楽天は、自社回線を使ったサービスを10月1日(火)から開始することを明かした。
ただし、最初は「スモールスタート」になるといい、ネットや店舗での大規模なプロモーションは行わない。ユーザー数を限定したうえで、ネットワークへの影響を見ながら徐々にサービスを広げていくという。
料金プランなどは、現時点では未定。9月上旬にサービス内容の一部を発表する予定で、詳細は徐々に明らかになっていくようだ。
楽天の三木谷氏によると、10月1日(火)のサービス開始直後は、限定的なサービスになるという。完全仮想化ネットワークでコスト削減、ユーザーに還元も
楽天が強みにしているのが、完全仮想化されたネットワークだ。
一般的に、携帯電話の基地局やコアネットワークには、ベンダーの提供する専用の機器が使用される。コアネットワーク部分は、汎用機器とソフトウェアの組み合わせに置き換えられつあるが、基地局部分まで仮想化するのは楽天が初。専用機器がいらないため、コストを抑えやすいのがメリットだ。楽天は低コストの恩恵を、ユーザーの料金にも反映させる方針を打ち出している。
単にコストが安いだけでなく、ネットワークに何らかの新機能を加えたいときに、柔軟な対応ができるのも仮想化されたネットワークのメリットといえる。
楽天の会長兼社長の三木谷浩史氏は、「新しいサービスを導入するとき、一気に、しかも早く導入することができる」とそのメリットを語った。ただし、その真価が発揮できるのは、5Gが導入されてからになる。
完全に仮想化されたネットワークが、楽天の強みだという。MEC導入で遅延低減、クラウドゲームや自動運転に応用
その1つが、「MEC(モバイル・エッジ・コンピューティング)」と呼ばれる仕組みで、基地局やコアネットワークに近い位置にサーバーを置き、遅延を減らすサービスのことを指す。端末側で行っていた処理を、ネットワーク側に移すことができ、クラウドゲームサービスや自動運転など幅広いサービスへの応用が期待される。
楽天は、「4000以上のモバイルエッジサーバーを置く」(三木谷氏)方針だ。
5GではMECのサーバーを4000設置する方針だ。実際、楽天が開催した「Rakuten Optimism」には、MECの一例として、クラウドゲームのサンプルが展示されていた。
LTEだと速度が十分出ず、遅延も大きいため映像がカクカクしていたのに対し、エッジにサーバーを置いた5Gでは、あたかもローカルにデータがあるのかのように、スムーズにゲームを楽しめた。5GでMECが導入されれば、こうしたサービスが実現しやすくなる。
NSAはLTEの延長でしかない?楽天は早期にSA方式へ移行
楽天が5Gに前のめりなのには、インフラ的な理由がある。
5Gは、LTEを使って接続などの制御をしつつ、実際のデータを送受信するときだけ5Gを使う「NSA(ノン・スタンドアローン)」方式が、当初の主流になる。
ドコモ、au、ソフトバンクとも、既存のインフラを抱えながら5Gを展開するため、まずはNSAでエリアを広げていく方針だ。ただしNSAでは、5Gの特徴の一部しか実現できない。超低遅延やIoT用の多端末接続は、5G専用のコアネットワークが必要になる。
一方の楽天は、早期に「SA(スタンドアローン)」方式の導入を目指すという。他社とは異なり、既存のLTEネットワークが大規模ではないゆえに、SA方式を導入しやすい。「日本では、LTEでも1Gbps以上の速度が出ている」(タレック・アミンCTO)というように、NSAで実現できる超高速通信は、LTEの延長でしかないというのが楽天の見方といえる。
楽天は、5Gを早期にSA方式に移行させていく方針を示している。エリアや料金、ユーザー増加後のトラブルには不安の声も
ただし、携帯のネットワークは、つながらなければ意味がない。楽天が自前でネットワークを引く、東京23区、名古屋、大阪以外は、当面の間、auがローミング回線を提供する。上記3地域以外のユーザーにとっては、カバー率の広いauのネットワークを使えるのが魅力だが、逆にいえば、楽天のネットワークの強みはまったく活かせないことになる。
auのローミングを利用できない東名阪では、さらに厳しい戦いになることが予想される。サービスインまで2カ月を切っても、エリアや料金に関する詳細な発表がないのは、不安要素だ。完全仮想化されたネットワークは前例がなく、ユーザーが他社と同規模まで増えたとき、トラブルなく処理ができるのかを疑問視する関係者も多い。
こうした不安がある一方で、料金プランに対しては、大手各社が警戒感をあらわにする。ドコモやソフトバンクは、楽天の発表後に、対抗するプランを導入する方針で、腹の探り合いが続いている。10月1日のサービスインに向け、こうした動きは、さらに活発になりそうだ。
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