東京モーターショー2019のキッザニアに出展した「金型磨き職人の仕事」について、マツダに取材した。
仕事体験に「金型磨き職人」
自動車メーカーのマツダが、東京モーターショー2019の「Out of Kidzania in TMS2019」に出展した「金型磨き体験」が、ネット上などで話題になっている。
10月24日~11月4日に開催された東京モーターショー2019では、会場内に子ども向け職業体験型施設キッザニアとコラボした「こども達が働く街」が出現。自動車に係わる複数の企業が、クルマに関する様々な職業体験を提供した。
カーデザイナーやメカニック、レーシングドライバーなど、華やかな仕事が並ぶ中、マツダは「金型磨き職人の仕事」を出展。
実際の職場を彷彿とさせる本格仕様のブースで、金型作りを学び、職人の見習いとして金型磨きのトレーニングをする仕事を提供した。
提供:マツダ提供:マツダこの出展はネット上で大きな話題となり、「渋すぎる」「表に出ない仕事にフォーカスするのがカッコいい」「真の仕事体験」「マツダの魂を感じる」といったコメントが寄せられている。
デザインを忠実に再現する重要な工程
マツダグローバル販売&マーケティング本部ブランド戦略部主幹の小野寺貢さんに話を聞いた。
-----「金型磨き」は、クルマを作るどの工程で行う仕事ですか?
「クルマの製造ラインは、プレス工程(鉄板を金型でプレスしてクルマの部品の形にする工程)、車体組立工程(プレス工程で作った部品を組立てて車体にする工程)、塗装工程(組みあがった車体に塗装する工程)、車両組立工程(塗装した車体にエンジンやサスペンション、内装やシートを取付けて、クルマとして完成させる工程)、検査工程(出来上がったクルマがきちんと仕様通りになっているか検査をする工程)に分かれています。
このうち『金型磨き』は、鉄板をクルマの部品にプレスする金型を作る仕事で、デザイナーが意図したクルマのデザインを忠実に再現するために、とても重要な工程です。
金型がデザインを忠実に再現できるものになっていないと、その金型で出来上がった部品を組んでも、当初狙ったデザインとは異なったクルマになってしまいます。狙ったデザインを再現できるかどうかは、ミクロンレベルでの磨きができる金型磨きの匠の技によるところが大きいのです」
ものづくりを志す子どもを増やしたい
-----なぜ、キッザニアの出展に「金型磨き職人」を選んだのですか?
「マツダらしい、カッコいい車を作るためには金型を手で仕上げる職人という仕事があることを子どもたちに知ってもらい、マツダのクルマ作りへのこだわりを知ってほしかったからです。今回の体験が原体験となり、将来、ものづくりを志す子どもたちを1人でも増やしたかったからです」
提供:マツダ/回答者の小野寺貢さん「何事にも本気で伝える」がモットー
-----出展にあたって、特にこだわった点は?
「リアルにこだわりました。具体的には『人とブース環境のリアル』です。
人のリアルは、会場で子どもたちに指導しているのは、実際に現場で金型磨きを担当している本物の職人でした。
ブース環境のリアルは、今回工場の一角を再現したものですが、可能な限り現場から実際使用しているものを持ってきました。例えば、扇風機や標語などです。『何事にも本気で伝える』がマツダのモットーです」
-----ここまで徹底した本格仕様のブースをつくるのは、大変だったのでは?
「職人の所属している部門が、今回の出展の趣旨に非常に理解を示し、全面的に協力してくれました。
ブース設計や施工をお願いした代理店の方からも我々の想いを忠実に実現できるようサポートいただきましたので、苦労はなかったです。
全員が一丸となり一つの目標にまい進した結果、我々が予想していた以上にリアルになったと、私も驚いています」
約1000名が体験、反響の大きさに驚き
-----参加人数や体験者の反応など展示への反響を教えてください。
「トータルで約1000名ほど体験してもらいました。
ほとんどの子どもたちは自分が作業していくにつれ輝きを増していく金属プレートをみて、達成感を味わっているようでした。
体験した子どもさんよりも、保護者の方やそれ以外の大人の方々から、非常に関心を寄せられ『渋いね、自分もしてみたい、大人はできないの?』とポジティブな反応が多かったです。
会期後半になると、この金型磨きがSNSやWEBサイトで話題になっていたようで、予約開始後、一目散にマツダブースに予約してくるお子様や保護者の方も多くおり、私たちも反響の大きさに驚きました」
提供:マツダ-----クルマづくりに込める思いとビジョンを教えてください。
「マツダはクルマの持つ可能性を信じています。
私たちがお届けするクルマによって、クルマに乗る方々の心と体を元気にし、人生をより豊かに過ごしていただきたい、そんな想いを込めて、クルマに乗る方々に寄り添った人間中心の開発を行っています。
例えば、運転するときのドライビングポジションは、人がクルマに合わせるのではなく、人がシートに着座し、自然に手足を伸ばしたところにステアリングやペダルをレイアウトしました。これにより長時間乗っても腰が痛くなったり、疲れたりしにくいクルマづくりを行っています。
愛車や相棒と呼べるような、生命感の感じられるデザインにすべく、クレイモデラーや金型磨き職人など、人の手による温かみを残すため、匠の技を随所で活かしたクルマづくりを行っています。
今後もお客様にOnly Oneと言っていただけるような、お客様と強い絆で結ばれたブランドになることを目指していきます」
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