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Amazonジェフ・ベゾスが弟に語った「対応能力」と「自立精神」「誇れる人生の歩み方」(前編)

森澤

2018/02/28(最終更新日:2018/02/28)


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【書き起こし】Amazonジェフ・ベゾスが弟に語った「祖父の教訓」「誇れる人生の歩み方」(前編) 1番目の画像

 若い起業家や芸術家、活動家を応援するサミット・シリーズ(Summit Series)社は、2017年ジェフ・ベゾス氏と弟マーク・ベゾス氏の貴重なトーク講演会を開いた。

 本講演会は、マーク氏が、Amazon社の創業者ジェフ・ベゾス氏を、インタビューする形式である。以前、同講演会のジェフ・ベゾス氏の考える「ワークライフ・バランス」について書き起こした。

 本稿では、彼が弟に語った「祖父から学んだ問題対応能力と自立精神」、「誇れる人生の歩み方」、「Amazon社が失敗した世界線の自分」を書き起こす。

「問題対応能力」と「自立精神」

幼少期~青年期に、祖父から受け継いだ精神(一部要約)

※4:06~6:38より抜粋

 幼少期~青年期の毎夏、ジェフ・べゾス氏とマーク・べゾス氏は、テキサス州南部にある、祖父の牧場で過ごしたそうだ。弟のマーク氏は、風車を修理した思い出について語った。

マーク・ベゾス氏:風車の一例が教えてくれたのは、牧場生活では、常にやるべき作業があった、ということ。その体験から、「問題対応能力」と「自立精神」の大切さを学んだ。これについては、過去にも話していたよね?

ジェフ・ベゾス氏:僕たちは、かなり恵まれた環境で、幼少期を過ごした。祖父母と多くの時間をともにできたのだから。両親から吸収する教えと、祖父母から吸収する教えの性質は異なる。それだけ違う関係性なんだよ。

4歳から16歳の間、夏はずっと祖父の牧場にいたんだ。祖父は、かなり自立した人間だったよ。

自然一色の地方で暮らしていると、何かが故障しても、いちいち電話で業者を呼ばない。彼らは自分で修理方法を考えるんだ。

子供として多くの問題を解決し、真に機知性に富む祖父を見ることができた。

彼は獣医の仕事さえも、自分で担っていたよ。畜牛の傷口を縫合する針も、自分で作っちゃうのさ。針金を熱し、叩いて平らにし、尖らせ、穴をあける――その針による処置で、数匹生き残ったのは奇跡。

マーク・べゾス氏:(笑)

(会場笑)

Amazon社で、「問題対応能力」と「自立精神」が活きた局面

※11:30~14:10より抜粋

マーク・べゾス氏:祖父から、問題対応能力と自立精神の大切さを学んだよね。これらは、仕事のどういう局面で活きている?

ジェフ・ベゾス氏:夢や情熱を追求する多くの起業家が知っていることだけど、成長の本質は、問題に直面し、失敗し、立ち直って、再度チャレンジすることにあるんだ。壁に衝突したときは、いつだってそう。

そのようなときに、自らの対応力や自立精神を用いる。解決のために、規格外な案を着想するんだ。

Amazonでは、こういう例が山ほどある。失敗もたくさん味わった。我が社は、失敗をする場所として最高だよ。リカバリーが得意だし、そういった文化が根づいているからね。

一例を挙げると、何年も前に、第三者販売業「アマゾン・オークション(Amazon Auction)」を展開しようとしたんだ。店舗の選択幅が広がると確信してね。

でも、オークションには誰も現れなかった。何か購入してくれたのは、母さんだけだったかな。

マーク・べゾス氏:僕がコーヒーカップを買ったよ。

ジェフ・ベゾス氏:そうだったね。だったら、購入者はたったの2人だ。そこで、ミーティングの末、Zショップ(Z Shops)を開いた。これは、固定価格(即決)型のオークション。

再び、誰も訪れなかった。

マーク・ベゾス氏:それは利用しなかったなあ。

(会場笑)

ジェフ・ベゾス氏:どちらも約1年から1年間半かかったプロジェクトだ。僕たちは、新しいことを挑戦していた。

最終的に、Amazonの商品ページと一緒に、第三者販売店舗を載せて、それをマーケットプレイス(Marketplace)と名付けた。すぐに反響を得ることができたよ。

