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- +「きど藤」
店と常連客との間で、暗黙のルールみたいなのが出来ているタイプの店がちょっぴり苦手だ。
メニューや店内のどこにも書いていないのに、
「高菜は先に食べてはならぬ」とか、
(え、こんなに堂々と卓上に置いてあるのに?)
「ソースをつけてはならぬ、いったん塩で食べよ」とか、
(素材の味を確かめさせる文化なに)
「注文時にニンニクの量を伝えねばならぬ」とか。
(普通で。とにかく普通でお願いします)
仕様がわからずちょっとあたふたした時の「ったく困るんですよねぇ、そんな状態でうちに来られては」と、半ばやれやれといった感じで店員や常連客から向けられるあの愛のない目といったら……半べそ。なんかはずかしいし、かなしいし、でも料理はおいしいし。
そう、そういう店の大体は料理がおいしい。注文のアイウエオをわざわざアナウンスしなくとも勝手に客たちが熱心にネットやらで勉強してきてくれるほどに、魅力的で、人気店だ。嫌なら行かなくていい、これに尽きる。
これに尽きたうえでもう一度息ふきかえして登場するけど、もっと新規客にも優しくしてほしい。新鮮なニンジン求めてぴょんぴょんきた野うさぎをスリッパで撃ち返すみたいなことしないでほしい。うさぎかわいそう。
……さて。愚痴はこれくらいにして、今回紹介するのは、こんな『店と常連客が団結してる店ニガテ民』にはちょっとだけハードルが高いかもしれないお店。
毎度高円寺の好きな店を紹介していますが、今回はこちら。
「きど藤」
「きど藤」は高円寺にある立ち飲み屋さん。価格の安さとメニューの豊富さが評判で、界隈の飲兵衛たちが足繁く通う。
わたしのような一人飲みビギナーにとっては憧れの店だが、これまで足を運んだことはなかった。渋っていた理由はただひとつ、きど藤の接客にある。つまり
店員の兄ちゃんがちょっとコワイらしいのだ……。(小声) きど藤に通う友人や馴染みの高円寺の美容師さんたちからは
「まったく客に媚びない」
「塩対応を超越したなにか」
との声を度々聞くし、「えい、酔った勢いできど藤デビュー!」と意気込んでも、悲しいかなきど藤にはお酒を飲んでからの入店NGというルールがある。
他にも、キャッシュ・オン・デリバリー(カウンターにお金を置いておき、店員さんが注文ごとにお金をとっていくスタイル)、肘つきNG、匂いの強いタバコや香水はNGなど、さまざまなお作法が。かつ、それ以外にも常連たちの間で守られている非公式ルールまであるという。
そんなこんなで、これまでなかなか勇気が出ず行けていなかったきど藤、やっぱりどうしても行ってみたくて今回初めて突入することにした。
とにかく行ってきた。
目印の看板。きど藤は、高円寺駅北口から徒歩4分のところにある。
中通り商店街を歩き、セブンイレブンの次の次の角を左に曲がればすぐにあるはずなのだが、急に住宅街のような静かな通りになるので、気づかずうっかり通りすぎてしまう。
よく見れば通りの入り口に親切に看板が置かれているので、初めての方はそれを目指して行かれるといいかもしれない。
憧れの店を前にめちゃくちゃ緊張する。もしルールを守れなかったら、この店前のブロック塀でぶん殴られるのだろうか。
意を決してドアを開けると、厨房のお兄さんが「こっちのカウンター」と一言、指示をくれる。無事指示されたテーブルにつく。OK。
噂通り、メニューの多さに驚いた。刺身、天ぷら、フライ、カレー、なんでもある……!
ウキウキで10品くらい大人買いしそうになるが、きど藤の非公式ルール「その1. 入店したらドリンクを注文する。その2.最初のドリンクとおつまみの同時注文NG」にのっとって、まずはドリンクのみを注文。
「ここ。お金置いて」
やはり店員さんは淡々としている。だがしかし、Dragon AshのKjみたいな雰囲気で男前。ミクスチャーロックは好きですか?
赤星ことサッポロラガービール。「立ち飲み×赤星」の組み合わせは最強である。
二人の店員さんでドリンクと料理すべてを回しているため、店員さんは常に忙しそう。
様子を伺いながら、良きタイミングで料理を注文していく。ここでも、非公式ルール「その3.同時に二品以上は注文しない」をお行儀よく守りたい。
名物料理である肉豆腐。出汁がこれでもかというほどしみしみの丸ごと木綿豆腐と牛肉は、お酒がすいすい進む。
ぷりぷりの鶏レバ刺し。つるんとしていて、口の中でごま油の香りと共に溶けていく。
磯辺揚げではなく、シンプルなちくわ天。注文してから揚げてくれるので、あつあつなのがまたうれしい。
「そういえばちくわっておいしいよね」ってちくわを食べるたびに思っている気がするこの人生。
レモンサワーはハイサワーで割って飲むタイプ。
今回は注文できなかったが、ヨーグルト割りはきど藤に来たら飲むべき一杯。液体ヨーグルトではなく固形ヨーグルトで割っているため、とろっとして絶品だそう。
おつまみは、とり刺し、とりユッケ、ハムカツ、インドカレー(店員さんがカレー屋に勤めていたことがあるらしく本格派)、ウインナー揚げ(ウインナーにパリパリの春巻きの皮が巻かれている)、刺身系も新鮮でおすすめとのこと。※友人曰く
どれも200円前後で食べれられるなんて一体どうなっているんだろう。
2時間ほど滞在して分かったのが、人気店ゆえ店員さんは常に忙しく、冷たいというよりコミュニケーションを無駄にとらないという感じ。
黙々と注文されたものをトンと目の前のカウンターに差し出す姿は、やっぱりちょっと怖いといえば怖いけど、私が必要以上にビビりすぎだった感は否めない。
そして一度だけ、店員のお兄さんが常連客に向けた笑顔はとても眩しかった。通わざるをえない。
最後に、きど藤の公式ルール、および非公式ルールのおさらい。どこまで正しいかはご自身で確かめてみてください。
・一人はカウンター、二人以上は基本テーブル。入店した時に店員の指示を聞こう。
・目の前のカウンターにお金を置いておこう。できれば小銭が必要。
・ドリンクから注文。ドリンクとおつまみの同時注文はやめよう。
・一度に2品以上の注文はやめよう。
・お代わりはジョッキ戻し。
・帰りはカウンターに食器を片付け、おつりは忘れず持ち帰ろう。
・肘つき、もたれかかるのはやめよう。
・匂いの強いタバコ、香水は禁止。
・お酒を飲んできてからの入店はNG、素面で行こう。
・暴言はもちろん禁止。
あともう一つ、私が非公式ルールを足すならこれ。
ちょっぴり怖いけれどコスパ最強、慣れたらきっと一人前の飲兵衛「きど藤」。一人前になりたいのでまた行きます。
「きど藤」
電話:03-6312-5373
住所:東京都杉並区高円寺北3-3-9
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