最後によい会話ができた、という手ごたえがあったのはいつだろう。
会話をする際、スマホに注意を向けているような状況は珍しくなく、我々は本当の意味での会話をすることを忘れてしまっていたようだ。Twitterなどの、一方的なコミュニケーションが大流行したのが一因かもしれない。
いつの間にか、我々はその場限りの会話をするようになった。しかし、そのような会話に価値はあるのだろうか。
様々なラジオ番組で司会者を務めた経験のあるセレステ・ヘッドリー氏は、「良質な会話をする10の方法」をTEDで紹介した。
「よい会話をするための10の方法」
※0:48~11:44より抜粋
ヘッドリー氏:どんな会話でも議論に発展する可能性を秘めていて、政治家同士が話し合えず、どんなに些細なことでさえも賛成意見や反対意見を熱烈に掲げる誰かが存在する――そんな現代は、普通ではありません。
研究所がアメリカの成人1万人たちを対象に調査を行った結果、我々は未だかつてないほど二極化し、対立していることがわかりました。譲歩する確率は極めて低く、これはお互い「話を聞いていないこと」を示唆しています。
居住地、結婚相手、友人を我々は先入観を基に判別します。繰り返しになりますが、これはお互い「話を聞いていないこと」を意味します。
会話に必要なのは「聞く」と「話す」の両立であるのに、我々はいつの間にかそのバランスを失ってしまいました。
コミュニケーションの劣化の原因
原因の一部分は技術の進歩にあります。あなた方の手元やすぐそばにある「スマホ」。研究所によると、約3分の1のアメリカ人ティーンエイジャーたちは1日に100通以上のメールを送信します。
その中のほとんどが友人と対面するよりも、メールする傾向にあります。アトランティック誌にすばらしい記事がありました。高校教師ポール・バーンウェル氏が書いた記事です。
彼はコミュニケーションに関する課題を生徒に与えました。メモなしで特定の話題について話す方法を彼は教えたかったのです。彼はそのことを以下のように書きました。
「次第にコミュニケーションスキルは、我々が教え損ねている唯一にして最大の能力であることに気が付いた。子供たちは毎日何時間も画面を通して触れている。それなのに、対人のコミュニケーションスキルを磨く機会というのはごく稀。おかしな質問かもしれないが、「21世紀において、一貫性があり自信に満ちた会話を持続させるほど、大事なスキルがあるだろうか?」と我々は問わなければならない」
さて、私は人との会話を生業にしています。ノーベル賞受賞者やトラック運転手、億万長者、幼稚園の先生、国家元首、配管工など、これまでにたくさん話しました。
好感を持てる人間とも、持てない人間とも会話をします。個人的にまったく相容れない人とも話します。
それでもなお、私は彼らとすばらしい会話ができます。これから「話し方」と「聞く方法」をご紹介いたしますね。
本当の会話
ヘッドリー氏:会話について、多くの人は次のようなアドバイスを耳にしたことがあるでしょう――「相手の目を見て」「前もっておもしろいトピックを考えておく」「話を聞いていることを示すために相手を見て、笑い、頷く」や「聞いたことを要約する」。
全部忘れてください。でたらめですから。
本当に話を聞いているのなら、注意を示す方法を学ぶ必要はありません。
(会場笑・拍手)
私はプロの取材者として使うまったく同じスキルを、日常生活で使っています。ですから、「取材する方法」を伝授し、これがより優れた会話をするのに役立つことでしょう。
時間を無駄にしたり、退屈になったり、相手の気分を害したり――こうならない会話方法を学びましょう。
我々は過去にすばらしい会話をしたことがあります。誰もがその感触を知っているのです。それは熱中し、刺激され、真の繋がりができたと実感したり、完全に理解してもらえたと感じられるような会話。
ほとんどの会話はこうでなくてはいけません。
10つのルール
ヘッドリー氏:10の基本的なルールがあります。全部説明しますが、正直、1つでも習得すればより楽しい会話を楽しむことができるでしょう。
ルールその1
1つ目「マルチタスクをしない」。これは単にスマホやタブレットや手に持っているものはなんでも電源を切れ、というだけではありません。身も心も、その場に“在席”しましょう。その瞬間にいることです。
上司との口論やその日の夕飯のメニューのことは考えないでください。その会話をしたくないのでしたら、その場から離れましょう。中途半端に出たり入ったりがないように。
ルールその2
2つ目、「一方的に話さない」。相手に返答や議論、反論や成長の余地を与えないで主張したいのであれば、ブログでも書きましょう。
(会場笑)
私が自分の番組に評論家を招かないのにはそれなりの理由があります。“まったくおもしろくないから”です。
保守派なら、オバマ、フードスタンプ、中絶を嫌います。リベラル派なら、大きな銀行や石油会社、ディック・チェイニー(元米副大統領)を嫌う。とってもありきたりです。
そんな風になってはいけません。どんな会話も、「何かを学ぼう」という気持ちで臨みましょう。
著名なセラピスト、M・スコット・ペック氏曰く「真に聴くには、自分を差し置かなければならない」です。時には個人的な意見を脇に置くことが大事です。更に彼は「承認を感じることによって、話者には自信が備わり、聞き手に心の深部まで許すようになる」と述べました。
繰り返しになりますが、「何かを学ぼう」という心構えを持ちましょう。
ビル・ナイ氏はこう言いました。「誰に会おうとも、その人はあなたが知らないことを知っている」と。私はこう言い換えます。「誰もが何らかの専門家なのです」
ルールその3
3つ目、「自由回答な質問をする」。ここではジャーナリストの例に習って、“5W1H”で始まる質問をしましょう。複雑な質問をすれば、シンプルな答えが返ってきます。
「怖かった?」と聞けば、その文で一番印象的な言葉「怖い」に反応して、回答は「うん、怖かった」もしくは「いや、怖くなかった」のいずれか。「腹が立った?」なら「うん、とっても」です。
彼ら自身に説明させてあげましょう。話の内容は、彼らが知っているのですから。
「どうだった?(What was it like?)」や「どう感じた?(How did that feel?)みたいな質問をしてみてください。そうすれば話者は少し止まって考え、断然に興味深い答えを受けることができます。
ルールその4
4つ目、「流れに身を任せる」。これは頭に浮かんだ考えを手放すことを意味します。ゲストが何分か話し、司会者が会話に戻ってきて無関係であったり、回答が既出の質問をするようなインタビュー、よく耳にするでしょう?
