HOMECareer Runners ニッポンの手仕事を残したい!「職人インターン」を開催、後継者不足の工房と若者を繋ぐニッポン手仕事図鑑の挑戦

ニッポンの手仕事を残したい!「職人インターン」を開催、後継者不足の工房と若者を繋ぐニッポン手仕事図鑑の挑戦

長澤まき

2020/05/31(最終更新日:2020/06/01)


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日本の手仕事を残していくために、後継者不足に悩む伝統工芸品の工房と、職人になりたい若者をつなぐインターンシップを開催している企業がある。

株式会社ニッポン手仕事図鑑は今年3月、長野の伝統工芸(漆工・木工)職人を志す人に向けたインターンシップを長野県の丸嘉小坂漆器店にて開催。全国から集まった職人を目指す若者の中から後継者候補が誕生し、4月から同工房で漆工職人として働いているという。

未来の後継者を育てるための活動について、ニッポン手仕事図鑑 プランナーの花田薫さんに取材した。

出典元:ニッポン手仕事図鑑ホームページ

日本の手仕事の魅力を広めるために誕生

ニッポン手仕事図鑑は「ニッポンの手仕事を、残していく」をコンセプトに、日本の手仕事の魅力を広めるメディアとして2015年1月にリリースした。

当初は、映像制作・配信を主体に活動していたが、職人や工房からの依頼を受けて、ECサイト運営や展示会プロデュースといった販路拡大のための各種取り組みを手がけるように。

また、近年では後継者育成の取り組みにも力をいれており、2018年度より工房見学・職場体験をするインターンツアーを開催している。

花田さん:情報発信団体としての立場から、人を雇いたい工房(雇用者)と職人になりたい若者(求職者)からの情報・相談が随時集まる状況もあり、工房と職人になりたい若者を繋ぐ、後継者育成インターンシップを随時開催しています。

工房と若者の出会いの場を創出

後継者育成インターンシップを始めた背景には、日本各地の伝統工芸品の産地・工房が抱える深刻な後継者不足がある。

その大きな課題の1つは、手仕事をしたい・伝統工芸品の職人になりたいという若者が着実に増えているにもかかわらず、工房と若者たちの出会う場が少ないということ。

同社は、この課題を解決するために、就業体験や移住者との懇談会などを通じて、未来の後継者となり得る若者たちと産地・工房とのマッチングを図ることを目的とした後継者育成インターンツアーを開催している。

花田さん:工芸の現場では職人の高齢化が進んでおり、後継者候補を探すことが喫緊の課題である一方で、実際の求人情報は地元のハローワークにしか載っておらず、後継者探しに困難を極めている状況です。

一方、後継者候補となりうる若者側も、職人を目指して専門分野の腕を磨くにも関わらず、希望の職種を見つけられず他業界への就職を余儀なくされる学生が毎年多いということが、インターンシップ開催を通し、全国の学校やキャリアセンターの方たちと密に情報共有をしている中で分かってきました。

本インターンシップは、全国にある工芸系学校が抱えている“学生の職人への就職難”という潜在的課題についても、解決の糸口を提供した形になります。

全国から応募、関係人口創出にも貢献

これまでに、長野県の南木曽ろくろ細工・信州紬(伊那紬)・内山紙・木曽漆器・松本民芸家具工房へのインターンを開催。

全国の学生や社会人などから応募があり、中には、定員6人に対し、70人を超える人から応募があった回もあったそうだ。

花田さん:参加した学生からは「職人になることや移住することについて不安な気持ちも多かったが、先輩職人の話を聞いて、職人になることの決意が固まった」という声をいただきました。

また、本ツアーをきっかけに、産地の関係人口となり、たびたび産地や工房を訪れる参加者も増えました。

2020年3月には、長野県木曽漆器産地にて、初の後継者誕生に尽力しました。

今年3月に開催した丸嘉小坂漆器店インターンシップに参加し、4月から同店に後継者候補として入社した参加者は、現在(5月末)ようやく作業に慣れてきた様子で、先輩からの指導をしっかりと受けながら、真面目に取り組んでいるという。