新しいことの挑戦や顧客理解において、対応能力は、有効だった。これは何にでも役立つよ。日常生活でさえもね。

子育て

ジェフ・ベゾス氏:子育てでも、この対応能力は活きたんだ。僕たちは、子供が4歳のころからナイフの使用を許した。電動工具は、7歳か8歳のときだったかな。

妻がすごい名言を生み出していたよ。

「対応能力のない子供を持つぐらいだったら、指が9本の子供の方がいいわ」とね。人生に対して、すばらしい観点だと思う。

(会場拍手)

マーク・ベゾス氏:幸運なことに、指を10本持つ、賢明なお子さんがいるよね。

ジェフ・ベゾス氏:うん。どうなるだろうね。

誇れる人生を歩む方法

※1::05~22:01より抜粋

マーク・ベゾス氏:Amazon社を立ち上げたのは、1994年、君が30歳のときだよね? 当時、いい職に就いていて、ニューヨークのアッパー・ウェスト・サイドで、立派な家に住んでいたのを覚えているよ。

ジェフ・ベゾス氏:結婚して、1年経ってからだった。

マーク・ベゾス氏:なんで、あんなにいい仕事をやめて「挑戦する」という決断に至ったの? 成功した今となっては、明白だけど、当時は違ったでしょ?

ジェフ・ベゾス氏:そうだね。あのときは、多くの自己分析を重ねたよ。当時就いていた職は、大好きだったしね。妻は「すばらしいアイデアね。やるといいわ」と了解してくれた。

でも、上司に「ネット書店を開こうと思っている」という旨を伝えたところ、「いいアイデアなのはわかるけど、それは充実した仕事に就いてない人がやったほうがいいに決まっている」と忠告された。ある種、それは筋が通っているように感じたんだ。

「数日考えなさい」と上司。本当に頭をひねって、どのような思考法が適切か、熟考したよ。この問題は、データを使う経営判断とは違って、「自分はどうしたいの?」という、個人的なものだからね。

人生の分岐点に直面したとき、僕にとって一番の思考法は、将来80歳になった自分を想像して、「80歳になって後悔を最小限に抑えること」について思いめぐらすことだった。

80歳になって、静かなひと時に人生を顧みて、致命的な悔いを残したくなかったんだ。

多くの場合、最大の後悔は、除外した選択肢にある。

「選ばなかった道」は我々を襲い、「もしあのとき、ああすれば」と嘆くようになってしまう。

「愛している人に告白できずじまいで、相手は結婚してしまった」とかね。

この思考法を実用したその瞬間、答えは明白だった。例え失敗したとしても、自分が超ワクワクしていることに挑戦した末、80歳になったら、後悔しない確信があった。

失敗しても、いい。80歳には、「挑戦した」という事実が、誇りになっているだろう。挑まなかったら、ずっと心残りになることも、確信していたしね。

チャレンジしないで後悔する可能性は100%。一方、チャレンジし、失敗して後悔する可能性は0%だった。答えは明白。

人生の重大な分岐点において、これは有効な思考法だから、みんなも使うといいよ。

仮にAmazonが失敗に終わっていたら?

※22:45~23:30より抜粋

マーク・ベゾス氏:たった今、Amazonが成功する確証はなかったことについて話してくれたけど......。

ジェフ・ベゾス氏:(割り込むように)どんなスタートアップ事業にも、絶対なんてないさ。

マーク・ベゾス氏:もしも失敗していたら、今、「ジェフ・ベゾス」は何をしていたと思う?

ジェフ・ベゾス氏:いい質問だね。人生には、予期せぬ紆余曲折がある。

思うに、とても幸福なソフトウェア・エンジニアになっていたんじゃないかな。

マーク・ベゾス氏:エンジニアとして、どんなことをしているか、予測がつく?

ジェフ・ベゾス氏:わからないけれど、今は、機械学習とAIに興味がある。それはAmazonでも、取り組んでいることだしね。たぶん、そういう分野に惹かれているんじゃないかな。

(後編につづく)

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