「すべからく」という言葉は4割もの日本人が誤用している言葉です。
本記事では、「すべからく」の意味や使い方、言い換え方法などをご紹介します。「すべからく」の意味をいまいち理解していない人は、本記事で正しい意味・使い方をチェックしてみてはいかがでしょうか。
「すべからく」の意味とは?
日常ではあまり使用されない「すべからく」ですが、かしこまった話し方をするときに使われることもあります。
相手や自分が「すべからく」を使う際に意味がわかるように、まずは正しい意味をチェックしていきましょう。
「すべからく」の意味
「すべからく」は、「当然、ぜひとも」「ぜひともしなければならない」という意味をもっています。漢文では「須く」と書きます。
「すべからく」という言葉は、「余すことなくすべて、全員、みんな」という意味で誤用されることが多いです。
しかし、「須」という漢字の意味には「余すことなくすべて、全員、みんな」という意味はありません。
正しい日本語を話すためにも「すべからく」を使う際には、誤用しないように注意しましょう。
「すべからく」の意味
- すべからく(須く):当然、ぜひとも、ぜひともしなければならない
- ※「余すことなくすべて、全員、みんな」などの意味は一切ない
「すべからく」の語源・由来
「すべからく」を誤用しないためにも、「すべからく」という言葉の由来もセットで覚えておくことをおすすめします。
本来「すべからく」は、漢文訓読に由来する語。「すべくあらく(すべきであることの意味)」の訳として漢文や古文で使われてきた、古い言い回しの言葉です。
「すべからく〜(べし)」などと、「すべからく」の下には「べし」が伴って使用されます。
上記の画像は、再読文字である「須く」を使用した漢文の例文です。古くからの「すべからく」の使い方を見ても、「すべて」という意味がないことは一目瞭然です。
「すべからく」の正しい使い方・例文
「すべからく」の正しい意味について理解したところで、「すべからく」の使い方を用例からチェックしてみましょう。
「すべからく」の正しい使い方・例文①
「すべからく」が使われた一文、「外交官はすべからく大衆にアピールする外交術を身につけるべきである」。
これは、「外交官は大衆にアピールする外交術をぜひとも身につけるべきである」という意味です。
「すべからく」の正しい使い方・例文②
上記の例も、先程の例文同様に「すべからく〜べき」と、「べし」を下につけています。「べし」ではなく「べき」になっているのは、べしの後ろに名詞があるので「連体形」になっているからです。
「知識は人間にとって当然大切なものであるべきだが、できれば知りたくなかった」という意味を表します。
「すべからく」の正しい使い方・例文③
「万事万端浮世のことは、(当然)すべて科学的でなければならない」という意味です。
意味を誤認していた人からすると違和感のある文章なのではないでしょうか。
「すべからく」の正しい意味は、「当然、ぜひとも」なので、「すべからく」の後に「総(すべ)て」をつけていても、問題ありません。違和感を覚えた人は、正しい意味を頭に入れ直しましょう。
「すべからく」の正しい使い方・例文④
「真に実在するものは現実にではなく、当然のこととして、現実を超越した“観念の世界”にあるべきものである」という意味。
上記の例文は「すべからく」を間違った意味の「すべて、みんな」に置き換えても意味が通ってしまうため要注意です。
「すべからく」の意味を誤認する日本人は40%
「すべからく」を「すべて、みんな」などの意味と誤認する人は40%程度とかなり多いです。
よく誤用される内容もチェックして、同じ間違いをしないようにしていきましょう。
「すべからく」の意味を正しく理解している人は10人中6人
文化庁が平成22年に行った「国語に関する世論調査(全国16歳以上の男女を対象、有効回収数2,104人)」。
この調査では、「学生はすべからく勉学に励むべきだ。」という例文を挙げて、「すべからく」の意味を質問しました。
正しい使い方である「“当然、ぜひとも”という意味」と回答した人は41.2%。誤った使い方である「“すべて、皆”という意味」と回答した人は38.5%という結果になりました。
