぷりと練りこんだ高アルコール度数のアイスクリーム専門店「SAKEICE Asakusa shop」がプレオープンした。
SAKEICEのアルコール度数は約4%。従来の酒粕入りアイスや微量のアルコール分を含むアイスとは違う、原料に日本酒をたっぷりと使用したほんのり酔える大人な味わいのアイスに、多くの注目が集まっている。
新しい着眼点のアイスはどのように誕生したのか?同店を運営する株式会社えだまめのSAKEICEディレクター 丹波由布子(タンバ ユウコ)さんに、開発のこだわりや仕事の流儀を取材した。
お酒ごとに味わいが変わる日本酒に着目
丹波さんは2020年に東京海洋大学食品生産学科を卒業。大学では日本でも数少ない冷凍学専門の研究室に所属し、アイスクリームについて研究するとともに、大手アイスクリームメーカーの委託研究なども担当。
大学3年時から、冷凍技術コンサルティング・商品開発などを展開する株式会社えだまめのSAKEICE事業にインターンとして関わり、企画・商品開発・PRなどを担当。2020年に新卒で同社に入社したという。
-----「高アルコール度数のアイス」というアイデアは、どのような経緯で発案したのですか?
丹波さん:元々SNSなどで「アイスクリームにお酒をかけると美味しい」という説があり、一部の人に人気がありました。
開発メンバーがお酒&アイス好きで、「お酒をかけるのではなく、練りこんだら美味しいのでは?」と考え、 Amazonで購入した家庭用アイスクリームメーカーでお酒を混ぜ込んだアイスを作ってみたところ、とても美味しく面白いアイスができたので商品化を進めました。
テキーラやウイスキーなどいろいろなお酒で試作し、使用するお酒を日本酒に決めたそうだ。
丹波さん:使用するお酒ごとに変わる味わいが美味しい&面白いこと。
また、弊社のミッションである「冷凍技術×デザインで世界に日本の美味しさを広げる」にマッチしていることから、日本酒アイスの企画がスタートしました。
「高アルコール濃度」にこだわり開発
-----開発にあたってこだわった点を教えてください。また、それを実現するために、どのような工夫・努力をしましたか?
丹波さん:SAKEICEの特徴は、なんと言っても高アルコール濃度(約4%)のアイスであることです。
しかし、高アルコール濃度の日本酒アイスをつくるには、2つのハードルがあったという。
丹波さん:1つ目のハードルは、高アルコール濃度にするとアイスが固まりにくくなることです。
ウイスキーの瓶を冷凍庫に入れても凍らないように、アルコールは通常のアイスを作る際の温度ではなかなか凍りません。
そこで、幾度もレシピを検証し、アイスクリームになる、かつ日本酒の美味しさが感じられるレシピにたどり着きました。
丹波さん:2つ目のハードルは、使用する日本酒の選定です。
食品は凍らせると、味・香りが感じにくくなります。そのため、日本酒をアイスクリームに入れることによって、日本酒の繊細な味・香りが表現しにくくなります。
よって、日本酒アイスで日本酒の美味しさを感じてもらうためには、香りが強い・米の甘みが強いなど、特徴の強い日本酒を使う必要がありました。
また、同商品は当初インバウンド観光客をメインターゲットにしていたため、試作段階で外国人に実際に食べてもらい、日本酒に馴染みの無い人にも美味しいと思ってもらえるレシピを検討したそうだ。
ベストバランスを探し「4%」に到達
-----「4%」というアルコール度数は、どのように決めたのですか?
丹波さん:SAKEICEがこだわったのは、日本酒の美味しさをいかにアイスクリームで表現するかです。
アイスクリーム中の日本酒の配合が多すぎると、アイスとして固まりにくくドロドロした状態になりやすくなります。しかし、逆に日本酒の配合が少なすぎると、それぞれの日本酒の美味しさ・アルコールのキレ等が感じられません。
そこで、レシピ・日本酒の銘柄・アルコール度数・製造方法などを変えて100回以上試作を繰り返しました。
そうして、日本酒の美味しさとアイスクリームの美味しさの両方でベストなバランスを探した結果、アルコール濃度「4%」という最適解にたどり着きました。
同店では通常の日本酒アイスに加えて、期間限定日本酒アイスも提供。(4月6日時点では、北海道・旭川の地酒「男山」を使った限定商品「男山アイス」)
通常の日本酒アイスと期間限定日本酒アイスを食べ比べてみると、日本酒の美味しさの違いが良くわかるそうだ。
丹波さん:日本酒アイスは、 口に含んだ瞬間はミルクアイスのように感じられますが、後味 ・戻り香でキレのある日本酒感が楽しめます。
男山アイスは、口に入れた瞬間に日本酒の旨味・お米の甘味が感じられますが、後味は割とマイルドです。
日本の食文化の魅力を世界へ
これからも日本中・世界中の酒蔵とのコラボを予定。日本に2万以上あると言われている多様な日本酒銘柄をアイスクリームとして楽しむ新しい体験を提供するという。
-----SAKEICEに込める情熱の源は?
丹波さん:私たちは、「冷凍技術×デザイン」の力で、日本の食文化の魅力を世界に広げたいという強い思いを持っています。
SAKEICEをただの食品としてだけではなく、日本酒の美味しさを伝えるための「体験」として提供したいと考えています。
日本酒の美味しさは世界で注目されつつありますが、まだそのポテンシャルを十分に発揮しているとは言えません。
日本に1400以上ある蔵元には、それぞれの味・歴史・作り手の想いがあります。これらを世界の人に伝えていく体験の場・きっかけとなる商品としてSAKEICEを作っていきたいです。
-----仕事をするにあたって、良いアイデアを出すために日頃から心がけていることや大切にしている事を聞かせて下さい。
丹波さん:普段から、日本酒とアイスについてアンテナを自然と張っています。日本酒の店があれば必ず寄って、気になる日本酒を買ったり、気になるアイスクリーム店があれば休みの日に行ってみたりしています。
日本酒とアイスの風味にこだわりが強すぎて、社内でのあだ名が「香り原理主義者」になったほどです。
もともと日本酒が好きな人だけでなく、これまでは日本酒をあまり知らなかった人にもその美味しさを伝えていくSAKEICE。今後、どのような味わいの日本酒アイスと出会えるのか楽しみだ。
【SAKEICE Asakusa shop】
・住所:東京都台東区浅草1-7-5
・営業時間:10時~18時
・定休日:なし
※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、当面のあいだ臨時休業(再開日は未定、公式Twitter・Instagramにて案内)
※CAMPFIREにて4月22日よりクラウドファンディング形式で通信販売をスタート。リターンとして、SAKEICEのセットや店舗で使えるお得なチケットを用意している。
出典元:SAKEICE
出典元:SAKEICEクラウドファンディングサイト
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