大手3キャリアが、SMSに代わる「RCS」を導入する公算が高まってきた。複数のメディアが、RCSへの対応を検討していると報道。キャリアの枠を超えた、プラットフォームとして期待が集まっている。
RCSとは、リッチ・コミュニケーション・サービスの略称。SMSと同様、電話番号でやり取りできる一方、“リッチ”と銘打っているように、単なるテキストベースのメッセージサービスではない。
イメージしやすいのはLINEのようなメッセージサービスだ。RCSでは、ユーザー同士が画像や音声データなどを簡単にシェアできるだけでなく、企業がアカウントを持ち、ユーザーに便利なサービスを提供できる。
Mobile World Congress 2018の基調講演では、サンドイッチチェーンのサブウェイのボットにユーザーが注文をする様子などが紹介された。
3キャリアがまとめて導入を検討中
電話番号ベースのメッセンジャーアプリから、そのままサンドウィッチをオーダーできる 元々、RCSは日本独自の規格ではなく、世界各国のキャリアが足並みをそろえて導入しようとしていたサービスだ。仕様の策定は、世界各国のキャリアが加盟するGSMAが中心に行っており、ここにGoogleも協力。
かつてKDDIがAndroid黎明期にプッシュしていたJibeを買収し、このアプリをベースにRCSに対応したAndroidメッセンジャーを開発した。米国などでは、このAndroidメッセンジャー上で、サービスが提供されている。
GoogleはMWCに合わせ、RCSを拡大していくことを表明メリットは、SMSと同様、電話番号で気軽にやり取りできることにつきる。日本ではイメージしづらいかもしれないが、海外ではSMSやそれを拡張したMMSがいまだに根強く使われている。
LINEなどのメッセンジャーサービスのように、友だち関係になっていない状態でも利用できる。Androidであれば、アプリが標準の状態で対応しているため、普及にも弾みがつけやすい。
では、本当にRCSは日本でスタートするのか。
RCSの検討を進めていると語る、NTTドコモの吉澤社長NTTドコモの吉澤和弘社長は、「検討はNTTドコモとしても進めている」と明かし、導入に対して前向きな姿勢を見せる。
吉澤氏は「具体的にはまだこれから」としながらも、「メッセージのやり取りだけでなく、画像共有や情報共有など、ならではのものが提供できるのではないか」と意気込みを語った。
KDDIの田中社長も、RCSについては前向きな姿勢を示す対するKDDIの田中考司社長も、「あまり言えない。広報コメント的には検討中」とお茶をにごしつつも、「RCSは(キャリアにとって)ビッグチャレンジ」と、取り組みには期待感を示している。田中氏は「キャリアはパイプ(通信経路)を提供するのが基本で、アプリケーションといえば電話やSMS、Eメールぐらい」というが、“コミュニケーション”は、キャリアが提供する数少ないサービスの1つ。ここに力が入るのも、必然といえる。
RCSはスマホが出始めのころから検討されてきたサービスだが、にわかに注目を集めているのは、採用するキャリアが徐々に増えてきているからだ。導入に時間がかかったのは、キャリア同士の枠を超える必要があったからだという。
田中氏によると「つながるというのは、自分たち1人ではできないこと。グローバルではああだこうだ言ってきたが、そういうふうな時代になってきた。テクノロジーが先に行っているので、やろうと思えばできるが、自分のドメインの中だけでは意味がない」と、世界各国のキャリアが足並みをそろえる重要性を強調した。
ソフトバンクは「コメントできない」(広報部)と不透明ながら、NTTドコモとKDDIそれぞれの社長が導入に対して前向きな発言をしていた事実からは、サービス開始が近づいていることがうかがえる。
LINEやFacebookのMessengerなど、サードパーティにどう対抗するのかは詳細が判明するまで未知数な部分は多いが、コミュニケーションをめぐる覇権争いの観点からも、注目しておきたいサービスといえる。
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