前編、Amazonの創業者のジェフ・ベゾス氏は、弟マーク・ベゾス氏に「祖父から受け継いだ教訓」や「誇り高き人生の歩み方」、「Amazonが失敗した場合の自分」について語った。
2人の激レアな対談を実現したのは、若き起業家、活動家、芸術家を応援するサミット・シリーズ(Summit Series)社。兄ジェフ氏は、弟マーク氏に、家族との思い出や旅行を通して、楽しそうに様々な議題をカバーした。
今回は、「長期的視点の大切さ」「マルチタスク観」「冒険することの意義」そして「初心を忘れないこと」について、ジェフ・ベゾス氏は語る。
長期的視点を持つこと
※36:00~38:54より抜粋
マーク・ベゾス氏:ロードトリップのとき、キャンプファイヤーを囲って話したよね。一番盛り上がった議題は「長期的視点」だ。長期的視点は、君が重宝している考え方で、ビジネスにも取り入れていた。
大半の事業家も、Blue Origin社の創立に関わる人でさえも、理念を1世紀単位で考えていない気がする。Amazonに関しては、新しい試行は5~7年の視点で考える、と話していたよね。長期的視点について、語ってくれない?
ジェフ・ベゾス氏:長期的視点は目的達成に必要な思考法だ。短期的な視点では達成不可能なことや、思いつきもしなかったことを可能にしてくれる。
僕は、「1万年時計」の製作プロジェクトに携わっている。1年に一度秒針が進み、1世紀に一度鐘が鳴る。鳩が出てくるのは、1000年に一度。山中にある、150mほどの時計なんだ。
1万年時計は象徴だよ。最初の数百年は見向きもされないだろうけど、それから数百年経つと、注目され始める。何百年後に、”長期的視点のシンボル”として認知されてほしいな。
たとえば、「僕と一緒に5年間で世界の飢餓問題を解決してほしい」と言われたら、君は断るだろう。「不可能だ。現実的ではない」と。でも、期間を100年に延ばしたら、受けるだろう。一変して、解決可能な問題になるからね。
まず状態をつくって、飢餓の解決はそれから取り組める。
長期的視点は、なににでも応用できて、とても大事な考え方だよ。やりたいことを客観視して、適切な期間を設けなければならない。
Amazonで取り組んでいる大半のプロジェクトは、結果が出るまで5~8年待つ。しかし、ほとんどの競合他社は、2~3年でしか見積もらないんだ。
長い視点で考えているからこそ、僕たちは目標を達成できる。
期限が2~3年しかないと、できることが制限されてしまう。「7年間ある。大丈夫だ」と余裕を持てれば、その時点でチャンスははるかに広がる。
ジェフ・ベゾスのマルチタスク観
※41:27~44:01より抜粋
マーク・ベゾス氏:僕たちがよく一緒に旅行するのを知っている人々から、「ジェフはずっと携帯を見てるんでしょ? 手放すことはあるの?」と何度も聞かれる。「彼はそんなに携帯を見ていないよ。本当に!」と否定しても、信じてくれない。
アメリカ合衆国を横断したときも、仕事はしていたけど、ほとんどの時間は今みたいに会話していたよね。子供といるときだってそうだ。君ほどの責任を僕は背負っていないけど、気づいたら携帯をいじっていることがある。
1つのことに集中するにはどうすればいい? 自分の中で規律を設けているのだろう?
ジェフ・ベゾス氏:規律なんてないよ。例えば、ディナーを一緒にしている人がいるなら、僕は一緒にいる人物と会話がしたいだけ。相手が誰であろうとね。
現在に集中したいから、マルチタスクは苦手なんだ。集中力をそがれる。僕は、メールを読んでいるときは、本当の意味でメールを読むことに集中したい。
母親はいつもこんな昔話をするんだ。モンテッソーリ教育を受けていた僕は、与えられた課題をやめることができなかったんだ。だから、教師はイスごと僕を次の課題へ移すしかなかった。
意識してやっているわけではないんだ。
だから「メールをチェックしないようにしよう」、と規律を設けてない。ごく自然なことなんだ。なにかをしているときは、それに没頭したい。
マルチタスクは喜んでしたいけど、だったらタスクを連続的に処理してしまう。
正直言って、なにか重大なことが起きたら、誰かしらが直接教えてくれる。だから、5分毎にメールを見る必要はないんだ。些細な要件だろうからね。
マーク・ベゾス氏:たしかにそうだね。直接言われたときは、悪いニュースの場合が多いだろうな。
ジェフ・ベゾス氏:誰かが迫ってきて「すぐにメールを見て」と言われたら、いいことであるはずがない。大抵、家族の病気とかだろう。
マルチタスクをするかどうかは、かなり個人的なことだ。マルチタスクが得意な人もいる。
妻とレストランで食事をすると、どちらも携帯をいじっているカップルの姿が。でも、ときどきお互いの携帯を見せ合ったりもするんだ。
それに問題があるとは、僕には思えない。楽しそうなデートに見えるからね。ただ、僕にはできない、ってだけ。
一番大切な選択肢は「安心と安定の人生」か「奉仕と冒険の人生」か
※44:01~47:13より抜粋
マーク・ベゾス氏:君の人生において、“冒険”とは? なにを得た?
ジェフ・ベゾス氏:僕にとって、冒険は「自分自身を形成した選択」だ。
生まれ持った才能とは違う。だれもが才能を持っている。僕だってそうだ。才能が、誇りになることはない。与えられたものだから。
「身長が高い」や「計算が速い」、「すごく美しい容姿」や「イケメン」――様々な才能がある。
しかし、自分で決めた選択しか誇りにならない。なぜなら、自分で働きかけたことだから。
僕たち全員の一番重要な選択肢は、「安心と安定の人生」か「奉仕と冒険の人生」。どちらを歩むかだ。
そして、80歳になったとき、どちらを誇りに思えるか。明らかに「奉仕と冒険の人生」だろう。これは消防士になっても、どんなことをしていても一緒。
初心を忘れない大切さ
マーク・ベゾス氏:なるほど。
我々が“冒険”と聞いて連想するのは、新しい物事に積極的にかかわり、子供のような好奇心を持つことだ。
ジェフ・ベゾス氏:まちがいない。
マーク・ベゾス氏:私生活において、君は好奇心を大切にしているよね。旅行にも、君が携わっているビジネスについても、同じことが言える。
ジェフ・ベゾス氏:世界は複雑だから、発明家になるには、特定分野の専門知識を持たなければならない。新サービスの発明者になるにしろ、新製品の発明者になるにしろね。
ある意味、特定分野の専門家になるまで学び続けなければならないんだ。
しかし、一度専門家になってしまうと、知識にとらわれてしまう。危険だよ。
発明家というのは、真逆の能力を持ち合わせている。何万時間もの鍛錬で得た専門知識を持ちつつ、初心を忘れないことだ。
専門知識を習得しても、物事を新鮮な目でとらえる。発明家になる必須条件だよ。どちらかが欠けたらダメだよ。
意識的に初心を保たなければならない。誰だってビギナーとしての心は持っている。しかし、意識していないと失ってしまう。「エキスパートになっても、ビギナーの精神を保つ」という志が必要だ。
マーク・ベゾス氏:とても大切なことだよ。習慣にしなければならない。Amazonは大躍進を遂げたけど、初日のマインドを保っているよね。
ジェフ・ベゾス氏:そう、Amazonはまだ1日目だよ!
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