以前紹介したペンシルバニア大学ウォートン校の経営学、心理学教授のアダム・グラント氏はベストセラー著者でもある。
そのベストセラー本とは『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』、『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」が出来る時代』、『OPTION B 逆境、レジリエンス、そして喜び』の3作。
今回のテーマ「与える文化」はグラント氏によると人には「奪う者」「バランスを保つ者」「与える者」の3タイプがあるようだ。そして、栄えるのは「与える文化」を持つ組織。
彼は「与える文化の重要性」「与える文化のつくり方」について語った。このインタビュー映像は、新たなビジネスアイデアを提供するWOBI社によるもの。
相互作用の3つの種類
グラント氏:組織文化について研究したとき、人々の相互作用について3つのスタイルを発見したよ。
まず1つ目が、ティキング(奪う)文化。これはみんなが自分にとってベストなことをし、他人から可能な限り得て、必要な場合以外にお返しを避けること。
次に公平に相互援助し、お返しし合うマッチング文化もある。これは「相応の見返りがあれば、助ける」ということ。
最後に、ギヴィング(与える)文化。これは人々が助け合うのを好み、惜しみなく意見交換や助言をし、常にチームへ貢献する方法を模索していること。
ティキング文化の問題性
ティキング文化は組織において大問題だ。テイカー(奪う者)が組織にいると、彼らは基本的に自分が周りを出し抜くことしか考えていないからね。
彼らは自身にとってベストなことをし、それが必ずしもチームや組織にとってベストではない。
多くの人が「すごく有能なテイカーなら、大丈夫だ」と考えるが、実はそうではないんだ。なぜなら「組織のためになる物事」から彼らの忠誠がそれた瞬間が、彼らをもう信じてはならない瞬間だからね。
与える文化の効果
マッチング文化では、公平さが重宝される。やりとりには均衡があり、学びも多ければ教えも多い。断然に効果的な協力が起きるんだ。
よいギヴィング(与える)文化においては、親切が普通になり、見返りを求めない助け合いが進んで行われるようになる。これによってイノベーションやクリエイティビティーの発生が期待できる。
横の連携が豊かに行われるからね。加えて、組織にとって一番のことをして、組織理念のために尽くす文化が促進されるよ。
僕が一緒に仕事をしてきたリーダーたちはみな、ティキング文化の有害性を認識していた。テイカーやマッチャーよりもギヴァー(与える者)のほうがはるかに組織に貢献する、という35年分のデータも存在する。
与えることを中心に文化を築くことができれば、一部よりも全体が重要である組織をつくることができる。
与える文化の形成方法
グラント氏:もしテイカーが蔓延している組織にいたら、僕だったら退職するだろうね。冗談だよ(笑)。
解決は挑戦的であることが多い。
まずしなければいけないのが、雇用過程でテイカーを除外すること。ギヴァーやマッチャーが組織へプラスになるよりも、テイカーは組織にマイナスのダメージをもたらす。
そのためギヴァーを入れるよりも、テイカーを除去するほうが大事なんだ。テイカーを見抜く方法はたくさんある。
第2に大切なのは、報奨制度を変えること。たくさんの企業が犯している間違いは、「助け合ってほしい」や「親切で協力的でいてほしい」と言っているくせに、個人の業績でしか評価していないこと。
そうしたら、ギヴァーを見つけるのがとても難しくなる。個人業績で評価するのではなく、他人への貢献度を評価したほうがいい!
自分だけではなく他人が成功するのに貢献した者に報奨、報酬や昇進を与えるにつれ、「ここでは成功するためにテイカーにならなくてもいいんだ」と周囲は気づきはじめる。
これはギヴァーになるためのインセンティヴをつくるというよりは、ギヴァーになるための阻害要因をそぎ落とすことにあると思う。
3つ目に、助けを求められるような環境をつくることが大切だ。データによると、組織での助け合いの75%から90%は、お願いからはじまる。
だから自分から「今月はなんだか退屈だな。それ、君の人生を豊かにしてみようか」なんて言う人はそんなにいない。
「与える行為」のほとんどは求められたときに行われるというのに、多くの人は求めようとしないんだ。弱いと思われたくなかったり、恥をかきたくなかったりするからだ。助けを求める人物がギヴァーだったら、重荷になりたくないと感じてしまう。
しかし、助けを求める人がいなかったら、ストレスを抱えているギヴァーが組織に多いことになる。誰を、どうやって、を知りさえすれば喜んで人を助けたい、というギヴァーがね。
援助依頼をモデル可し、リクエストをしやすい環境をつくれば、より多くのギヴァーが歩み出る様を目の当たりにすることになるだろう。
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