2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ。時のブッシュ政権は直ちにテロの首謀者をウサマ・ビン=ラディン及びアルカイーダと特定し、自国が主導する有志連合諸国と反タリバン政権が支配する北部同盟と協力し、“不朽の自由作戦”と称する武力攻撃を開始する。
作戦は一応2014年に完了するが、昨年トランプ大統領はアフガン駐留軍を増強すると発表し、世界に衝撃が走った。
さて、その“不朽の自由作戦”が遂行される前、テロ発生直後のアフガンに“秘密裏”に派兵された米軍特殊部隊がいたことをご存知だろうか?それも、わずか12人で。
彼ら、米軍特殊部隊“グリーンベレー”による知られざるアフガン戦争の実態を綴った同名のノンフィッション小説(ハヤカワ・ノンフィッション文庫・2009年刊)を基に、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなどで知られるヒットメーカー、ジェリー・ブラッカイマーが製作し、コカコーラやナイキのCMで知られるデンマーク人監督、ニコライ・フルシーがメガホンを執った戦争アクションが5月公開の「ホース・ソルジャー」だ。
急峻な山道を馬で行軍する兵士たち
12人のミッションがいかに過酷だったかが、この映画を観ればよく分かる。
何しろ、部隊は兵力200人の北部同盟と協力し合い、50000人の敵が待ち受けるアフガニスタンに向けて、慣れない馬に跨がり、延々と続く急峻な山岳地帯をひたすら行軍しなければならなかったのだ。数的劣勢のみならず、文化の違いから来る不信感や、弾薬と装備不足にも苦しめられながら。
何よりも驚くのは、タリバンの要塞近辺に自ら立つことで上空の攻撃機に座標軸でその位置を知らしめ、身を以てピンポイント攻撃を有効にする兵士たちの捨て身ぶり。アメリカ軍がアフガンやイラクで実践して来た、自らは手を汚さない軍事オペレーションも、アフガン侵攻初期には人力に頼るしかなかったのである。
フルシー監督自身がフォトジャーナリストとしてコソボ紛争を取材し、それを基に短編ドキュメンタリーを制作しているだけに、地上戦の描写力には長けているのだ。
なぜ、彼らは過酷な任務を志願したのか?
そもそも、愛する家族を祖国に残し、帰還不能とも思える任務になぜ彼らは志願するのか?という根本的な疑問に対して、映画の冒頭でグリーンベレーのメンバーが応える場面がある。曰く、「俺たちがやろうとしていることはアポロ11号のアームストロング船長と同じ。未知の大地に最初の1歩を刻むことの高揚感に勝るものはない」と。
同時に、過酷なロードの過程では、北部同盟のリーダーがクリス・ヘムズワース扮する特殊部隊長のリーダー、ネルソンにジハード(聖戦)の本質について語りかける場面もある。曰く、「彼らは死んで天国で幸せになれると信じている。君たちはこの地上が豊かだから信じられないだろうが」と。
そんな刺さる台詞とワードが随所に散りばめられた映画は、地を這うようにして敵陣を目指す地上戦のリアリズムを観客の鼻先に突き付ける、久しぶりに戦争映画らしい1作。
因みに、12人の戦績はその任務が極秘だったために公にされていないが、2016年、ニューヨークのグラウンド・ゼロに“馬を駆るグリーンベレーの銅像”が建立されている。もし、ニューヨークを訪れる機会があれば、足を運んでみてはいかがだろうか。
【作品情報】
「ホース・ソルジャー」
5月4日(金・祝)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
公式ホームページ:https://gaga.ne.jp/horsesoldiers/
配給:ギャガ
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