HOMECareer Runners 雪駄×スニーカーの「unda」に大反響、新感覚シューズを生み出したデザインユニットの仕事術とは

雪駄×スニーカーの「unda」に大反響、新感覚シューズを生み出したデザインユニットの仕事術とは

長澤まき

2020/04/08(最終更新日:2020/04/08)


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雪駄×スニーカーの新感覚シューズ「unda-雲駄-」がネット上で注目を集めている。

伝統ある雪駄の魅力的な機能性を現代の街に溶け込むようにリデザイン。スニーカーと融合することで、カジュアルファッションからモードファッションまでマッチするデザインを実現した。

雪駄の天板部分には低反発クッションを採用。また、スニーカーのミッドソールは最適な柔らかさに硬度を調整、エアソールによりさらに衝撃を軽減させ、まるで雲の上を歩いているようなフワフワな履き心地だという。

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出典元:goyemonホームページ
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出典元:goyemonホームページ

高校時代の同級生2人のデザインユニット

同シューズをつくったのは、大西藍さんと武内賢太さんが共同代表を務める2018年結成のプロダクトデザインユニット「goyemon(ごゑもん)」。

「unda~雲駄~」は発表直後から大きな注目を集めており、2019年2月に開始したクラウドファンディングは開始35分で目標金額を達成。その後の一般販売も好調で完売状態が続いている。

多くの人を惹きつける同商品はどのようにつくられたのか?デザイナー・ディレクターの大西藍さんと、デザイナー・コンセプターの武内賢太さんに話を聞いた。

-----デザインユニットgoyemonについて教えてください。お二人はどのようにしてデザインの道に進み、同ユニットを結成したのですか?

大西さん:「僕たちは、同じ高校に通っていた同級生コンビです。学校がデザイン系で、日々デザインを学び、実際に手を動かしてモノづくりをしていました。」

武内さん:「学校の制作以外でも、放課後に自分たちの作りたいものを高いクオリティで作れる環境が整っていたことによって、モノづくりに対する柔軟なアイデアや好奇心が刺激されていたんだなと思います。」

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提供:goyemon/左:大西さん、右:武内さん

自分で創造した事業で生きていたい、と結成

2人は東京都立工芸高等学校にてモノづくりを学んだという。

高校卒業後、大西さんは日本大学芸術学部デザイン学科へ、武内さんは東京工芸大学芸術学部へ進学。いったんは別々の道に進んだが、就職後のある日、大西さんから声をかけて同ユニットを結成したそうだ。

大西さん:「僕はグラフィックデザインからプロダクト・建築まで幅広く学び、ケン(武内)はプロダクトデザイン一本を深く学んでいました。

その後の就職も別々の道へ進み、僕は家業である玩具をメインとするデザイン事務所に入り、企画の立案から製造までを学びました。」

武内さん:「僕は、コイズミ照明というメーカーに就職し、プロダクトデザイナーとして働いた後、商品企画に移動して、製品を企画から売り出すまでの工程を学びました。」

大西さん:「そんな2人が別々の道で働いている中、僕は会社に入ってから2年が経ち、親の会社を大きくすることにやりがいを感じてはいたものの、何か違和感を感じていました。

“自分で創造した事業で生きていきたい”そんなふうに考えはじめ、自分の本当にやりたいことを模索していました。

そこで、高校時代から『コイツと仕事したい』と思っていたケン(武内)を信頼できるパートナーとして迎え入れ、ブランド立ち上げに至りました。」

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出典元:goyemonホームページ

武内さん:「2年前に話をもらった時は、純粋に嬉しかったですね。『また一緒にモノづくりを楽しめるんだ』とワクワクしました。

普段から世の中にあるかっこいいデザインや面白いサービスをアイちゃん(大西)に情報共有する癖があったので、ブランドイメージを構築すること自体は時間がかからなかったです。」

大西さん:「ブランド立ち上げ前から、すでに価値観の共有が出来ていたのも大きかったです。お互いのLINEを見返しても、昔からデザインの話ばかりで(笑)」

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現代にフィットする次世代雪駄を

-----“雪駄×スニーカー”という、日本の伝統をブラッシュアップ・進化させたプロダクトはとても素敵だと思います。同商品のアイデアはどのように生み出したのですか?また、アイデアを出すために工夫や努力をしましたか?

