若手人材の育成と採用の支援事業を行うAIGATEキャリア株式会社は、「若手人材のキャリア」に関する2019年の振り返り・2020年の展望レポートを発表した。
2019年の振り返り
レポートによると、2019年の振り返りとしては、「採用のあり方・キャリアの多様化が議論された一年」だったとした。
4月には、経団連と大学で構成する協議会が「採用と大学教育の未来に関する産学協議会中間とりまとめと共同提言」を発表。
ここでは、Society5.0(サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会課題の解決を両立する、人間中心の社会)に向けた、今後の採用と大学教育のあり方について提言された。
今後の企業の採用のあり方として、従来型の「新卒一括採用」に加え、スキルを重視した通年採用を行う「ジョブ型採用」も実施すべきと述べている。
キャリア形成の格差が広がる可能性も
従来の新卒一括採用では、学生や若者のキャリアが直線的に想定されており、このレールから一度でも外れた場合に、その後の就職やキャリア形成が難しくなることが問題視されてきた。
これに対し「ジョブ型採用」はスキルを重視し、それに伴い通年で採用を行うというもので、スキルがあればキャリアを再形成するチャンスがある。
一方で、このSociety5.0では、大学院レベルの教育を受けた、AI人材やデータサイエンティストなどの職種に適応する人材が想定されている。
見方を変えると、このような高度専門スキル人材の優遇策になる可能性もあり、学歴によってチャンスの格差が広がる危険性を秘めている。高卒者や大学中退者など、学歴による差や、地方と都市の地理によるキャリア形成機会の差が依然として存在しているのが現状だ。
特に、高卒者の就職に関しては「1人1社制」制度という問題を抱えている。「1人1社制」では、企業へのエントリーは内定が出るまで1社に絞る必要があり、内定が出なかった場合にのみ別の会社にエントリー可能、というもので、キャリア形成や働き方の多様化の妨げとなっている。
5月に内閣府の規制改革推進会議では、高卒の就職活動に対する意見も発表されている(詳細)。
このように、2019年は高度専門スキル人材に関する採用のあり方と、高卒者の採用のあり方が議論された。「多様化」を前提とした採用の変化がテーマであり、前に進んだ1年ともいえる。
2020年の展望
2020年は、学歴や地域によるキャリア形成機会の差を実際的に解決することがより重要になってくる。
問題解決のための主なアプローチとしては、「1.採用時において、大学(院)卒業生以外も広く受け入れる企業側のスタンスの変化」「2.学習意欲がある若者への学習機会の提供(大学進学支援サポート)」が考えられる。
1の実現のためには、制度による企業スタンスの変化はもちろん、大学卒業者以外の人材でも、期待された成果を出せるという実績を出すことが重要となる。
2の学習機会については、特に地方においては、経済的・地理的事情により難しい状況がある。ただ、地方活性化はその地方で生まれ育ち、愛着を持つ人の推進力が高いと見込まれるため、地方から人材を生み出す必要があり、この仕組みを政府・企業とともに進めていくことが求められる。
これからの日本を担っていくべき若手人材の活用は、社会全体で考えなければいけない大きな課題といえそうだ。
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