HOMEビジネスファッション オフィスカジュアルに迷う会社員に照準。FABRIC TOKYOが今、3Dスキャン「オーダージーンズ」に参入したわけ

オフィスカジュアルに迷う会社員に照準。FABRIC TOKYOが今、3Dスキャン「オーダージーンズ」に参入したわけ

漆舘卓海

2020/01/07(最終更新日:2020/01/07)


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働き方改革が進む中で、スーツや制服が当たり前とされたオフィス業務の会社員の服装についても、オフィスカジュアルが浸透してきている。

特に男性については、現在はIT業界やクリエイティブ業界が中心。だが、好みの装いをできる反面、毎朝のファッション選びが苦手な人も少なくないだろう。

そんなオフィスワーカーたちの悩みに対し、カスタムオーダーアパレルブランド「FABRIC TOKYO」(株式会社FABRIC TOKYO)が、テクノロジーで解決に挑んでいる。

東京・新宿マルイに現れた、無人型店舗を取材してきた。

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STAMPの店舗=2019年12月、東京・新宿マルイ

3Dスキャンで採寸するオーダージーンズ

「FABRIC TOKYO」が今年9月に始めたのは、3Dスキャナーで採寸するオーダージーンズだ。センサーで全身の約3万カ所を測り、個人の体形に合ったジーンズを制作する。

日頃からカジュアルな服装で働く人を対象に、会社で履いて普段使いもできる「ちょうどいいジーンズ」を作ってもらう狙いだ。採寸データはクラウド上に保存でき、一度店舗に出向けば、以降はWeb上から発注できるようになる。

長時間座っても疲れにくい、洗濯機で丸洗いしても色落ちしにくいといった機能性も考慮しており、特にスマートフォンを入れやすいポケットは自慢という。

デニムの生地・色合いは、当初こそ選択の迷いを減らそうと1種類に絞っていたが、リピーターからの要望を受けて2020年春を目途に増やしていく予定。

また、今後は、自分の生活スタイルや好きなガジェットといった要素を反映できるカスタマイズ機能も提供したい考えだ。

試着室のような感覚で3Dスキャン

今回、筆者は同社から取材案内を受けて体験に赴いた。オーダースーツを扱うFABRIC TOKYO新宿マルイ店の隣に、ジーンズを飾ったわずか4坪ほどの部屋が構える。

予約時間に入口の端末でチェックイン。室内には黒い骨組みが据えられていた。

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STAMPの3Dスキャン機=2019年12月、東京・新宿マルイ

目の前にあるスマートフォンが表示する指示に従い、体のサイズが計測可能なところまで薄着になる。

立ち位置を合わせ、スキャンが始まる。4本の柱に4つずつ埋め込まれた赤外線センサーにより、計3回全身を測り終えた。

男性の筆者の場合だが、衣服の着脱の時間を含めても6~7分ほど。一般的な衣料品店で試着室を利用するのと大差ない感覚で、採寸が済んでしまった。

3週間ほど経ち、中国の縫製工場で作られた特製ジーンズが手元に届いた。学生時代に比べて、明らかに弾力性を増した我が身に涙しつつ履いてみる。スッと気持ちよく脚が通った。

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履き心地に窮屈さはなく、シルエットもすっきりしている。なるほど、これならダボダボ感が出ないし、清潔感を求められる職場でも恥ずかしくない。

1本あたり約1万5千円。従来のオーダーメードジーンズの相場に比べると大幅に安い。1本のジーンズとしても、長く使えることを考えれば決して高い値段ではないだろう。ファッションに疎い筆者に、新しい選択肢が生まれた。

失敗を恐れて同じブランドを買う人に

企画が動き始めたのは2019年1月ごろ。3Dスキャンの活用法を探る中で、オフィスカジュアルに着目した。新宿店をベータ版と位置付け、2020年春の本格展開を目指して検証を重ねる。