これは恐らく司会者がかなりの良質問を着想したため、「聞かなければならない」と話を聞くのを2分前に中断したときに起きています。我々もまったく同じことをしています。
誰かと腰を下ろし会話をしていて、カフェでヒュー・ジャックマンに会ったときのことを思い出したり。
(会場笑)
そこで聴くのを中断してしまうのです。話のネタやアイデアは頭に浮かびます。それを受け入れ、手放さなければなりません。
ルールその5
5つ目、「知らないなら、知らないと言う」。ラジオの出演者――NPRの場合は特に――記録に残る、という意識があるため、自分の専門分野や確実に知っていることについて用心深いです。あなたもそうしましょう。注意を払いすぎてもいいくらいです。
会話を安くしてはいけません。
ルールその6
6つ目、「相手の体験を自分のと混同してはならない」。相手が家族が亡くなったことを話しているとき、自分が家族を亡くしたときのことを話してはなりません。
相手が職場でのトラブルについて語るとき、自分がいかに今の仕事を嫌っているか語ってはなりません。
体験は一緒ではありません。絶対に。どんな体験でも、独自のものなのです。
もっと言うと、相手が話している内容は、あなたについてではありません。「自分がいかに優れた人間か」や「自分の苦悩」について話すときではないのです。
スティーヴン・ホーキング氏に彼の知能指数はどれくらいか聞いた人がいました。彼は「さっぱりわからない。IQを自慢する人は負け犬だからね」と答えました。
(会場笑)
会話は自己アピールの機会ではないのです。
ルールその7
7つ目は、「同じことを繰り返さないように努める」。それは恩着せがましく、とてもつまらないです。我々はよくそれをしてしまいます。
特に職場での会話や子供との会話では、主張することがあるから、何度も言い換えたりします。気をつけましょう。
ルールその8
8つ目は、「雑草にとらわれてはならない」。正直言って、年号、名前、日にちなど、思い出すと苦労しているこのことについて、相手は興味を持っていません。どうだっていいのです。
彼らの関心はあなたに向けられています。あなたの好みや、共通することについてね。ですから詳細は脇に置きましょう。省くのです。
ルールその9
9つ目は、最後ではありませんが、一番大切なことです。「聞く」。どれだけの偉人が、聞くスキルは発達可能な最も重要なスキルである、と述べたことでしょう。ブッダ曰く――これは私の言い換えになりますが――「口が開いているのなら、学んでいない」です。
カルビン・クーリッジ(元米副大統領)は「聞くことでクビになった人はいない」と言いました。
(会場笑)
では、何故我々はお互いの話を聞かないのでしょうか? むしろ話したい、というのが1つ。自分が話しているときは、主導権は自分にあります。興味のないことを聞くことはありません。
自分中心になります。アイデンティティの強化ができるのです。
もう1つの理由があります。それは、気が散ってしまうから。一般的に人は毎分255語話せますが、我々は毎分500語聞くことが可能。我々の脳内でその他275語が埋められているのです。
相手にきちんと注意を払う、というのは努力とエネルギーがいるのはわかります。しかし、それができないと会話は成り立ちません。
ただ2人で同じ場所に存在して、わずかに関連している言葉を叫び合っいるにすぎないのです。
(会場笑)
相手の話を聞かなければなりません。スティーブン・コヴィー氏はそのことをとても美しく言い表しています。「多くの人は理解する、という意図で相手の話を聞きません。返事をする、という意図で聞いています」。
ルールその10
そして最後の1つが「簡潔に話す」。
出典:www.ted.com(いい会話というのはミニスカートのようなものだ。興味を維持できるくらいは短く、内容を覆うくらいには長い。――私の妹)
(会場爆笑)
相手に興味を持つこと
ヘッドリー氏:これらすべての項目は、つまるところある共通する基本コンセプトに帰します。それは「相手に興味を持つこと」。
私はとても有名な祖父と育ち、私の家ではある習慣がありました。祖父母との会話を目的に人々が訪れ、彼らが帰ったのち母親が「あれ、誰かわかる? 彼女はミス・アメリカの準優勝者。彼はサクラメント(カリフォルニア州の都市)の市長。彼女はピューリッツァー賞の受賞者よ。彼はロシアのバレリーナ」と言います。
そのため、私は「人間誰もが、秘められたすばらしい特質を持っているんだ」と思い育ちました。正直言って、これが私をより優れた司会者にしているのだと思います。
可能な限り口を閉じて心を開き、驚かされるのを待っています。がっかりすることはありません。
同じことをしましょう。外に出て、人と話し、聞き――最も重要なことに――驚かされることを期待しましょう。
ご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
まとめ
良質な会話をするための10個のルール
- マルチタスクをしない
- 一方的に話さない
- “5W1H”の質問をする
- 流れに身を任せる
- 知らないなら、知らないと言う
- 相手の体験と自分の体験を混同しない
- 同じことを繰り返さないようにする
- 詳細にとらわれない
- 聞く
- 簡潔に話す
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