ブランド・デザイン会社である株式会社Capitalは11月22日、日本に居住する難民や難民申請者を対象に、日本語学習を支援する独自サービスの提供を開始した。
同社代表取締役の久世将寛氏に、同サービスを開発した経緯などを詳しく聞いた。
きっかけはクルド青年のドキュメンタリー
このサービスは、難民および難民申請者に、就労・仕事を前提とした日本語学習支援プログラムを提供するものだ。
同社オフィスでのグループレッスンや、オンラインチャットを利用してのプライベートレッスン、そして収容施設にいる難民申請者へ面会を通じた学習の場をつくることも計画しているという。
久世 将寛氏(提供:株式会社Capital)久世氏:今年6月に日本の難民問題を扱ったドキュメンタリー番組を観たのがきっかけでした。 幼いころに家族とともに難民として、日本に逃れてきたクルド青年の話です。
クルド人に対する迫害から日本に逃れてきたものの、制度と法律の分厚い壁の向こう側で静黙と生きざるをえない青年─彼の現実に大きな衝撃を受けました。
そのときに、大学時代の友人がUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)で働いていることを思い出しました。難民分野についてもっと知りたいと、すぐにメッセージをしました。難民迫害、難民キャンプ、制度・法律、日本にいる難民の現状など、たくさんの質問をし、その友人はすべてに回答してくれました。
ちなみにそのときのやりとりは34,000文字に及びました。A4にしておよそ40ページ。とある難民キャンプで奔走する友人にとって、これは楽ではなかったと思います(笑)
それからといもの、難民に関する文献を読んだり、イベントや講座に出席、難民支援に従事している人のお話を伺いながら、もしかしたら自分でも力になれることがあるかもしれないと考え始めました。
せめて日本語ができれば生活が少しだけ向上できるかも
久世さんによれば、日本での難民申請者は毎年1万人おり、認定される人は昨年の実績では42人だったという。
そして、難民認定の数を圧倒的に上回るほどの申請結果を待っている人々がこの国に存在しているにも関わらず、特に難民申請者に対する公的なサポートは非常に限られているという。言語学習も例外ではない。
久世氏:難民となる人々は、限られたお金を手元に、命からがら日本に逃げてくるのです。そんななか、日本語も文化も特異で難しい日本では、市民としての当たり前の生活が難しい。
特に難民申請者に対する公的な日本語教育支援がないため、家を借りれない、友人を作るのが難しい、病院で相談できない、難民申請ができないなど、市民としての高い壁として立ちはだかります。
せめて日本語の習得ができれば、生活の営みが少しだけ向上できるかもしれない。そして日本語を教えることならば、僕でも仲間を集めればできるかもしれない。そうして、学習支援を始めることを決めました。
「日本の美しい文化を壊すな」反対意見も届いた
久世さんは8月に、SNSコミュニティで生徒募集の投稿をした。
予想以上の反響があり、100人以上から情報提供、日本語教材の支給、人材の紹介や、励ましのメッセージを受けたという。
最終的には難民申請者に巡りあい、収容施設に訪問する機会にも恵まれた。
同時に「難民を受け入れるべきではない」「日本の美しい文化を壊すな」などといった、多くの反対意見も寄せられたと久世さんは話す。
こういった声を受け止め、「まずは難民への理解が進まなければいけない」と思うようになったという。
そして、日本語学習の支援を徐々に開始しました。最初は弊社のオフィスを教室として使ったり、喫茶店で待ち合わせしてその場で教えたり、収容施設を訪れて面会を通じて日本語を教えたりしました。
今後の展開も計画中
現在、日本語学習サービスは無償で提供しているという。対象は企業ではなく、当事者個人だ。
今後1年間は支援団体や団体の協力を仰ぎながら、多くの学習者を受け入れることに専念する。
オフィス教室の様子(提供:株式会社Capital)―今後日本語支援以外にも広げていく予定はありますか?
久世氏:まずは日本語学習支援を受けられる学習者さんを一人でも多く受け入れながら、言語の困りごとに満足に応えられるような学習内容とチーム作りに専念します。
具体的には申し上げられないのですが、日本語学習支援を重要なファーストステップと位置付けて、いくつかの取り組みを実施していく予定です。
現在はウェブサイトでのみ告知を行っているが、今後は独自の方法で少し変わった情報発信を試す予定もあるという。
熱意をもって生まれたこのサービスを通じ、今後日本における難民受け入れの理解促進にも繋がっていくかもしれない。
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