「不安」、これは誰にでも存在し、厄介な気持ちである。これによって実力を最大に発揮できないだけではなく、弱気にもなってしまう。
ある女性ロケット科学者は、不安に立ち向かった。彼女は様々な困難に見舞われて、不安を溺れそうになったことはあっても、その不安に打ち勝ったのだ。
彼女のファンからは「現代のアインシュタイン」と謳われ、彼女は現在OL Consulting社のCEOを務めている。
そんな輝かしい経歴を持つ女性の名はオリンピア・ルポアン。様々な人生の局面において、不安と戦ってきた彼女は、TEDで「不安を乗り越える方法」を紹介した。
『不安を乗り越えるために脳を再プログラムすること』
自己紹介(要約)
ルポアン氏は入場するやいなや、ロケット打ち上げのカウントダウンを実演する。彼女はロケット科学者で、これまでに28機のスペースシャトルが宇宙へ到達するサポートをしてきた。
そんな彼女を観客は、拍手で迎える。
人生の特定の目的を達成するために必要なこと
ルポアン氏:私はここで、運用管制室からロケットを打ち上げたときのすばらしさについて共有してもいいのです。エンジンの検査をするために数百万ドルの契約を締結した時の気持ちをシェアすることだってできます。しかし、そうはしません。
著者になり、テレビの司会者になるすばらしさを伝えることもできます。でも、しません。
その代わりに、私は人がチャンレンジする時に我々を襲う、不安について、つまり私、そしてあなた方のことについてお話をしましょう。
みなさんの人生の目標はなんでしょうか? 大金持ちの事業主になること? 家族初の大学卒業者になること? または家族を持つこと?
私は子供の頃からずっと、ロケット科学者に憧れていました。しかし、私の道には障害や困難が多く、夢を達成できるかどうか疑問を感じたことが多くありました。
真実はこうです。「不安に打ち勝つために精神を再プログラムする方法を持たないと、人生の特定の目標を達成することはできない」
そんなみなさんにいい知らせがあります。私は不安を克服し、脳を再プログラムできる3つのステップを個人的に発見しました。
本日はそれをみなさんと共有しますね。
「不安を特定し拒むこと」
ルポアン氏:1つ目の決断はこれです。不安を特定し、拒むこと。
さて、これらすべての決心を伝えるのに、私にとって一番容易なのは、過去の体験談を話すことです。そうすれば、3つの決心の使い方がより深く理解できるでしょう。
ロケットとの出会い
忘れもしません。あれは私が6歳のころ、社会見学でジェット推進研究所に訪れ、感銘を受けました。
大きなエンジンやジェット機を見たり、運用管理室に行ったことを今でも覚えています。すばらしかったです。大きなスクリーンや赤いイスを見ました。そして、ロケットを発射する男性たちの写真を見たのです。
私はこう思いました、「彼らのようになりたい」と。
お気づきかもしれませんが、私はスティレットヒールを履き、ワンピースを着ています。間違いなく私は女性。しかしそれが原因で止めることはありませんでした。
彼らのようになりたかったのですから。
(会場拍手)
しかし、様々な障害が私にふりかかります。
若い彼女を襲った受難(一部要約)
小学5年生のころ、彼女は同級生との喧嘩で目の下を怪我する。それは5針縫うまでの重傷に至った。さらに、彼女は貧困地域に住んでいて、麻薬や銃弾という危険を意識しながら生活していた。
ルポアン氏:ロサンゼルスのダウンタウン中心地で、貧困に見舞われ、顔に傷を負った私は、それでもロケット科学者になりたかったのです。
不安を拒んだ体験談
別の学校に通うことになり、代数学と幾何学で私は落第しました。お次に芸術学校では、化学の成績を落とし微積分学ではD(合格点からギリギリ)を収めました。
そこで幸運が訪れました。APクラスの微積分学のテストに手助けが必要な人がいるなら無料で教える、という男性教員がいたのです。この機会に飛びついた私は、この教員と1時間バスで隣に座るためだけに、片道2時間のバスを乗っていました。
教科書を見ていて、「わかるわ! 今は理解できないかもしれないけど、次第にわかるようになる。落第しない!」と感じたのをおぼえています。これが私が初めて不安を特定し、拒否した瞬間です。
APクラスの微積分学を合格していたら美談になりますが、それはもう見事に落第しました。
(会場笑)
(中略)
「別の考えをもって、脳を再プログラムすること」
ルポアン氏:2つ目の決断はこれです。別の思考で脳を再プログラムすること。
ウイルスに感染した時、コンピューターを正常に作動させるために機器からウイルスを取り除き、再起動しなければいけない経験、みなさんにもあるでしょう?