大西さん・武内さん:「ありがとうございます。」

大西さん:「元々僕たちは雪駄を普段履きとして愛用していました。カジュアルな服装に和の要素を入れるのがカッコいいと思っていて(笑)

ビジュアルはめちゃくちゃクールだと思うんですが、世間一般からすると堅くて歩きづらいイメージがあると思い、そこが問題だなと。

それは当たり前の話で、雪駄の歴史は古く、従来の雪駄は現代のアスファルトやコンクリートで使用される為に作られていないからです。そこで、現代の街や環境・生活にフィットする“次世代雪駄”をつくろうと考えました。」

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出典元:goyemonホームページ

日本文化衰退への危機感が根底に

武内さん:「デザインを決めていく上で、身の回りの人に色々意見を聞いてまわったんです。そこで、今後のgoyemonのブランドコンセプトを決める事実に直面しました。

『雪駄ってなに?』この言葉を何回も聞きました。僕たちは元々、日本の伝統製品が好きで知識があったので気づかなかったんですが、世間的には日本の伝統製品の名称や歴史はあまり知らないものだったんです。特に僕たちくらいの若い世代はそうなのかもしれません。

世界に誇るべき日本の伝統製品を、日本人自身が知らないなんてと衝撃を受けました。

そこで、『日本の伝統や魅力ある製品を、若い世代や世界に発信する。』というコンセプトを掲げ、今後の活動の基軸にしようと決めました。」

大西さん:「僕たちを含むミレニアル世代が中心となり、日本文化を盛り上げていかないと衰退していってしまう可能性があるなという危機感がありました。

若い世代にも刺さるようなビジュアルと機能性を求め、『日本の伝統×最新技術』というプロダクトコンセプトも決定しました。現代の生活にフィットした、伝統を身近に感じられる商品を展開しようと。

雪駄とスニーカーは、同じ履き物ではあるけど、マトリクスで表しても全く逆の位置付けにあると思います。それをぶつけたら面白くないですか?(笑)

そしてさらに、スニーカーの中でも最先端らしさがあるのがエアクッション入りだと思ったんです。」

武内さん:「ビジュアル的にインパクトがあり、今までなかったデザインなので、賛否両論はもちろんありますが、この『unda-雲駄-』を通じて、雪駄に興味をもってもらい文化の活性化になればと思い活動しています。」

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エアクッションにこだわり試行錯誤

-----商品化させるにあたって苦労したことは?また、それをどのように乗り越えましたか?

大西さん:「世の中にある製品との差別化を図ることに苦労しました。例えば、エアクッションを入れることは雪駄業界では今までにない挑戦でもあったので一筋縄ではいかなかったです。

当初、賛同してくれる雪駄メーカーさんをやっとの思いで見つけたのですが、進めている最中にエアクッションを入れることは難しいと言われてしまって。」

武内さん:「どうしても現代版の雪駄を生み出したかったので、その後何度もデザインイメージを再検討しましたね。

スニーカーの機能性とビジュアルを叶えるためのソール形状やカラーリング、厚みまで。ですが、しっくりくるデザインにならなくて…そこで気づいたんです『差別化を図るうえで機能性はもちろん、ビジュアルにはエアクッションが欠かせない』と。」

大西さん:「相当悩みましたが、逆に清々しかったです(笑)試行錯誤したおかげで妥協できないポイントが明確になったので。

そこで思い切って方法をイチから考え直したんです。

エアクッションのあるシューズが存在するならできない事はないだろうと思って、今度はエアクッションを作っている工場を探しました。そこから雪駄メーカーに支給できないかと。その結果、上手く製品化までつなげることができました。」

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提供:goyemon
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ストーリーを組み込み差別化

そうしてついに「unda-雲駄-」が完成。より多くの人々に使ってもらえるよう、売り出し方も工夫したという。

武内さん:「ただ商品にするだけでなく、差別化するために『どうプロモーションするか』にも力をいれました。普通に売り出すだけでは、ただのアイデア商品に終わってしまい面白くないと。

