京都府京都市に店舗を構えるボタン専門店「エクラン」が、「壁一面全部ボタン」「まるでボタン博物館」「すごい数なのに店主が全商品を把握していて、プロの仕事だ」とネット上で話題を呼んでいる。
なぜボタンをここまで集めることができたのか、同店の店主に話を聞いた。
半世紀かけて集め続けた商品
現在79歳の店主は、15歳の時からボタンに関わる仕事に就いているという。60歳で独立し、その後、フランス語で「宝石箱」を意味する「エクラン」を立ち上げ、店主となった。
ーなぜボタンだったのでしょうか?
元々ファッションには興味がありましたが、最初からボタンが好き!というわけではありませんでした。
ただ長く仕事をしていく中で、だんだん興味がわき、製造工程、素材、手仕事の凄さなどに惹かれ、多種多様なボタンの世界を極めていこうと思うようになりました。
商品の価格は、1個30円ほどから、3万5000円まで。取り扱い商品数を尋ねると、「厳密に数えたことはないが100万個くらいはあると思います」とのこと。
ーどこでどのようにして仕入れているのですか?
約50年ほど前から様々な国に自ら足を運んで直接見ることで勉強し、買い付けてきました。主にフランス、イタリア、ドイツ、スペインなどヨーロッパが多かったです。
店舗では、ボタン、バックル(ズボンや腕時計などのベルトの留め金)、レース、ブレード(絹、木綿、ビーズなどで作られたテープ状のひも)などを取り扱っています。
洋服とのマッチングや独創性にもこだわる
ネット上では、「持参したボタンを見せて、『これと似たものが欲しい』と言うと、(膨大な数の中から探して)すぐに出して下さる」などと、プロ意識を感じさせる店主の接客に関しても好評だ。
ー仕事をするうえでのこだわりがあれば教えて下さい。
洋服とのマッチング、アクセサリー、付属品なども含めた独創性、価格面など、ご来店のお客様が心から納得していただける販売をしたいと心がけています。
同店の公式Instagramでも、季節に合った色合いの商品などがタイムリーに紹介されており、「客が欲しいものを出すだけではなく、提案する」姿勢が垣間見られる。
▼3月に紹介された春らしい色合いのボタン
▼ 2月に紹介されたバレンタインデーにちなんだハートのボタン
店客によるネット上の書き込みにも、「『ブラウスに付いているボタンが気に入らないので別のものに替えたい』と伝えたら、『付いているボタンも素敵ですよ』と、商品を押し売りするのではなく親身になって一緒に考えてくれた」というコメントが寄せられており、店主の「お客様が心から納得していただける販売」が常に実践されていることが分かる。
好きな仕事をとことん追求
約半世紀という長い年月をかけ、世界中からボタンを集めてきたという店主。「好きな仕事なので、特に困難や苦労を感じたことはない」というが、おそらく好きだからこそ、大変なことも苦難に感じなかったのだろう。
ここまでボタンを集めることができたのは、まさに「好き」という気持ちがあったからだ。そして、それを「極めたい」「この仕事で人を幸せにしたい」という強い信念があったからこそ、客からも愛されるお店へと成長していったのだ。
今後について尋ねると「もう歳なので家族と相談しつつ出来る範囲でやっていきたい」と謙虚な姿勢が見られたものの、好きなことを追求し、周囲からも喜ばれる仕事に誇りを持つ店主の姿に、「継続すること」「特定の分野を極めること」の重要性を学べるのではないだろうか。
■店舗概要
〒604-0931
京都府京都市中京区寺町二条下がる榎木町98
TEL/FAX 075-254-5208
定休日:毎週火曜、祝日、年末年始、夏季休業
(仕入れなどで臨時休業もあり)
営業時間:10:00~18:00
店舗ウェブサイト
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