大まかな割合でいうと、「すべからく」の意味を正しく理解している人は10人中6人ということになります。
人気アニメ作品から政治家まで!「すべからく」の誤用例①
古い言い回しである「すべからく」という言葉。その意味を正しく認識している日本人が少ないということは、上記の調査からわかるでしょう。
誤認の多い日本語「すべからく」。その意味を誤って覚えている人は、実は人気漫画の世界や政治家にもいます。
プロが間違えてしまった「すべからく」の誤用例を確認し、同じ間違いをおこさないようにしましょう。
人気アニメ「機動戦士ガンダム」のセリフ中に、「すべからく」の誤用が見受けられます。
この文章では「国民一人ひとり」を誇張するような形で「すべからく」を誤用しているように見えてしまいます。
「国民一人ひとりの勤労と汗の結晶の成せる業である」と、「すべからく」を文頭から取るのが正しい使い方であるといえるでしょう。
人気作品から政治家まで!「すべからく」の誤用例②
第三次安倍内閣発足時、安倍首相が記者会見で語った言葉です。「すべからく新たな挑戦であります」という言葉は、「全く新しい挑戦」などという意味で使われていることが予想できます。
しかし、「すべからく」には「すべて」などという意味は含まれていません。
政治家のスピーチや演説の内容を作成する担当者が「すべからく」の意味を誤認していたという場合もあるため、政治家本人のミスと一概にはいえないでしょう。このように、演説のプロでも間違えてしまうような言葉であるため、正しい使い方をしていると「語彙力がある」と思われる可能性が高いです。
「すべからく」の代わりに使える言葉
「すべからく=すべて、みんな」と誤認していた場合、「“すべからく”の代わりに何を使うのが適切か?」と考えることもあるのではないでしょうか。
「すべからく」を「すべて、みんな」といった意味で誤用していた人は、どんな言葉を使えばいいのでしょうか。
「すべからく」の代わりに「あまねく」を使うのは正しい?
「すべからく」の意味や使い方を解説するサイトの中には、「すべて、みんな」という意味ならば「あまねく」を使えば問題ないという意見もあります。
「あまねく」は「広く、もれなくすべてに及んでいるさま」という意味。「世間にあまねく知れ渡る」のように用います。
「すべて、みんな」とは少し意味が異なるため、すべてのシーンで使用できるわけでもないので注意しましょう。文化庁の調査で使われた例文に「あまねく」を当てはめると、違和感があるのがわかります。
「あまねく」の使用例
- 学生はあまねく勉強すべきだ
→違和感アリ - 学生は5教科すべて、あまねく勉強すべきだ
→「学生は、5教科もれなくすべて勉強すべき」となるため正しい
「すべからく」などの日本語は無理に使わないのがベスト
「すべからく」「あまねく」などの日本語を正しく使えると、教養がある人間と思ってもらえることもあるでしょう。
しかし、コミュニケーションに置いて最も大切なことは「相手もわかりやすいように話すこと」。円滑にコミュニケーションを取るためにも誤解のない言い方をするほうが賢明です。
「すべからく=すべて、みんな」と誤解している人が多いことを認識し、相手によっては「全ての学生は勉強すべきだ」と簡単に言い換えて使う配慮が必要なときもあるでしょう。
相手とストレスのないコミュニケーションをするためにも、無理に難しい言葉を使用しないのも一案です。
日本語の正しい意味を理解して活用しよう
- 「すべからく」は「すべきである」との意味
- 「すべて」といった意味で誤用されることが多い
本記事では、「すべからく」の意味を紹介しました。
「すべて」といった意味で間違って使われやすい言葉ですが、本来は「すべきである」という意味を持ちます。ただし、誤った意味で理解している人も多いため、正しく使っていても相手に意味が伝わりにくい可能性もあります。
齟齬なくコミュニケーションを取るためにも、誤用の多い表現はなるべく使わず、わかりやすい言葉を使ってコミュニケーションを取ることも検討してみてはいかがでしょうか。
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