去年、観た人の口コミでロングランヒットになり、「レ・ミゼラブル」(2012年)以来、久しぶりに日本の映画ファンにミュージカルの楽しさを教えてくれた「ラ・ラ・ランド」。
主題歌の“Another Day of Sun”がヒットチャートの1位に躍り出るなど、ハリウッド映画が、それも大作ではない小品が、一種の社会現象になったのも実に珍しい出来事だった。
「ラ・ラ・ランド」の作詞・作曲コンビが19世紀とヒップホップを融合?
その「ラ・ラ・ラ」の作詩・作曲コンビ、ベンジ・パセック&ジャスティン・ポールが、19世紀アメリカのショービジネス界を描く物語に、現代的なロックとポップとヒップホップを投入するという力業を披露しているのが、話題のミュージカル映画「グレイテスト・ショーマン」だ。
現代のL.A.とジャズを組み合わせた「ラ・ラ・ラ」とは、時代と音楽の関係性に於いて正反対の手法である。
映画の主人公P.T.バーナムは実在の人物だが、何だか怪しげな男だ。19世紀半ばのアメリカで、幼馴染みの妻、チャリティを幸せにするため、色々と商売に手を出しては失敗を繰り返した挙げ句、バーナムが次に思いついたのは、人と違うルックスを持つ人間ばかりを集めた見世物ショーの興行だった。
体が小さい人、背が高い人、髭が生えている女性などなど、いわゆるFreaksをステージに上げ、それにサーカスとミュージカルをプラスしたバーナムのショーは、サーカス形式の基礎だとも言われ、後にリングリング兄弟に売却され、“リングリング・サーカス”として世界中に広まることになる。
疑問を振り払うのはやっぱり音楽!
しかし、見世物ショーは一部の人々や批評家たちから批判を浴びる。見た目の珍しさを売りにするショーが、果たして、純粋なエンターテインメイトと呼べるのか? と。
映画を観ていても、同じ疑問を感じなくはない。しかし、それを文字通り力業で跳ね返すのが、ロックでヒップホップなダンスナンバーの数々だ。
サーカス独特の360度の円形ステージに華々しく登場したMC役のバーナムを始め、個性的なパフォーマーたちが勢揃いして演じるアンサンブル・ダンスは、メリハリの利いたビートとも相まって、思わず上半身が前のめりになってしまうほど。
特に、ロープに体を絡めたパフォーマーたちが、尖った音楽に乗って、天井に向かって回転しながら一気に上昇していく姿を、カメラが下から舐めるシーンは、アングル的にもまさに「グレイテスト」。劇場の観客たちをサーカス小屋の一等席に座っているような錯覚に陥らせる、劇中でも白眉のショットだ。
そして、ヒュー・ジャックマンだからこそ!
少なくても映画では、社会から隔離され、差別される人々に、各々の個性を表現できる場を与えた救済者として、また、自身も夢を追い続けた“夢追い人”として描かれるバーナム。そんなポジティブなキャラ設定に説得力があるのは、演じるのがハリウッドNo.1の好感度を誇るヒュー・ジャックマンだからこそ。
2009年にプロジェクトが立ち上がって以来、製作元の20世紀フォックスが商売としてはリスキーなオリジナル・ミュージカルの製作に難色を示す中、バーナム関連の書物を読み漁って役作りを続けたというジャックマン。
そんな弛まぬ努力が、ミュージカルへの愛が、作品に結実した最新作を引っさげて、再び大好きな日本の土を踏んだ彼は、記者会見でも熱いコメントを炸裂させた。
「ミュージカル映画は音楽が重要です。音楽に恋をするのです。ベンジ・パセック&ジャスティン・ポールは『ラ・ラ・ランド』より前から本作に関わり、その後アカデミー賞やトニー賞を受賞した才能溢れるコンビです。彼らの楽曲は、メロディが美しく、歌詞は心に深く響きます」と、音楽への敬意を表したジャックマン。
主題歌は劣等感から人々を解放するアンセム!
また、今回の来日には劇中で髭が生えた女性、レティ・ルッツを演じるキアラ・セトルも同行した。お気に入りの楽曲を聞かれた際、「やはり主題歌の“This is Me”ですね。撮影現場でキアラがこれを歌う姿をモニターで見た時は、思わず涙が零れましたよ」と応答。
「たとえどう見られようとも、これが私!」と言い切る珠玉のメインテーマは、すべての人々のコンプレックスを自信に変える最高のアンセム。今年のアカデミー主題歌賞の絶対的本命に挙げられているのも当然だ。
【作品情報】
「グレイテスト・ショーマン」
2月16日(金)全国ロードショー
公式ホームページ:https://www.foxmovies-jp.com/greatest-showman/
配給:20世紀フォックス
©Twentieth Century Fox Film Corporation
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