新型コロナウイルスの影響で、注目が集まっている「リモートワーク」。オフィスへ出社せずに働くリモートワークですが、普段とは違った遠隔でのコミュニケーションや社員管理に導入のための課題を抱える企業もあります。
そんな背景の中、ママ向けQ&Aアプリ「ママリ」などを運営するコネヒト株式会社が主催する「こんなときだからリモートワークについて本気出して考えてみた」が3月11日に開催されました。ZOOM(ズーム)を使ってオンライン配信で実施された本イベントには、100名近くのオーディエンスが集まる盛況ぶり。
LT(ライトニングトーク)セッションの同イベントに登壇したのは、以下の4名の方々です。
・コネヒト株式会社リモートワーク推進チーム 安達稜さん
・アル株式会社取締役CTO 和田修一さん
・株式会社バーグハンバーグバーグ代表取締役社長 長島健祐さん
・株式会社キャスター取締役COO 石倉秀明さん
働き方としてリモートワークを導入している各社は、社員が円滑に業務を進められるようにどんな工夫をしているのでしょうか? リモートワークについて学びを深めた1時間を、ギュッと凝縮してお届けします。
リモートワーク推進チームを設置/コネヒト株式会社
コネヒト株式会社 安達 稜
フロントエンドエンジニア。SIerにてスマホゲームやEC関連のシステムなどの開発を経て、2016年にコネヒトに入社。現在はフロントエンド基盤の整備やプロダクトのWeb面の開発などをメインに行っている。直近は全社にむけリモート推進を行い、知見を共有している。
社内向けにまとめていたリモートワークの知見をすべて公開します- コネヒト開発者ブログ
1月にリモートワークを試験導入してから2月に全社的な導入に切り替え、3月もリモートワークを継続しているコネヒト。安達さんは、リモートワークを社内に浸透させるには「リモートワークへの違和感をなくすこと」が重要だと話します。
安達さん「リモートワークへの違和感をなくすため、社内でリモートワークを推進するチームメンバーを募り、会議を開いています。そこから出た意見を随時反映させていますね。例えば、リモートワーク時に使用するツールは、推進チームメンバーが検討し、利用環境を整えたものです」
コネヒトで主に導入しているのは、
・チャットツールの「Slack」
・ビデオ会議ツールの「ZOOM」
・コミュニケーションツールの「Sneek」
・ノイズキャンセリングツールの「Krisp」
ここでは「ZOOM」の利便性について話してくれました。
安達さん「コネヒトがZOOMを選択した理由は、映像や通話、機能など、全体的に品質が高くて安定しているから。全社的に導入するとけっこうな金額がかかりますが、既存のサービスと比べると品質がダントツで高いのが決め手です。
ZOOMのいいところは、バーチャル背景が使える点。各社員のプライベート空間である部屋のなかをミーティング時に見られずに済みます。またSnap Cameraというツールを組み合わせれば、自分の顔を個性的に加工できるため、オンラインでもクスッと笑えるようなコミュニケーションが取れます」
リモートワークを推進するためのツールは、使ってみないと自社の文化に合うかわからないもの。安達さんは「良さそうなツールを探し、検証を繰り返し……と根気強く行うことが大切だと思います」と締め括りました。
登壇資料はこちらからご確認ください。
https://speakerdeck.com/dachi023/connehito-marche-online-20200311
普段からリモートワークを想定した動きを/アル株式会社
アル株式会社 和田 修一
株式会社nanapi取締役CTOを経験し、2014年に同社をKDDIへ売却。開発やマネジメント/採用/技術広報などに携わる。CTO退任後はコンサル・技術顧問・エンジェル投資などで複数の会社と関わる。 2019年2月にアル株式会社 取締役CTOに就任し、現在に至る。直近の開発領域はiOS/Nuxt.js/Vue.jsなど。
会社の状況やメンバーの雇用形態に合わせて3種類のリモートワークを導入しているアル。
基本的には、東京オフィスにそもそも出社できない遠方メンバーは「リモート前提雇用」、東京オフィスのメンバーが当日申請でリモートワークをする場合は「申請リモート」の2種類が運用されています。また、天災などにより、会社が出社すべきではないと判断した場合は「会社判断のリモート」が適用されます。
アルでは、新型コロナウイルスの流行により、1カ月ほど会社判断のリモートワークを継続しています。和田さんは、「いざ導入するときに慌てないよう、リモートワークを前提とした仕組みづくりを普段からしておくこと」が重要だといいます。
和田さん「リモートワークでも意思決定をスムーズにできるよう、普段からそれぞれの役割で決められる範囲を明確にしています。
業務は、Slackを使ったテキストコミュニケーションが基本。リモートメンバーを含めて会議をするときは、ZOOMを活用していますね。
リモートワークを前提とした仕組みづくりをし、社内に浸透させていくには、“特別な働き方”ではなく“普通の働き方”として扱うことがポイントです。オフィス出社でもリモートワークでも、同様に仕事ができるような環境をつくっておかなければなりません。
例えば、会社にいないとアクセスできない情報をなくす、意思決定はGoogleドキュメントに残しておくといった働きかけができます。普段、オフィスで仕事をしているときに『このやり方でリモートワークに対応できるのか』と行動をひとつずつ見直すことが大切です」
リモートワークは、一朝一夕では浸透しません。和田さんのパートでは「オフィスワークとリモートワークの垣根を、普段からどう無くしていくか」の本質的な内容について語られました。
登壇資料はこちらからご確認ください。
https://speakerdeck.com/wadap/20200311-konehito-rimotowakuwozhi-eruwen-hua
