ノートPCのUSBコネクターにUSBメモリーを挿したまま鞄に出し入れしたり、スマホのUSBコネクターにケーブルを挿したままひっぱったりしている人はいないだろうか。
正直、すぐに止めた方がいい。機器の故障の原因になるし、最悪の場合、発火や発熱などの事故にもつながる可能性がある。
我々が何の気なしに行っている行為でも、実は機械には大きなダメージを与える可能性がある行為は多数ある。そうしたことを想定して開発しているメーカーとそうでないメーカーでは、故障率・不良率に大きな影響が出てくるものだ。
今回は、あまり表に見えづらいそうした話を、少し解説してみたいと思う。
「ゆがみ」が故障を引き起こす
最近は薄いノートPCが当たり前になっている。だが、「薄いノートPCの端を片手で持つ」ことにすらリスクが存在する……というと、みなさん信じられるだろうか。
もちろん、そのように持ったからといって、いきなり壊れるわけではない。だが、設計の観点でいえば、薄くすること・軽くすることで色々なリスクが生まれ、そこへの配慮が設計に影響しているのも事実なのだ。
デジタル機器にとっての密かな課題は「ゆがみ」だ。ものをもてば、そこに重力がかかる。端だけを持つと、そこを中心にわずかなゆがみが発生する。その差は数ミリにも満たない世界だ。
小さなものだが、これが積み重なるとやっかいなことになる。日々ゆがみが起き続けていると、特定の場所にヒビや割れが発生する可能性もある。デジタル機器にとっては、これが部品を止めているハンダや、基板内を縦横に通る配線の破損につながる。そうすると、回路上に電流が流れなくなり、故障の原因となる。
「デジタル機器が壊れる」というと、地面に落とすなどの大きな衝撃がすぐに思い浮かぶが、そうした「ゆがみ」などが原因となった経年劣化も十分に考えられる。
だから、ボディを軽く・薄く作るところは、こうした「ゆがみ」に関するシミュレーションを徹底的に行う。基板をケースに止めるための穴の位置を変えるだけで、ゆがみに伴う故障率が劇的に変化することもあるそうだ。目には見えないが、メーカーはそんなところにも気をつかっている。
一方で、あえて軽くせず、ボディに堅牢な金属素材を使い「ゆがみにくくする」というアプローチもある。どちらを採るかは、メーカーがどこを大事だと思うか、という判断次第である。製品の重さ・軽さも、そんな目線で見てみると、また違った感想が出てくるのではないだろうか。
コネクターに「無理な力」がかからないよう注意を
「VAIO S11」の側面。壊れる、という意味で、やはり同様に各社が苦労しているのは「コネクター周り」である。スマホのように数が少ないものはいいのだが、他の機器は多数のコネクターがつきものだ。ここに色々なものが刺さる。そして、なにかが刺さっているということは、それだけ力がかかる、ということだ。
デジタル機器に「ゆがみ」は敵だ。だが、コネクターにケーブルなどが刺さっていて、そこに思わぬ力が掛かると、コネクターの周囲を中心に大きなゆがみが発生し、故障の原因になりやすい。
特にパソコンでは、電源やネットワークケーブルに足などをひっかけ、引っ張った時にコネクターの周囲に強い力が掛かって故障する……という例が多い、とメーカーから聞いている。冒頭で「USBになにかがささったまま鞄に入れたりしてはいけない」「USBにケーブルが刺さったまま引っ張ったりしてはいけない」と書いたのは、これが理由だ。
堅牢性を重視したパソコンの中には、コネクター周りのトラブルに配慮したものもある。例えばVAIOは、USBメモリーを挿したまま、そこに力がかかることがあっても壊れにくいよう、検査が行われている(下写真)。
出典:vaio.comもちろん、だからといって、グリグリやっても壊れない、と保証されているわけではない。不意のトラブルによる故障の可能性を限りなく低くするためのものなので、勘違いしないように。
こうした配慮は、持ち歩く機器の場合、どこも多少なりとは行っている。だが、どこまで徹底しているかはメーカーによって違うので、あまり過信しない方がいい。
スマートフォンの場合、microUSBコネクターなどに挿して「ストラップ」にする製品もある。個人的には、ああした製品の利用はまったくお勧めしない。便利かもしれないが、メーカーが推奨したやり方ではなく、故障の遠因となる可能性が否定できない。
特にスマートフォンの場合、microUSBやUSB Type-C、Lightningなどのコネクターは「電源供給」にも使う。電源供給に使うコネクターに破損があると、充電時の事故につながる可能性もある。長期的なリスクを考えると、やはりそうした使い方はお勧めできない。
テレビやデスクトップPC、ゲーム機のように、持ち合くことが前提でない機器のコネクターは、そこまで堅牢に作られていない可能性もあるので、さらに要注意だ。
コネクターに不自然な力がかかるような場所に置いたり、重いものを接続して力がかかり続けたりすると、想定外の故障につながる可能性がある。ケーブルが挿しっぱなしであることはさほど問題ではないが、「無理な方向に力がかかっていないこと」だけは確認しておいた方がいい。
高性能化したデジタル機器を長く使うためにも、コネクター周りには十分な注意を払うようにしてほしい。
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