ドコモは9月20日に、5Gのプレサービスを開始した。
プレサービスとは、商用サービスに先立って提供されるもの。ユーザーが自身の回線として契約できるわけではないため、位置づけとしては実証実験に近い。にも関わらず、ドコモはこれを“実質的なスタート”とうたった。その理由は、利用する基地局や端末の規模感にある。
ドコモは9月20日に5Gのプレサービスを開始した
基地局には、総務省から割り当てられた3つの周波数を使用する。3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯がそれだ。前者2つは「Sub-6」(サブシックス)と呼ばれる6GHz以下の周波数。電波は周波数が低ければ低いほど、建物などに回り込みやすくなり、飛距離を稼げるようになるため、この2つはエリアを広げるために利用される。
もう1つの28GHz帯は、いわゆるミリ波と呼ばれる帯域。直進性が非常に強く、人体などにさえぎられただけで大幅に減衰してしまうが、代わりに利用できる帯域の幅が非常に広いため、通信速度を稼げるのが特徴だ。
ドコモはSub-6で2.4Gbps、ミリ波で3.2Gbpsの理論値を打ち出しており、いずれも現行の4Gより高速。超高速という5Gの特徴を生かした格好だ。
プレサービスでは商用環境と同じ周波数や設備を使い、エリアを広げていく
プレサービスでは、ドコモショップや企業とのコラボレーションを行う「ドコモ5Gオープンラボ」だけでなく、スタジアムや駅、空港などにも基地局を設置。これらのプレサービス用基地局は、終了後も撤去せず、そのまま本サービスでも使用されるという。
基地局の展開は「前倒しを予定している」(代表取締役社長・吉澤和弘氏)といい、2020年の第1四半期には47都道府県でサービスを開始。1年後には、「1万局の構築を目指す」という。
端末も、商用さながらのラインナップをそろえた。中でも、サムスン電子製のものは、海外で市販の「Galaxy S10 5G」がベース。専用ケースに装着すると2画面端末として利用できる、LGエレクトロニクス製の端末も「LG V50 ThinQ 5G」として販売中のモデルだ。これら2機種に加え、ソニーモバイル製の試作機も用意。Wi-Fiルーターの試作機はシャープが開発した。
▲サムスン製の端末はGalaxy S10 5Gがベース
▲Xperiaをベースにした5G対応の試作機も登場
これらの端末は購入こそできないが、プレサービスの様々な場面で利用される。
たとえば、プレサービス開始日の9月20日に実施されたラグビーワールドカップのパブリックビューイングでは、LGの端末を会場に設置。一部を5Gに直接接続し、マルチアングルのコンテンツを楽しむことができた。2画面端末の特徴を生かした、5Gならではの体験をユーザーにいち早く届けるのが、プレサービスの狙いといえる。
LG端末は2画面の特徴を生かしたコンテンツを検証するために導入された
プレサービスとして実証実験以上にエリアを広げたうえに、企業とのコラボレーションも拡大する。
ドコモはドコモ5Gオープンラボとして、企業ユーザーが5G環境を検証できる拠点を設置していたが、これを4拠点から11拠点に拡大。札幌、仙台、名古屋、金沢、広島、高松、福岡にラボを構えるほか、「ドコモイノベーションクラウド」というクラウド基盤も提供する。
企業との協業もプレサービスを機に拡大し、B2BやB2B2C領域での活用も視野に入れる
一方で来春に開始する本サービスの料金は、現時点では未定だ。プレサービスの発表会では「料金は発表し切れていないが、5Gならではの使いやすい料金にしていく。データ量は増えるが、それに応じて料金が上がるようなことは考えていない。「ある程度の制限を加えるのか、無制限にするのかも考えていく」(同)と語られていたが、詳細は明かされていない。
端末価格がいくらになるのかも、気になるポイントだ。先行して5Gのサービスを開始した海外を見ると、5G対応のスマートフォンはハイエンドモデルが多く、価格も10万円を超えるものが多い。2020年にはミドルレンジモデルにも5Gモデムが広がる見通しだが、それが主流になるには、もう少し時間がかかりそうだ。
10月からは、端末購入補助にも最大2万円の制限がかかるため、ユーザーの買い替えが順調に進むかは不透明と言えそうだ。
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