HOMEビジネス Googleで「ネコ」と検索すると現実にもネコが出てくる!?スマホで進むARの基盤整備【西田宗千佳のトレンドノート】

Googleで「ネコ」と検索すると現実にもネコが出てくる!?スマホで進むARの基盤整備【西田宗千佳のトレンドノート】

西田宗千佳

2019/10/02(最終更新日:2019/10/02)


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現実にCGを重ねる「AR」は、大きな可能性を持つ技術である。だが、その利用はちょっとしたプロモーションやゲームなどに限定されているのが現状だ。 

そこに一石を投じる動きがある。SNSでも話題のある機能について、その背景を解説してみたい。 

Google検索に「3D表示」が追加 

お手元にスマホがあったら、ちょっと屋外もしくは室内の明るく開けた場所に出て、Googleで以下の検索をやってみてほしい。

検索キーワードは単純。「ネコ」や「イヌ」、「ペンギン」などの動物の名前だ。 

ご存じのように、Googleで検索をすると、その検索対象の概要や写真がまず現れる。だが、実はスマホで検索するとこれだけでは終わらない。概要の下に「実物大の動物が目の前に迫ってきます」という3D表示の項目が現れるはず。さらに、その下の「3D表示」ボタンを押してみていただきたい。  

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スマホからGoogleで動物の名前を検索すると「3D表示」ボタンが現れることが  

すると、スマホの画面に映った目の前の空間に、その動物の3D CGが表示されるはずだ。サイズは実際の動物と同じ。毛皮のやわらかな感じなど、どうしてもスマホのCGで再現するのが大変な部分は簡素化されているものの、形状もかなりリアルである。 

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Googleで「ネコ」と検索すると現実にもネコが出てくる!?スマホで進むARの基盤整備【西田宗千佳のトレンドノート】 3番目の画像
Google検索のAR表示機能を使って呼び出したネコとペンギン。周囲の風景にうまくなじんでいる点に注目。  

この機能自体は、Googleの「ARCore」やアップルの「ARKit」といった技術に対応した、過去4年くらいのスマホで利用できる。だが特に、2018年以降発売の比較的新しいスマホの場合には、後ろや前を通る人、影などがCGと自然に混ざり合い、本当に「そこにいる」ように見える。  

この機能、スマホ向けGoogle検索の新機能の一部として、今年の5月末頃から実装されていたもの。以降、時折SNSなどで動画がバズっている。比較的新しいスマホやタブレットが必要だが、誰もが無料で楽しめること、簡単に使えることがポイントだろう。 

スマホの上で着々と進む「AR技術基盤」 

なぜこんなことができるのか? 理由は2つある。 

ひとつは、最新のスマホやタブレットには、ARを実現するための基盤機能がすでに搭載されている、ということだ。前出の「ARCore」「ARKit」という技術がそれに当たる。これらの技術では、カメラから得た画像から奥行きなどを推定し、CGを自然に重ねることができる。

特に最新のiPhone(今年発売のiPhone 11や昨年発売のiPhone XS/XRなど)やGoogleのPixelシリーズなどは、人のシルエットを認識する機能を持っており、それを使うことで、うまく「CGと人を重ねる」ことができるようになっている。 

アップルやGoogleのアプリストアを検索すると、意外なほど多くのARアプリが見つかるだろう。それらは皆、こうした「AR技術基盤」の賜物であり、両社がスマホでの基盤整備を争うように進めていることが、アプリの登場を促している。 

一方、Googleの検索で動物のARが出てくるのは、さらに次の要素が付け加わっているからである。 

それは「GIFやJPEGと同じように、ウェブで簡単に使えるAR用の3Dフォーマットが用意されている」からだ。

ウェブ上で画像が表示できるのは、ウェブブラウザーが画像と文字をレイアウトして表示することに対応しているからであり、そこで使えるオープンな画像フォーマットが定められているからだ。アップルは「usdz」という形式の、Googleは「glb」という形式の3Dフォーマットを利用しているが、どちらもオープンで、誰もが無料で使える。 

ということは、ウェブブラウザー上に一定のルールに従って記述しておけば、ワンタップで3Dオブジェクトを現実に呼び出し、ARとして配置することができるようになっている、ということでもある。 

前出・Googleの動物検索の例もこの機能を使ったもので、オブジェクトの用意こそ大変だが、「ARとして表示できるようにする」ことはとても簡単である。 

これがどう使えるか? ショッピングなどにはきわめて有効だ。 

アップルは今春から、自社の製品について、ウェブの情報の中に「AR」を組み込んでいる。iPhone・iPadから同社のウェブにアクセスすれば、製品がどんなデザインでどのくらいの大きさなのか、ARを使って簡単に確認できるようになっているのだ。 

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iPhoneやiPadからアップルのページにアクセスすると、ARを使い、製品を実空間に呼び出して確認できるようになっている。

同様のことは海外のショッピングサイトで始まっており、ショッピングサイト構築サービス大手の「Shopify」は、同社のサービスの中に、ARでの商品展示機能を標準搭載している。  

こうした要素は、すでに特別な要素ではなく、みなさんのスマホであたりまえにできることなのである。

ARグラス時代を目指して「スマホから準備」 

とはいうものの、今のスマホで毎日ARを使う人はまれだ。スマホをかざしてARを見るのは楽しい体験だが「便利な体験」かというと疑問も残る。なにより「めんどくさい」からだ。 

ではなぜアップルやGoogleは、積極的にAR基盤整備に取り組んでいるのだろうか?理由は「この先があるから」だ。 

具体的な製品計画は発表されていないものの、アップルもGoogleも、メガネ型のAR端末を開発しているのは間違いない。メガネをかけて、そこにスマホで見えていたような「現実とCGが重なった世界」が見えれば、今のスマホ向けARよりずっと実用的なものになる。9月25日にはFacebookも、米・サンノゼで行っていた同社の技術カンファレンスにて、「ARグラスを開発中である」と表明した。 

ハードウエアがあってもサービスはすぐにできない。特にARは、ディスプレイ技術や通信技術などの進化が必要で、今日すぐに実用的なハードウエアを低価格に販売できる状況にない。だからこそ、アップルやGoogleはまずスマホ上でソフトウエア基盤やウェブでの活用基盤を作り、さらにその先の「ARグラス時代」に備えようとしているのである。

iPhoneで「ネコ」を検索するとネコが現実に現れるのは、未来の姿の先取りなのである。


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