NTTドコモ、au、ソフトバンクの3社から、夏モデルが発表された。3社とも、特に強調していたのがハイエンドモデルの「カメラ」の進化だ。
カメラはスマートフォンの中で、もっとも使われる機能の1つ。どのメーカーも、モデルチェンジごとに、画質なり使い勝手なりを強化している。そのため、読者の中には「またカメラ?」と思われる方もいるかもしれない。
ただ、夏モデルを見渡すと、スマートフォンのカメラが、従来のデジカメとは違った方向に進みつつあることが分かる。複眼化はその代表例だ。スマートフォンに2つ以上のカメラを載せ、それぞれで撮った映像を処理することで、デジカメには撮れない映像を作り出せるようになっている。
auの発表会ではカメラの利用頻度の高さが強調された
各メーカーの目指す方向性も、さまざまだ。例えば、NTTドコモが独占販売するファーウェイ製「P20 Pro」は、4000万画素のカラーセンサーと、2000万画素のモノクロセンサーに加えて、光学3倍相当のズーム用カメラも搭載している。
カラーセンサーとモノクロセンサーを組み合わせて精細感を上げたり、視差を使って背景にボケを作ったり、ズーム時に最適な条件のカメラを選んで使ったりといったことは、センサーを複数搭載でき、処理能力の高いスマートフォンならではだ。
3つのカメラを搭載し、真っ暗な場所でも撮影可能なP20 ProP20 Proやソフトバンクが導入する「Mate 10 Pro」は、ファーウェイ傘下のハイシリコンが開発した「Kirin 970」と呼ばれるチップセットが内蔵されており、これによってAIの処理能力が向上。AIで撮影するシーンを認識して、最適な設定に自動で切り替えられるのも特徴となる。
これに対して NTTドコモとauが取り扱うソニーモバイルの「Xperia XZ2 Premium」は、2つのカメラで撮った映像を合成処理することで、暗所性能を向上させた。
暗所での撮影を強化するというアプローチはファーウェイのP20 Proに似ているが、ソニーは映像処理専用のチップ「AUBE」を載せ、動画撮影を強化。ISO感度12800での撮影を実現し、夜でもキレイな動画を撮れることを売りにしている。
ソニーモバイルのXperia XZ2 Premiumは、特に暗所での動画撮影が強み3キャリアで発売されるシャープの「AQUOS R2」は、静止画と動画に求められるハードウェア設計が異なることに着目した。AQUOS R2は静止画用カメラとは別に、超広角の動画用カメラを搭載。
これによって、背景までキッチリ写した動画を撮りながら、人物などにある程度寄った静止画を撮ることが可能になった。しかも、静止画の撮影は、AIを使い、自動で行われる。AIの処理能力を高めたチップセットを搭載する、フラッグシップモデルならではの機能と言えそうだ。
複眼化とはややアプローチが異なるが、サムスン電子はGalaxy S9、S9+で、機械式の絞りをシーンに合わせて自動で切り替える機能を搭載した。
これは、スマートフォンの処理能力を生かしたものというより、デジカメのレンズ交換に近い考え方だが、暗い場所ではF1.5、明るい場所ではF2.4で撮影できる。「Xperia XZ1」などと同様、センサー側にメモリを持たせることで、960fpsのスーパースローモーション動画も撮れるようになった。
また、Galaxy S9+のみ、光学2倍相当のズームカメラを搭載したデュアルカメラ仕様で、2つのカメラで被写体との距離を認識する「ライブフォーカス」も利用できる。ファーウェイのP20 Proなどと同様、こちらも、背景ボカシに活用可能だ。ライブフォーカスは仕組み上、広角側で撮った写真も記録されており、後からよりワイドな写真に切り替えることもできる。
Galaxy S9、S9+は、機械式の絞り切り替え機能を搭載こうしたハイエンドモデルに比べると一段劣るが、auが導入を発表した「P20 lite」のように、ミドルレンジモデルの中にも2つのカメラを搭載した端末は増えつつある。
ハイエンドモデルで培ったノウハウを、コスパのいい普及価格帯のモデルに落とし込んでいるというわけだ。
OSは同じAndroidで、チップセットなどの仕様面も共通点は多いが、カメラには各社の差が明確に出ている。
各社のアプローチも大きく異なっているため、夏モデルへの機種変更を考えている人は、こうしたカメラの進化に注目しておくといいだろう。
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