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世界的な生物学者リチャード・ドーキンスが語った「人を説得することについての学び」

森澤

2018/05/14(最終更新日:2018/05/14)


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by Shane Pope

『利己的な遺伝子(1992)』や『盲目の時計職人(1993)』、『神は妄想である(2007)』など――進化生物学者・動物行動学者のリチャード・ドーキンス博士は一般向けの科学著書の作者としてかなり有名。

 無神論者として名高い彼には、多くの批判や抗議が当然のごとくよせられる。つまり、彼は議論に慣れているのだ。

 そんな議論熟練者である彼は、どのように相手を説得しているのだろうか。今回は、彼がどういった観点で説得しているのかに迫る。

 なお、動画の提供元は新たな考え方の伝播をミッションとするBig Think。

「説得についての学び」

リチャード・ドーキンス博士:ときに、説得者の矛先が、周りの想定とはまったく違う方向に向いていることがあります。そのようなとき、実際は、議論相手への説得を試みると同時に多数聴衆を説得しているのです。

長い間、私はオックスフォード大学の科学の教育者として過ごしてきました。オックスフォード大学には、生徒1人1人を対象にした特殊な制度があります。それは週に1度、1時間、講師からマンツーマンの指導を受けることができるチュートリアル制度です。

学生時代、私はこの制度が大好きでした。そして教授人生の中、私はずっとチューターでした。

生徒は私と1時間過ごすために、オフィスに相次いで訪れました。多くの生徒はエッセイを用意してきて、それについて話し合います。

そのようにして、科学的な物事について相手を説得する能力を培いました。これは私の著書に表れていると思います。

読者や相手の観点で考え、「誤解を与える点はどこだ?  言葉遣いのどこが誤解につながるだろう?」や「彼の混乱した顔を見れば、まったく理解できていないのがわかる。比喩を使えばいいのだろうか。それとも揶揄だろうか」と自問自答する習慣が私にはあります。

一般的に聞き手の目線で考えるのがいいと思います。それは、彼らの人柄を親身になって理解しようとし、共鳴するような方法で主張することです。

説得できる見込みがないときはどうするのか?

個人の説得と、聴衆全員の説得は違います。前者はオクスフォードのチュートリアル制度、後者は著書の読者たちや参加型ラジオ番組のリスナーたちです。アメリカではよくラジオ出演をしたのですが、リスナーたちから質問や抗議の電話が頻繁にきました。

実を言うと説得を諦めることもあります。そういったときは「説得の見込みがない」とみなし、数千人のリスナーたちと、抗議者との議論にどう対応するか意識します。たとえば、特殊創造論の熱狂的信者は何を言っても私の言葉を聞き入れてはくれないでしょう。

そのような人々の説得は完全なる失敗に終わるものの、他のリスナーたちは説得できるかもしれないのです。


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