花田さん:地元の漆芸学院にも通い始めたそうで、「同じ産地内の他の職人からも学べる機会を最大限に生かしつつ、一人前の職人になるべくがんばってほしい」と丸嘉小坂漆器店さんからコメントをいただきました。

提供:ニッポン手仕事図鑑/インターンシップの様子

マッチング精度にこだわって選考・企画

同社は、インターンツアーは採用面接の場と同じだと考えているという。

そのため、インターンツアーを開催するにあたっては、当日に工房とインターンシップ参加者が互いを知ることができる深いコミュニケーションを行えるよう、マッチングの精度にこだわっているそうだ。

花田さん:インターンを企画する際には、実施する工房に、参加してほしい人材像や参加者に求める要件を細かくヒアリングします。

ツアー参加者を選考する段階では、多数の応募者の中からより想いのある方を選抜してツアーに参加いただくため、書類面接・WEB面接の2段階制とし、それぞれでツアー応募にかける想い、3年後5年後を踏まえたご自身の具体的な将来ビジョンなどを話していただき、書類面接・WEB面接とも採用側の工房責任者が同席の上、参加者を選定する時点から深く参加者のことを知る機会を多くつくりました。

インターンシップのプログラム作成でも、参加者の力量が図れるような体験内容となるよう工房側と調整するほか、先輩職人・自治体移住担当をお呼びしての移住相談会や工房責任者と参加者との個別面談の機会の時間など、インターンツアー当日の限られた数時間で、工房側・参加者側がより多くのコミュニケーションが取れるよう配慮をしたプログラムを設計しています。

インターンシップ当日も、ニッポン手仕事図鑑のスタッフが2名付き添い、工房・参加者側のサポートに入るなどしています。

提供:ニッポン手仕事図鑑/インターンシップの様子

「工房・職人のためになるか」が第一

事業を展開する上での、仕事のこだわりや心がけていることを聞いた。

花田さん:「工房・職人のためになる事業であるか」を第一に考えています。

“ニッポンの手仕事を残す”ことを目的に活動を続ける「ニッポン手仕事図鑑」ですので、映像制作にしても後継者育成インターンシップでも、職人にとってやる価値があるものでなければなりません。

極力、職人・工房に負担の無い形で運営することを考えています。

今後も、工房と後継者候補の出会いの場・機会をつくるべく、引き続き全国各地で「後継者インターンシップ」を開催していくという。

花田さん:ありがたいことに、2020年4月に、後継者育成支援などの地方創生事例を国に認められ、地域のプロフェッショナルとして編集長 大牧が総務省認定制度「地域力想像アドバイザー」にも登録されました。

この制度を使うと、「アドバイザー」を地域に呼ぶ費用が国庫から助成される=自治体の費用負担が減ります。

ぜひ、こういった制度なども自治体の方に知ってもらい、工芸品・手仕事品の後継者育成支援のために、全国の自治体・産地さんと2人3脚で活動していきます。

出典元:ニッポン手仕事図鑑/Facebook

同社は情報発信者の育成にも力を入れており、2019年には全国の学生・若手クリエイターへの活躍の場の提供として、「ものづくりフィルムアワード」を開催。全国より90件を超える作品の応募があり、若手クリエイターの活躍の場の創出にも貢献したそうだ。

花田さん:今後も、作り手(職人)と使い手(消費者)、伝え手(クリエイターを中心とした発信者)の3者を、情報発信活動を主体に育成していきます。

日本の伝統的な手仕事を未来に繋げていくニッポン手仕事図鑑。

伝統を持つ工房と職人を志す若者との出会いにより、今後どのようなビジネスが生まれていくのか、楽しみだ。

出典元:ニッポン手仕事図鑑

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