ジョージ・クルーニーが強盗団のボスを演じる「オーシャンズ11」シリーズの女性版として世界中でヒット中の「オーシャンズ8」。その日本公開が間近となった。
刑務所でのお務めを終えて出所して来たクルーニー扮するダニー・オーシャンの妹、デビーが、女性ばかりを集めて巨大ダイヤ強奪に挑む物語は、#MeToo運動に呼応する形で製作された女性映画の決定版と見る向きは多い。確かに、その視点は正しいだろう。
“21世紀型クロスメディア映画”の成功作!!
しかし、この映画には他の見方もある。映画界、ファッション界、そして、アート界が一大コラボレーションを実現させた“21世紀型クロスメディア映画”の成功作という見方だ。
出所したその足でニューヨークの高級デパート、バーグドルフ・グッドマンに向かったデビーは、その道のプロ独特の手法で欲しいコスメを次々と無料でかすめ取った後、まずは旧知の相棒と合流。
さらに、デザイナー、宝石職人、盗品ロンダラー、天才ハッカー、スリ、そして最後に加わるセレブと、ダイヤ強奪に必要なメンツを一気にリクルート。そして、強奪劇の舞台、ニューヨークのメトロポリタン美術館の偵察に着手する。
以上は、ハリウッドお得意のケイパームービー(金庫破り映画)のルーティンを踏襲した、言わば映画界が提出したアイデアだ。
これにファッション界とアート界が協力する。デビーたちが狙うのは、メトロポリタン美術館で毎年5月の第一週に開催されるチャリティ・イベント“メットガラ”に、セレブが身に付けて来る時価1億5000万ドルの巨大ダイヤモンドネックレスだ。
さて、この“メットガラ”。毎回テーマを決めて招待されたセレブにテーマに則したドレスコードを強いるのが仕来りだ。
例えば、2015年には「鏡の中の中国」というテーマが提示され、中国を意識したドレスに身を包んだセレブたちがメットを面階段でカメラのフラッシュを浴びた。そのレポートはドキュメンタリー映画「メットガラ ドレスを纏った美術館」で事細かく描かれている。
映画はまるでキャットウォーク?
ワールドプレミア@リンカーンセンター 映画の主戦場がその“メットガラ”なのだから、当然、ファッションがハイライトとなる。ここでファッション界の出番だ。
デビー役のサンドラ・ブロックはアルベルタ・フェレッティのシースルードレスで、相棒、ルー役のケイト・ブランシェットはエメラルドが散りばめられたジバンシィのジャンプスーツで、女優ダフネ役のアン・ハサウェイは7.5メートルのケープ付きヴァレンチノのピンクドレスで、ハッカー役のリアーナは真紅のザック・ポーゼンで、デザイナー役のヘレナ・ボナム・カーターはドルチェ&ガッバーナで各々着飾り、影で強奪計画が進行して行く。
映画とファッションとのコラボは劇中に止まらない。現地時間去る6月5日、ニューヨークのリンカーンセンターで行われたワールドプレミアでは、ブロックがエリー・サーブを、ブランシェットがミッソーニを、ハサウェイがジャン=ポール・ゴルチエを、リアーナがジバンシィを着て登場し、「オーシャンズ8」が近年最大のファッションムービーであることを強調。ブランドにとってまたとない宣伝になったことは言うまでもない。
一番得したのはメトロポリタン美術館かもしれない
本物のメットガラ@2018年5月さらに、注目すべきはアート界、つまりメット側が仕掛けた協力体制だ。撮影のために館内や展示物を提供したばかりか、今年も5月に行われたカトリックがテーマの“メットガラ”にリアーナを招待。
シルバーのクラウンを頭に乗っけたローマ法王みたいなルックのリアーナに派手なスポットが当たった。
そもそも“メットガラ”はファッションが注目されがちだが、真の目的は美術館運営のための寄付金集め。名だたるセレブを招待してセレモニーを大々的にアピールし、それに刺激された富裕層から巨額の寄付を取り付け、招待される側は自分がセレブだと認められて虚栄心を満足させる、というからくりだ。
こうして、メトロポリタン美術館はさらに所蔵品を増やし、ブランドは最新クチュールのプロモーションに成功し、映画は大ヒット。そんなウィンウィンの典型が「オーシャンズ8」なのである。
【作品情報】
「オーシャンズ8」
8月10日(金)全国公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式ホームページ:https://wwws.warnerbros.co.jp/oceans8/
© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
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