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西田宗千佳のトレンドノート:「低価格パソコン」ではなく「iPad」を選ぶべき理由

西田宗千佳

2019/10/30(最終更新日:2019/10/30)


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スマホだけでは仕事はできない。だから、会社で支給されるものとは別に個人でもパソコンを購入したい……、そんな風に考えている学生の方も多いのではないだろうか。 

とはいえ予算にはあまり余裕がないから、3万〜5万円で売られているパソコンを……という発想もあるだろう。だが、筆者は別の選択肢も提示する。「iPadを買う」ことだ。

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従来、iPadをパソコン代わりに使うのは難しかった。しかし10月に公開された「iPadOS 13」をインストールすると、パソコンとiPadの差がかなり縮まる。 

iPadがパソコン的に使えるようになった理由はなにか、そして、低価格なパソコンをお勧めしにくい理由はなにかを解説していく。

格安パソコンを買うよりiPadを買った方が快適な理由 

筆者は低価格なパソコンをあまりおすすめしない。正確には、「価格を下げることを前提としたパソコン」をお勧めしない。 

例えば、ドン・キホーテが「情熱価格」というプライベートブランドで、2万円・3万円という価格のパソコンを販売している。「ジブン専用PC&タブレット U1」は、2万円を切る1万9800円で販売されている。1kgを切る軽量パソコンでこの価格……となると飛びつきたくなる人もいるかもしれない。 

だが、筆者はこのPCをお勧めしない。なぜなら、性能が厳しいからだ。CPU性能が低く、メモリーも4GBと少ない。マイクソフト・オフィスなどで文書を作成するにもギリギリだろう。少なくとも、2年・3年を超えて使い続けられるパソコンではない。 

こういう話をすると、パソコンにある程度詳しい人から、「でも、ウェブを見たりYouTubeを楽しんだりするならギリギリで、十分なのでは」という反応をされることがある。だが、それでももはやお勧めはしない。なぜなら、iPadにキーボードを付けた方が快適だからだ。

9月30日、アップルは「iPad」の新モデルを発表した。同社のiPad関連ラインナップの中で一番安価なモデルで、3万4800円(税別)から。このiPadがとにかくお買い得だ。

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9月末に発売された新「iPad」。別売のキーボードを使うとノートパソコン的に使える。iPadOS 13搭載で、「パソコン的使い方」がしやすくなった。

このiPadは最廉価モデルだが、ウェブやYouTubeの動画で動作が遅くなることはない。おそらく2年後でもその点は変わりないだろう。

CPUの性能などは抑え気味だが、iPadはOSの特性上、利用者にはそのことが感じられづらい。ギリギリの性能しか持たないパソコンよりもずっと快適だし、陳腐化しづらい。2万円のパソコンよりもずっと使いやすいことを保証する。 

とはいえ、過去にはこうした使い方を推奨しづらい部分があった。それは、パソコンとiPadなどのタブレットでは「違う」ところが大きすぎたからだ。表示されるウェブも違うし、ファイルのダウンロードもできない。扱える文書にも違いが大きく、Zip圧縮のファイルをひとつ扱うにも、アプリを併用するなど特別な操作が必要とされた。 

しかし、iPadOS 13からはそうした部分が大幅に改善された。ウェブは「パソコンと同じものを表示する」のが基本になり、表示品質・動作速度ともに問題なくなった。ファイルの扱いも改善され、ウェブからファイルをダウンロードしたり、Zipファイルを扱ったりすることもできる。 

もちろん操作はパソコンとまったく同じではなく、iPadOSならではの流儀を憶える必要はあるが、簡単なのですぐに身につくだろう。 

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アプリについては、ウェブやYouTubeの利用以上に低価格なパソコンとの差が大きい。低価格なパソコンで動画編集をするのはほぼ不可能だが、iPadならできる。ゲームも同様だし、ペンを使って絵を描くのも問題ない。マイクロソフト・ワードやエクセルもある。 

正直、無理に価格重視でパソコンを買うくらいなら、iPadを買った方がずっと満足度が高くて快適だ。OSの変化により、最大の弱点だった「ファイルの扱い」「ブラウザの違い」もなくなった

キーボードも、純正のものは1万7800円とちょっと高価だが、Bluetooth対応のキーボードは2000円から3000円で売られており、バリエーションも多い。価格とタイプ感で好きなものを選べる。 

「高性能なパソコン」にはそれだけの価値がある 

とはいうものの、「iPadがあればパソコンはいらないのか」というと、そうでもない。

パソコンでしか動かないソフト、例えば業務用アプリや3DCG作成ソフトなどを使うなら、やはりパソコンでなくてはならない。iPadにはマイクロソフト・ワードやエクセルが用意されているが、レイアウトなどの互換性は100%とはいえない。その違いにこだわるなら、やはりパソコンであった方がいい。 

しかしその場合には、いわゆる低価格パソコンでは能力が足りない。メモリーが8GB以上あり、ディスプレイの解像度も最低フルHDはあって、CPUもインテルのCore iシリーズなどを使っている「ちゃんとしたパソコン」を選ぶべきである。

そうなると、価格は最低でも8万円くらいから。3DCGや動画編集などに対応できるものは、20万円以上の予算を用意しておいた方がいい。 

逆にいえば「コストはかかるがなんでもできる性能」を用意できるのがパソコンというプラットフォームの強みだ。そうした高性能なパソコンは、数年使っても陳腐化しない。 

また、日本語入力の変換効率では、まだiPadよりパソコンの方が良い。iPadでの変換にはクセがあり、好みが分かれる部分が大きい。

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パソコンは日本語入力ソフトを入れ替えることで使い勝手を改善できるが、iPadの場合、日本語入力ソフトを入れ替える構造になっておらず、販売されているいくつかのソフトもパソコン用のものに比べ完成度が低い。これはOSの構造の違いによるもので、アップルが方針を変えない限りどうしようもない。 

他方、パソコンは多数の処理が重なると全体の動作が重くなりやすい。そのため、性能が低いパソコンでは文字入力にもたつきがでることがあるが、iPadではそうしたことはほとんど起きず、常にスムーズかつ快適に文章を書ける

高性能なパソコンでは起きづらいことなので、こういう点も「低価格で性能が低いパソコンを無理に買うことを勧めない」理由でもある。 

仕事をするのにスマホだけではダメ、というのは事実だ。パソコンの流儀に慣れておいた方がいいのも事実である。 

だがそこで、「パソコンならなんでもいいのだろう」と考えて、安物買いの銭失いはしてほしくない。

低価格かつ低性能なパソコンでも、パソコンの構造や設定をよく知っている人は使い続けられる。しかしそうでない人は、すぐに動作が遅くなり、使い勝手が悪くなって使わなくなる。そのくらいなら、iPadのようなデバイスを選んだ方がずっといい。過去との違いは小さく、パソコン代わりに使うのも問題ない。

パソコンを買うのであれば、それなりの予算を用意して「ちゃんとした性能のパソコンを買うべき」なのだ。

今なら、「メモリーが8GB」「ストレージが128GB以上」「CPUはインテルのCore i5を採用」「ディスプレイは1920×1080ドット以上」というところだろうか。予算はだいたい8万円から10万円を用意しておきたい。 

今のパソコンは、ちゃんとした製品を選べば、スマホより長く使える。4年から5年使うつもりで選んでみよう。その方が、きっと後悔しない。


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