私たちの脳でも一緒で、「不安」というウイルスを取り除かなければならないのです。
これはロケット科学者として働き始めた最初の数ヶ月で学びました。
ロケット科学者としての働きだし
告白しましょう。初めてロケット科学者として働きだした時、私は完全に不安に打ちのめされていました。
200名がいる部屋に入室し、見渡すと私が唯一の女性だったことを覚えています。そして再び周囲を見渡すと、全員が少なくとも私よりも20歳上でした。
SSME、ITAR、RP-1、ISPなど、聞きなれない言葉が聞こえ、冷や汗がかきました。これらの単語について、なにも知らなかったのです。
そのようにしてまた不安がつのり、自分が重大な功績を生み出せるか、自信を失ってしまいました。
数週間後、第2のひらめきが私に降りてきます。部屋に入ったときに気がついたのです。
「私は教育も受けたし、することすべてに対して努力をしている。今現在は重大な変化を生み出すことはできなくても、いつかできるようになるわ」と。
「大きな変化を生み出すんだ」と私は文字通り自分に言い聞かせました。私は先輩を見つけ、SSMEの意味――スペースシャトルメインエンジン――を聞きました。実物をみると、巨大でした。
全ダクト、接合部、導線、チューブ、真空管の位置を把握して、新たなエンジンを開発し、通用管制室に座ることに成功しました。この成果が私をその年の最年少のエンジニアにしてくれました。
ゆえに別の思考で脳を再プログラムしなければなりません。
「不安と正反対の行動をすることによって脳を再構築」
ルポアン氏:最後の決断はこれです。脳を再構築すること。行動によって脳細胞を作り直さなければなりません。
みなさんもこういった経験をしたことはないでしょうか。ダイエットをしなければならないのに、「よし。身体を絞るぞ」と自分に言い聞かせるだけで、気づいたらソファに座っている自分が。
身体を絞りたいなら、ジムへ通わなければなりません。
階段を上る習慣も必要です。自転車に乗る必要もあります。なににせよ、体重を減らすためには、筋肉を動かさなければなりませんよ。
脳もまったく一緒なんです。脳を活発にする方法は、自分自身の不安と対極の行動をすること。
このような1つ1つの経験において、私はあることを学びました。自分も他の人々も、私が勝手に命名した、「数学恐怖症」に苦しんでいました。
(会場笑)
「数学恐怖症」とは、問題解決において前頭葉を遮断し、人を完全に無力化する、我々の脳の爬虫類脳部分へ生じる激しい不安のこと。不安を持ってしまうと、人は問題解決能力をすっかり失ってしまいます。
しかし、自分自身の不安と正反対の行動をすると、すばらしいことが起きます。神経伝達物質がつくられ、不安が消え、前頭葉を使う回路が確保されるのです。我々の前頭葉が解放されると、とてもすごいことができるようになるんです。
このことは、ロケット科学から身を引いた後に気づきました。
起業体験から学んだこと(一部省略)
退職後、私は銀行で一流の地位を与えられました。しかしそこで気がついたのは、私が銀行よりもはるかに科学と教育への愛していることです。
そして私は銀行を退職し、非常勤の数学教授になることにしました。
しかしそうした私を待ちうけていたのは、米国経済がボロボロになり、雇用されない時代でした。職を失い、生活に困っていました。そして私は再び不安でなにもできなくなるところでした。
しかし今回は多くの経験を経たあとだったので、違うことが起きます。
「この先どうしよう?」と考えていたら、ひらめきが私に降りてきました。「私には才能がある。誰も雇用をしないのだったら、自分を雇用すればいいじゃない」と。正にその通りのことをしました。
(会場笑)
私は自分自身を雇用(つまり起業)し、自分の教育エンターテインメント会社を立ち上げたのです。
(ここでルポアン氏は起業するために学んだ知識を共有)
私は起業や著書を書くこと、雇用や経営についてこれっぽちも知りませんでした。
しかし再び初心者になることを学ぶ過程において、私がしていたのは頭に存在する恐怖を消し、神経伝達物質を脳に発生させ前頭葉を開放し、それによって独創的に、また機会を切り開くようになりました。
さいごに
ルポアン氏:本日忘れてほしくないことは、「不安を特定し、拒否する」「別の思考で脳を再プログラムする」「不安と正反対の行動をする」です。
これらによって不安を乗り越えるために脳を再プログラムできることです。
これら3つをすれば、やると決めたことはなんだってできますよ、実行さえできればロケット科学者になることだってね!
(会場拍手)
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