ベストセラー『スティーブ・ジョブズ』は、故スティーブ・ジョブズ氏との2年間におよぶ40以上もの取材、加えて100人以上もの友人、家族、社員、同僚、競争相手との取材をもとにした自伝的作品である。
この作品はジャーナリスト、ウォルター・アイザックソン氏がジョブズ氏本人による要請で執筆。ジョブズ氏は表紙以外への口出しは一切せず、出版前に原稿に目を通す権利さえも放棄したと言われている。
そんな「理想の上司」など様々な肩書を持つ偉人、ジョブズ氏のリーダーシップについて、新たなビジネスアイデアを世界におくるWOBI社のインタビュー動画にて、アイザックソン氏は解説した。
以下がその書き起こしである。
「細部の美しさまでこだわる」
アイザックソン氏:スティーブ・ジョブズから学ぶ第一のリーダーシップ論は、製品の美しさにこだわること。彼は美しさが重要、と心から信じていました。
外見上の美しさのみならず、スティーブは見えざる内部の美しさについてもこだわりを持っていました。初期のMacintoshの製作をしているあるとき、彼は「PCケースもスクリーンも美しい。でも、サーキットボードが美しくないんだ」と言い放ちます。
部下は「でも、PCケースの中は誰の目にも触れないでしょう」と答えました。しかし、彼はMacintoshのサーキットボードを美しく仕上げるように命じたのです。
これが私的に、スティーブ・ジョブズから得る最初のレッスンです。
「徹底的にシンプルにする」
アイザックソン氏:スティーブ・ジョブズから学べる次の教訓は、「シンプルにする」こと。現代のイノベーターが抱える問題点は、物事を必要以上に複雑にしてしまうことです。
スティーブ・ジョブズが初期iPodを手掛けていた当時、彼は「3クリックでどんな音楽でも聴けるくらい、シンプルにしてほしい」と要求しました。部下は「しかし、アルバムを表示する画面が必要ですし……」と言います。
すると彼は「いいや、そんなのいらない。3クリックで曲までいきつければいいんだ」と。
サンプルが完成し、完成品を見せると彼はとてもシンプルで美しい、と納得しました。しかし、一点だけ「これはなんだ? ボタンが上にあるぞ」と彼が聞きます。「ステイーブさん、これはオンオフボタンです」と部下は答えました。
「このボタンはなにをするんだ?」と彼。
部下は「勘弁してくださいよ。これは機器の電源をオンオフするボタンですよ」と言います。「なぜ必要なんだ? 従来のオンオフボタンなど必要ないよ。聴くのをやめたらiPod自体が判断して電源を切ってくれる。次に聴きたいときに電源が入る」と彼は提言しました。
物事の仕組みを理解する、という能力によって彼は物事をシンプルに保つことに成功しました。
「ハングリーであれ。愚かであれ」
アイザックソン氏:スティーブ・ジョブズは『全地球カタログ』を愛していました。それは70年代に発行されたヒッピー色のある、スチュアート・ブランド氏の雑誌、カタログです。
最終号の裏表紙にはすばらしい道(田舎でヒッチハイクしているときに見つける類の道)が一面にあり、そこには「Stay hungry. Stay foolish.(ハングリーであれ。愚かであれ)」という一言のみが記載されていました。
スティーブはそれを母校で行われた卒業式の式辞で贈ったのです。
この言葉は、納得できる成果を得て、流れに乗っている気分になったとき――例えば「このiPodというのはすばらしいな」と自賛するとき――それを次の機会に破壊したり、クレイジーなことをしなければならないことを思い出させました。
例えば「自分が持っている楽曲(音楽)すべてを携帯にいれてみては?」と発案してみたり。
流れのある現状に満足し、縛られてしまうと、取り巻く人々に打ちのめされたり破壊されてしまう、と彼は感じていたのでしょうね。
それで彼は常に「ハングリーで愚か」でいなければならなかったのです。
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