狭いスペースにも設置できるのが特長で、将来は駅構内などへの設置も視野に入れる。

同社の竹内智代さんにプロジェクトの詳細を尋ねた。

ーーまず、STAMPが想定する顧客はどのような人でしょうか。

竹内さん:STAMPは普段スーツを着ない人で、カジュアルな服装で働いている人のために生まれました。主にIT業界やスタートアップで働く人たちですね。

情報感度が高いので新しいサービスやブランドは生活に取り入れ、生活を良くたいという意識はあるが、服装については無難な選択をしているというものでした。

ーー確かに服については「いかに失敗しないか」を考えている人は多そうですね。

竹内さん:そうなんです。結構ファストファッション系で無難な服を買っていたり、同じブランドしか買っていなかったり。そういう方々に対して、より生活をアップデートするための洋服を作りたいと始めたのがSTAMPなんです。

では、どのような価値を提供するか。まずひとつは、オーダーによるカジュアルウェアの提供。これまで洋服は、誰かのために作られたものを、サイズを確認して購入していました。STAMPは、その人のためだけに作り、かつ「働く」ということにフォーカスしています。

もうひとつが、今までにないワクワクする購入体験です。ご自身で3Dスキャナーを使って数秒で採寸ができる。店舗に行くのはプレッシャーを感じるが、かといってWebで購入するのはサイズが不安という意見もある。無人で好きなペースでゆっくり選べて、かつサイズの不安を解消できるサービスにしたいなと設計しました。



オフィスウェアを再定義したい

STAMPは現在、ベータ版として招待者カードを持つ人がメインだ。昨年9月初めにIT業界で活躍する100人に体験してもらい、そこを起点に広めていく形を取った。

招待カードを持っていなくても、店舗でリストに登録すれば順番に招待してもらえる。

最初の商品こそジーンズだが、将来的にはチノパンやシャツも扱い「オフィスウェア」を再定義できるブランドになりたいと意気込む。

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ーー世間ではジーンズ離れと言われる中で、そもそもジーンズから始めた理由は?

竹内さん:ちょうどいい感じのブランドがなく、ファストファッションかもしくはハイブランド。その中間のブランドが意外とあまりないと分析しています。

ジーンズはずっと目立ったアップデートがされていないと考えています。当社が「洋服の買い方をアップデートする」というのをコンセプトに掲げているので、だったらジーンズもアップデートしながら、お客様に新しい購入体験を提供したいというところで相性がいいのではと考えました。

私たちの競合は他のジーンズのブランドというよりは、パンツというくくりの中で戦うつもりです。

同時に、ジーンズは自分のサイズに合うものが少ないという声が多く、課題感がありました。3Dスキャンの特性を生かしやすかった面もあります。

ーー3Dスキャナーによる採寸は他社ブランドも採用していますが、まだ浸透したイメージがありません。

竹内さん:3Dスキャナーを使って何かやろうとしている会社はいっぱいあります。でも使い方に悩んでいて、多分、今ある使い方としては「サイズマッチング」。測ったサイズを元に既存商品の中から「あなたに合うサイズはこれですよ」という提案に使っている。

私たちは3Dスキャナーを使うことを前提としたサービスなので、これがあるからこそできたブランドなんですよね。

また、当社はシルエット重視でその人の体形に合わせるというよりは、より綺麗なシルエットを保ちながらフィット感を実現する作り方を目指している。見栄えも重視しています。

ーーSTAMPは既存商品を売る手段としての3Dスキャンではない、ということですね。それでは、既存のオーダーデニムと3Dスキャンによるデニムの違いを教えてください。

竹内さん:ひとつは、やはり値段ですね。従来のものはかなり高い(約3~4万円)。しかし、私たちは無人型店舗でやっているので抑えられています。

逆にデメリットでいうと、生地や産地にこだわっているわけではないので、ラフな感じになります。細かくこだりたい方というよりは、自分に合ったジーンズが1本欲しいという方向けのサービスです。

ーーデータをクラウドに保存できるというのは、体形というビックデータを集めることにもなります。その先のビジネスも考えているんですか?

竹内さん:デニム以外に広げていく可能性もあります。私たちのデータを使って他のブランドさんでもそのデータが使えたり、もしくはヘルスケアと絡めて日々の自分の経過を追えたりなど、いろいろ案はありますね。

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いわゆる”お堅い業界”でも私服勤務が認められつつある。一方で、私服には良くも悪くも個人のセンスが表れてしまう。

「FABRIC TOKYO」は今後、全国展開を視野に入れる。手軽な3Dスキャンというテクノロジーの発展が、オフィスカジュアルの新定番を生み出すのか。今後に注目だ。


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