なので、消費者が『履きたい!』と思うようなストーリーを組み込みました。伝統製品であるものを、デニムやセットアップなどの現代のカジュアルな服装に合わせ、東京の街中を堂々と歩く姿を前面にプロモーションしました。」

大西さん:「プロモーションビデオでは、ソックスと合わせてみたり、走ってみせたり、良い意味で消費者のイメージを壊すことで、世の中の製品との差別化につながったと思います。

雪駄は『左右交換可能』『小指とかかとを出して履く』『馬蹄・ベタガネ』など、日本ならではの機能性や歴史があり、そんな特徴を伝統的なカラーリングと共に出来る限り引継ぎました。

『雪駄らしさ』と『スニーカーらしさ』そんな相反するものが融合した違和感プロダクトでインパクトを狙いました。」


価値観の共有・スピードを大切に

goyemonは「違和感のない違和感」をブランドコンセプトとし、日常生活をリデザイン。日本の伝統技術や文化を後世に伝えるべく、日本の伝統技術と現代の最新技術を融合させた商品の展開に挑んでいる。

今年1月には、切子とダブルウォールグラスが融合した、機能的かつ、まるで浮いているような幻想的で美しい切子グラス「Fuwan-浮椀-」を発表した。

-----チーム(共同)で仕事を進めるうえで、気を付けていることはありますか?

武内さん:「ブランド立ち上げの時もそうでしたが、ブランドイメージを固めるために、価値観の共有は常にするようにしています。

『goyemon』という架空の人物を見立てて、『goyemonならどうするだろう』って日々探究しています。」

大西さん:「よく2人で伝統製品や生活雑貨のショップに立ち寄るんですよ。『この製品かっこいいな』『こういうモノづくりをしたい』と話していると、イメージを共有しながら“goyemonらしさ”がみえてくるんですよね。

同時に新製品の企画やデザインのアイデアも湧いてきたりするので、そのままその場でミーティングしたり。」

武内さん:「出てきたアイデアに対して『goyemonはそんなことしないよね?』ということもありますが、『あ〜goyemonっぽい!』となればハイタッチで採用。

そのおかげで製品開発のスピードがグンと上がるんです。ブランドを育てていく上で、スピードも肝心だと思うので。」

大西さん:「これからも『goyemon』ブランドから一貫した商品群をコンスタントに出し続けるためにも、この共有化とスピードは大事にしていきたいです。」

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自身が楽しむことで魅力が伝わる

-----最後に、お2人の仕事の流儀を教えてください。

武内さん:「僕はとにかく楽しんでますね。

コンセプトである『日本の伝統や魅力ある製品を、若い世代や世界の方々に知ってもらいたい』ってそう簡単な挑戦ではないと思いますが、モノづくりが好きな2人だからこそ、楽しんでやった方が良いモノができるんです。」

大西さん:「僕は“今まで無かったものを生み出す”ことを心掛けています。

これを掲げていることによって楽しみながら仕事できることに繋がっているんです。世の中にあるものを作っても何も面白くないし自分たち自身ワクワクしないじゃないですか。

製品がお客様に届いた時に、メッセージをよくいただくんですけど、『ワクワクする商品です』や『次の商品も楽しみにしています』というのを見ると僕たちが楽しみながら作っているのが伝わっているのかな〜と思い、本当に嬉しいです。」

武内さん:「逆にそういったたくさんの支えやフォローがあったからこそ、楽しみながら活動させてもらってます。

それに僕ら自身が楽しむことで、同世代や若い世代にもっと日本の魅力が伝わるような気がするんです。」

大西さん:「僕らをみて、『楽しそう!』『自分たちも挑戦したい』って少しでも感じてもらえたら嬉しいですね。そしてそんな挑戦を手助けできるような活動も今後していきたいと考えてます。」

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元高校の同級生によるデザインユニットgoyemon。彼らがこれからどんなプロダクトを生み出していくのか、楽しみだ。


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