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西田宗千佳のトレンドノート:ディズニーがドコモと組んで「自社動画配信」を始める理由

西田宗千佳

2019/03/08(最終更新日:2019/03/08)


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3月7日、ウォルト・ディズニー・ジャパンとNTTドコモは共同で記者説明会を開催した。目的は、3月26日からスタートする映像配信事業「Disney DELUXE」のアピールだ。

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ウォルト・ディズニー・ジャパンとNTTドコモは共同で映像配信事業「Disney DELUXE」を開始。両社トップが顔を揃えての会見が開かれた。
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 ディズニーの会見なのでミッキーとミニーも登場。

動画配信のビジネスは競争が過熱しているが、そこにディズニーは、自社コンテンツを使って参入する。

彼らの思惑はどこにあるのか、動画配信ビジネスはいまどういう状況にあるかを解説してみよう。

ディスニーグループの映像コンテンツを1サービスに集約

Disney DELUXEは、月額700円(税別)の「定額制動画配信」サービスだ。

見られるのは、ディズニー/ピクサー/スターウォーズ/マーベルのコンテンツ。映画シリーズはもちろん、ドラマやアニメなど、シリーズ作品も視聴できる。

現状でのコンテンツ数は未公開だが、毎月新作が追加されていき、中には「日本で制作するオリジナルのもの」も含まれるという。

要は、ウォルト・ディズニーに権利が集まっている自社の制作コンテンツを一挙に配信、ファンを集約できる「わかりやすい場」を作ることが最大の目的である。

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配信対象となるのは、ディズニー/ピクサー/スターウォーズ/マーベルのコンテンツだ。 (c)Disney (c)Disney/Pixar (c)&TM Lucasfilm Ltd. (c)Marvel 

一般的な映像配信との違いは、「基本的に、一度配信されたコンテンツの配信は停止されない」ということだ。 

映像配信は、基本的には他社(映画会社など)から配信の権利を調達し、自社のサービス内で提供するビジネスである。そのため、配信権が更新されないと先日まで見られたコンテンツが、ある日から見れない……ということが起きる。

配信権が更新されない理由は様々ある。配信権の取得にはお金がかかる。だから、視聴量の落ちたコンテンツは契約を更新せず、その予算を新しいところに回す、というのは一般的なことだ。

また新しい作品であっても、「テレビ放送中はプロモーションも兼ねて配信するが、ディスク販売が始まったらそちらを重視するために配信を止める」ということもある。 

だがどちらにしろ、「コンテンツの権利を配信元が持っている」状態なら、あまり関係はない。会員制サービスでは出来る限り長く続けてもらうことが重要。

だから彼らは、「すべて、と断言はできないものの」と留保はつくものの、「サービスに登録されたコンテンツは、他のサービスと異なり、頻繁に見られなくなるということはない」(ディズニー担当者)とする。

もちろん、ディスク販売はまだ大きなビジネスだ。「定額サービスで見られるから買わない」となると、影響はあるだろう。

だがそれよりも、「時々、一部のディスクしか買わない」という多くのファンが長期的に契約してくれることによる収益可能性の増加を狙うのが、映像配信事業の本質である。一方で、配信画質は2Kまでに据え置き、4Kや「ライブラリとして自分の家に置ける満足間」でディスクとの差別化を行う。

これまでディズニーは、他社にコンテンツを提供する立場だった。だが、そうするよりも、自社で主体的にビジネスを行った方が「圧倒的に多数のファンを集められるコンテンツを持つ」立場としては、ビジネス上打てる手が増えて、収益の機会も増える。

一般的な規模の映画会社では、単に「売り場が減って収益が下がる」ことになりかねないが、ディズニーならば、「いつでも見たいから契約する」という人も多いので成り立つ仕組みである。

NTTドコモとしては、dポイントの利用顧客を増やし、課金システムとしての活用が目的になる。ドコモの回線には紐付かず、他の携帯電話事業者を使っている人々でも利用可能だが、同社はすでに「サービスと回線を紐付けない」戦略を基本にしており、「とにかく顧客があつまりそうなサービスであるならウェルカム」という立場なのだろう。

日本向けに「アプリ戦略」を重視  

ディズニーはアメリカで、2019年後半に「Disney+」と呼ばれる定額制配信サービスをスタートさせる準備を進めている。今回の「Disney DELUXE」は日本独自の取り組みで、アメリカのものとは異なる。

アメリカでの「Disney+」は、Netflixなどの配信時業者成長に対する対抗策であると同時に、アメリカではディズニー傘下であるスポーツ専門局「ESPN」の配信事業てこ入れ、という意味合いを持つ。

日本とはビジネス環境が大きく異なるので、日本のファンに特化したサービスとして「Disney DELUXE」を作った、という経緯がある。だが、今後「Disney+」向けに作られるオリジナルコンテンツも、「Disney DELUXE」で配信されていくと考えるのが自然だ。

また、「Disney DELUXE」は映像だけでなく「アプリ」展開があるのもポイントだ。ディズニー/ピクサーコンテンツ、スターウォーズ、マーベルのそれぞれに専用アプリが用意され、ニュース配信や設定・作品情報の公開、会員向けの特別グッズ販売なども行われる

実は、ニュース配信や情報公開については、「Disney DELUXE」会員になっていなくても無料で誰でも視聴できる。

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スマホから映像が見られるのはもちろんだが、別個「コンテンツ別」アプリも用意され、ニュース配信やグッズ販売も行われる。 (c)Disney (c)Disney/Pixar (c)&TM Lucasfilm Ltd. (c)Marvel
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会員向けオリジナルコンテンツのひとつの「オリジナルの動く待ち受け画面」。映像作品同様、毎月新しいものが追加される。 (c)Disney
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もちろんテレビでの視聴も可能。ソニーとシャープのテレビの他、Amazonの「Fire TV」やアップルの「Apple TV」などの外付け機器を介しての視聴も可能。 (c)Disney (c)Disney/Pixar (c)&TM Lucasfilm Ltd. (c)Marvel

日本はスマホからのコンテンツ利用が活発で、ファンが移動中や自室で暇な時に見るのもまずスマホだ。だから、スマホの中でファンとの接点を作ることは、コンテンツ企業にとって基本戦略のひとつといえる。

「Disney DELUXE」の映像はPCやテレビでも視聴可能だが、ニュースなどはアプリからしか見られない。それだけ、アプリという導線を彼らが重視している、という証拠だ。

「Disney DELUXE」は映像配信であると同時に、ファンへの動線確保が目的だ。とすると、日本ではまず「ディズニーでの統合的アプリ」の展開があり、そのあとで映像配信に計画が拡大されていった……と考えるとわかりやすい。

どちらにしろ、こうしたことができるのは、ファンの規模とクオリティの両方を兼ね備えたディズニーだからこそだ。(個人的な根拠のない予想だが、もしかしたら、日本ではジャニーズなら同様のことができるのでは……とも思う)


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