LINEが、信用情報を活用したスコアリングサービスに参入する。名称は「LINE Score(ライン スコア)」。点数に応じて連携するサービスで優遇を受けられるのが、ユーザーにとってのメリット。LINE以外のサードパーティも参画し、ユーザーの同意のもとで、情報を共有する。
LINEのスコアリングサービス「LINE Score」とは
信用情報は、LINE内のデータや、ユーザーアンケートを元に算出されるという。具体的には、「LINE上のコンテンツや広告、金融系サービスの利用傾向を中心にする」(代表取締役社長 出澤剛氏)というが、「当然ながら、メッセージやコールの中身は含まれない」と、プライバシーには配慮。スコアリングの基準になるデータも、「何分間このサービスを使ったというものではなく、一定のロジックに従い、抽象化した形で傾向を出す」(同)という。
具体的には、LINE Scoreを開始すると、まず100点がつく。その後、収入状況や就労状況などに関する15の質問に答えると、1000点満点でのスコアが算出される。現状では、LINE Payの本人確認を済ませると20点、LINE家計簿で1週間に1回以上入力すると20点が加算されるミッションも用意されている。スコアは、月に1回更新される仕組みだ。
ユーザーがスコアを作成するメリットは、金融サービスなどが分かりやすい。LINE自身も「LINEポケットマネー」と名づけた、少額のローンを開始するが、ここで借りられる金額は、LINE Scoreを元に算出される。
スコアが高いユーザーは、LINE Payのマイカラーのランクが上がり、LINE Payで支払った際の還元額が大きくなるのもメリットといえるだろう。LINE Scoreがレンタルサービスで利用されれば、「何度か利用しないと借りられなかった、上位のものが借りられたりする」(同)可能性もある。
「監視社会につながる」との批判も
信用情報を算出するサービスには、ネット大手や携帯電話大手など、各社が乗り出している。7月には、ヤフーが「Yahoo!スコア」を開始。ドコモは金融機関向けに、「レンディングプラットフォーム」を提供しており、融資情報に同社の算出したスコアが利用される。金融機関が調査できる信用情報には限界もあり、サービスの利用状況を加味することで、違った角度からユーザーを評価できるのが特徴といえるだろう。
先行する中国では、アリババ傘下のアント・フィナンシャルが開発した「芝麻信用」が普及しており、さまざまなサービスにこの情報が活用されている。にわかに登場したスコアリングサービスは、こうしたトレンドにキャッチアップするものだ。
一方で、ユーザーの同意がないと、プライバシーの侵害につながるほか、低スコアのユーザーを排除するような使い方が蔓延し、監視社会につながるとの批判も根強い。
実際、ヤフーが発表したYahoo!スコアは、デフォルトでオンになっていることなどに批判が殺到した。外部企業に提供する際には、別途同意を取っていたが、スコアリング自体を“気持ち悪い”と感じたユーザーもいるはずだ。
出澤氏が、再三に渡りプライバシーを強調したのも、批判を避ける狙いがあると見ていいだろう。LINE Scoreが発表されたLINE CONFERENCEでは、メッセージやコールは暗号化されているため、LINE Scoreの算出にも利用できないことが改めて解説されたうえで、出澤氏も「同意なしにスコアを算出することは絶対にない」と強調。
「プライバシーには最大限配慮しながら進めていく」と語られた。
プライバシーへの配慮が、たびたび語られた 監視社会につながるとの見方についても、「スコアリングを使ってふるいにかけたり、監視社会にするというわけではない」と否定。LINE Scoreは、あくまで各サービスで「ポジティブなベネフィット(便益)を提供するために作ったもの」(同)と語った。
透明性を高める配慮が必要に
とはいえ、ベネフィットの提供とユーザーの排除は、表裏一体の関係になる場合もある。たとえば、不動産会社がこのサービスを使って一定以上のスコアを持つユーザーに対し、先行的に物件を紹介した場合などが分かりやすい。高いスコアを持つユーザーにとってはメリットかもしれないが、結果として、低いスコアのユーザーを排除しているともいえる。
現状のスコアリングの元になるサービスが、広告や金融系など、一部に限られているため、ユーザーの行動に制約を課す可能性は低いかもしれないが、仮にLINE NEWSなどに範囲が広がれば、思想の監視や統制につながるおそれもある。スコアの算出方法を追加、変更した際には、ある程度詳細までユーザーに中身を公表するなど、透明性をさらに高める配慮は必要になりそうだ。
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