2017年がスマートスピーカーの年になったことは、みなさんもご納得いただけることと思う。では、2018年はなんの年になるのだろうか?
スマートスピーカーは急速に一般化し、もはや珍しくない。スマートスピーカーのアプローチは「ディスプレイ付き」のデバイスへと広がろうとしている。
日本でも夏頃には本格化するであろう「ディスプレイ付きスマートスピーカー」、通称「スマートディスプレイ」とは、どんな存在なのだろうか。
AmazonとGoogleがディスプレイ付きスマートスピーカーで火花
ディスプレイ付きスマートスピーカーとは、読んで字のごとく、スマートスピーカーにディスプレイが内蔵され、音声だけでなく文字や画像でも情報が表示される機器のことだ。
この種のアプローチを最初に行ったのは、やはりAmazonである。日本ではまだ発売されていないが、アメリカなどでは昨年秋より「Amazon Echo Show」という製品が登場している。どんな認識が行われたのか、どんな情報なのかが目で見てわかること、そして、ビデオチャットなどができることが特徴だ。
これに影響されたのか、Googleは先日米・ラスベガスで開催されたテクノロジーイベント「CES」にて、「スマートディスプレイ」という製品群を発表した。
実のところ、これはまさに「ディスプレイ付きスマートスピーカー」、Echo Show対抗製品そのものだが、Googleらしい強みも発揮されている。
ひとつは、YouTubeやGoogle Mapとの連携だ。スマートディスプレイは動画再生を強く意識しており、検索しての動画再生ができる。Echo Showも可能ではあるのだが、一時AmazonとGoogleはこの件で揉め、Echo ShowでYouTubeの動画再生が不可能になったことがあった。
今は機能が復帰しているが、ウェブサイトをそのまま見るようなイメージになってしまい、操作性が低下した。だが、Googleのスマートディスプレイは、音声での利用に最適化されたYouTubeが最初から使える。この辺は少々アンフェアな臭いもしてくるが、スマートディスプレイの強みであることに変わりはない。
もうひとつは、最初から同様の機能を持ったデバイスが、多数のメーカーから登場する、ということだ。Google自身のブランドによるスマートディスプレイはまだ発表されておらず、まずはレノボ・JBLが今夏に発売する、と発表している。その後年内に、ソニーとLGエレクトロニクスが発売する。CES会場にはそれらの製品のいくつかが展示された。
CESのGoogleブースに展示されたスマートディスプレイ。左上がJBL、左下がLG、右の列の2つがレノボの製品だ。レノボのスマートディスプレイは8インチと10インチの2種類があり、縦横どちらにも配置できるのが特徴。
価格は10インチが249.99ドル(約2万8000円)、8インチが199.99ドル(約2万3000円)となっており、スマートスピーカーからさほど高い値付けになっているわけではない。
スマートディスプレイの正体は「タブレット」か
製品を見てみると、なんとなく「ディスプレイ付きスマートスピーカー」の正体にピンと来た人もいるのではないだろうか。
そう、これ、テクノロジー的にはタブレットなのだ。タブレットの使用イメージとして、リビングやキッチンで立てかけて使う……というものがあった。確かに、そういう使い方は便利だ。
だが、普段使っているタブレットをそのために持ってくるのは面倒だし、キッチン用にタブレットを買う人は少数派だ。見るだけ・検索するだけのために、タブレットを据え置き型に最適化したのが「ディスプレイ付きスマートスピーカー」である。
実際、Googleのスマートディスプレイは、OSにAndroidを使っている。ただし、あくまでタブレットではないので、画面をタッチする「タブレット用アプリ」を使えるようには作られていない。「見るだけ」のシーンに特化しているのだ。
これは、スマートスピーカーが「ディスプレイのないスマートフォン」のような存在であったことを考えると、特に不思議な話ではない。
スマートフォンやタブレットは便利だが、あそこまでアクティブにネットを使いたいわけではないシーンも多い。「ネットの力は借りたいが、ちょっと情報を知りたいだけ、ちょっと機器を連携させたいだけ」という時にこそ、スマートスピーカーは威力を発揮する。それと同じように、スマートディスプレイも使われることになるだろう。
あらゆる家電は「スマートスピーカー化」する?
では、スマートディスプレイは、スマートスピーカーを凌駕し、置き換える存在になるのだろうか? 価格が十分に安くなれば、そうなる可能性はある。
しかし、筆者は、そこに本質的な変化はない、と思っている。
そもそも、わざわざ専用機器を買うこと自体が短期的なトレンドではないか、と思っているのだ。家電の中に基本機能として音声アシスタントが組み込まれてしまえば、専用機器の出番は減っていくからだ。
その傾向が、今年はまず「テレビ」から現れる。ソニーは自社製品のほとんどにGoogleアシスタントを搭載するし、LGエレクトロニクスも同社のテレビにGoogleアシスタントを搭載する。サムスンは自社のBixbyを使う。
テレビやテレビのリモコンに向かって話しかけると、それらがそのままスマートディスプレイと同じように働く。テレビ自身の機能も、音声でコントロールできるようになる。「1時間後にスリープタイマーを」とか「今見ている番組を毎週録画して」といった命令が使えるようになるのだ。
LGエレクトロニクスのGoogleアシスタント対応テレビ。音声でテレビの機能がすべてコントロール可能。今後、テレビに組み込まれたのと同じように、様々な機器に音声アシスタントが組み込まれていくだろう。オーディオ機器などはもちろんだが、洗面台やトイレ、玄関のスマートロックなどにも組み込まれる可能性は高い。
そういう未来を分かっているからこそ、Googleは今年のCESで、スマートディスプレイそのものでなく「音声アシスタント自身」をアピールした。ここからは、いかに便利な機能を、いかにユニークな機器に搭載して需要を掘り起こすか、という戦いが本格化する。
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