会社にフィットするやり方を随時アップデート/株式会社バーグハンバーグバーグ
株式会社バーグハンバーグバーグ 長島 健祐
大学卒業後、レコード販売などの小売業、動画共有サービスの広告営業、ライセンス事業やメディア運営など様々な経験を経て、2016年にバーグハンバーグバーグに入社。19年に代表取締役社長に就任。
クスッと笑えるWebメディア「オモコロ」を運営し、祝日がない6月に「あったらいいなジャンボエクレアの日」などのオリジナル祝日を制定している、バーグハンバーグバーグ。バラエティに富んだ社内制度を見ると柔軟な就業規則を取り入れているように思えますが、実は新型コロナウイルスの影響を受けるまで、リモートワークは原則禁止でした。
そんなバーグハンバーグバーグがリモートワークを推進するにあたり、大切にしていたポイントは3つあります。
長島さん「ひとつ目は、リモートワークは『善』の意識を社員に広めたこと。“リモートワークをすることは会社にとっても良いことである”と認識してもらわないと、社員がオフィスに出社してしまいます。万が一、出社する場合も『通勤ラッシュは避けて』と強くメッセージを打ち出していました。
ふたつ目は、勤怠管理をしっかりすること。なぜ勤怠管理を重視したかというと、社員の生活リズムが崩れていないか、労働時間は適切かをチェックするため。勤怠管理ツール「ジョブカン」を活用し、仕事始めと仕事終わりにしっかりと打刻するように社員に伝えました。
3つ目は、オンラインミーティングのツールを指定したこと。スムーズにミーティングが出来るように最低限使用するツールは会社側で決めました。また、希望する社員には、ヘッドセットの支給もしました。実施する中の課題としては、議論系のミーティングの仕切りが難しいこととわかったので今後改善していきたいです」
リモートワークに切り替えるにあたり、2月17日に経営陣で会議し、2月18日に社員に共有・実行、と急ピッチで準備を進めたバーグハンバーグバーグ。「事態が事態だから『まずはやってみよう』からスタートしました。今は社員から意見を集めて、週1回アップデートをかけています」とのこと。
まずは始めてみてから細かい軌道を修正し、働きやすい環境を整えていく。スピーディーにリモートワークを導入することが迫られるこの状況で参考になる考え方でした。
登壇資料はこちらからご確認ください。
https://speakerdeck.com/nagashima/konehitomarusiedeng-tan-zi-liao-baguhanbagubagu-20200311
リモートワークは成果が見える化する働き方/株式会社キャスター
株式会社キャスター 石倉 秀明
700名以上が全員リモートワークの株式会社キャスターの取締役COOと個人ができること、してほしいこと、やりたいことを募集できるサービス「bosyu」の代表取締役も兼任。 FNN Live News α 火曜コメンテーター、Forbesコラムニストetcの活動も。3歳になる娘が大好き。アイスはチョコミント派。
「リモートワークを当たり前に」をミッションに掲げるキャスター。45都道府県、15カ国にいるメンバー全員がリモートワークで働く、世界最大規模のリモートワーク企業です。
そんな同社が5年半、リモートワークで経営してわかったのは、これからは当たり前のことが当たり前にできる人が求められること。石倉さんは「リモートワークにおいて、疑心暗鬼が最大の敵。だからこそ、安心して仕事を任せられる人が最強」といいます。
石倉さん「仕事の成果は『記憶に残るような大きな成果』と『日々当たり前に動いているという成果』の2つに分けられると思っています。ほとんどの仕事は、後者で形成されている場合が多いでしょう。
後者においての成果の判断基準は『なにを』『いつまでに』『どんなレベルで』『どういった成果物』に細分化できます。この4要素をもとにした成果のレベルが高ければ、“当たり前のことができ、安心して仕事を任せられる人”として、その人の価値が見直されるのです。
オフィスで働いているときは、声が大きい人や、会議でそれらしいことを言っている人、遅くまで頑張っている風の人が評価されがちだったのではないでしょうか。しかし、リモートワークは、チャットベースのコミュニケーションになるので、仕事の成果が見える化されます。
実際、弊社で活躍する人や事業責任者を務める人は、成果のレベルと過去の経歴になんの相関もありません。リモートワークが主流になる時代では、当たり前ができるふつうの人こそ、重宝されるようになるでしょう」
終始「リモートワークで求められるのは、ふつうの人」と話していた石倉さん。リモートワークは、一人ひとりのライフスタイルにあった働き方を実現するだけではなく、健全な評価をするための第一歩になるのかもしれません。
登壇資料はこちらからご確認ください。
https://speakerdeck.com/hideakiishikura/20200311-konehitomarusiedeng-tan-zi-liao
リモートワークが“普通の働き方”になる時代はすぐそこに?
リモートワークを導入する4社が、それぞれのやり方や工夫について語ったオンラインイベント「こんなときだから リモートワークについて本気出して考えてみた」。ZOOMには「参考になった」「自社でも真似して取り入れてみたい」と多くのコメントが集まっていました。
現状でも新型コロナウイルスをきっかけに、日々リモートワークが急速に広まっています。しかし、この事態が収束したあとも、自由な働き方を求めてリモートワークを続ける企業は多いのではないでしょうか。世の中で、リモートワークが“普通の働き方”として扱われるようになる時代は、すぐそこまで来ているのかもしれません。
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