「これさえ読めば、すぐに人気YouTuberになれる」——そんな攻略本があれば読んでみたい、と思うのが当然ではないだろうか。
しかし、実際にはそんな攻略本は存在せず、人気になる方法を誰かが教えてくれるわけでもない。
さらに、カルチャーは歳月を待たずに変わっていき、それに伴い「タレント」に求められるモノも変化し続けていく。
「今のタレントに求められているモノ」を掴むことは容易ではないのだ。
今回は「今のタレントの求められているモノ」を、きゃりーぱみゅぱみゅや三戸なつめを輩出したアソビシステム代表・中川悠介氏と、仮想通貨を使ったクラウドファンディングSNS「VALU」を手がけたPARTYクリエイティブディレクター・中村洋基氏が登壇したイベント「ASOBI LABO vol.1」から探っていきたい。
果たして評価経済社会において、タレント(個人)は何を求められていて、どう発信すれば人に見てもらえるのだろうか。
タレントは「壇上の人」から「手の届くトモダチ」という感覚へ
TwitterやInstagram、YouTubeの登場によって、「個人の評価」と引き換えに、モノやサービス、お金が交換される社会、いわゆる「評価経済社会」への移行が進んでいる現代。
着実に広まりつつある「評価経済社会」について、多くのタレントをプロデュースしている中川氏とタレントに評価の場を与えている中村氏の両名が、お互いの意見を語り合った。
アメブロ時代から変わらない「自分たちのファン」がいることの強さ
評価経済社会において、「マスではなく、自分たちのちゃんとしたファンを持っていることが重要だ」と話す中川氏。
“アメブロ全盛期”から中川氏と交流があり、現在はアソビシステムに所属している30代の女性タレントは、スタイリストをつけずに自分で服を選び、自分でヘアメイクなどを行なっているそうだ。
彼女は恋愛やプライベートもオープンに発信しているが、それでもファンが離れずについているのは「彼女のライフスタイルを見続けている同性のファンだったからこそ」であると中川氏は考えている。
「カルチャー」とは一過性のブームで終わらないもの
中川氏は「カルチャー」について以下のように分析した。
“青文字系女子”や“原宿のアイコン・きゃりーぱみゅぱみゅ”など、原宿系カルチャーを生み出してきた中川氏が呈する、とても納得度の高い「カルチャーの概念」。
納得せざるをえない理由は「ゴスロリ」のカルチャーに当てはめてみればわかる。ゴスロリブームがテレビで紹介された後、ゴスロリ姿の人を原宿で見かけることが少なくなった。
しかし、ゴスロリファッションが好きな人たちは、単に自分たちの舞台を“街”から“SNS”へ移行させただけであったのだ。マスに出ても終わらない。まさしく「ゴスロリカルチャー」と呼べるものといえる。
自分がハマれる小さなクラスタがたくさんある。だからこそ「手の届くトモダチ」になれる
続いて、VALUを手がけた中村氏は「タレントは、『壇上の人』から『手の届くトモダチ感覚』になってきている」と話す。
VALUでは「優待でカニを届ける北海道のおじいちゃん」「『つなぐ人』という可愛い女の子」「謎のコスプレイヤーDJ」「ヴィジュアル系ルックスで声楽をやっている人」など、キャラの立ったさまざまなユーザーがいるそうだ。
キャラ立ちしている人や、キャラ立ちさせたい人がネットサービス上で集めた小さなクラスタにおいて「手の届くトモダチ」になってきていると考えられるユーザー層である。
先ほど中川氏が例に出していた女性も、小さなクラスタにおいて「手の届くトモダチ」というタレントであったのかもしれない。
人気YouTuber、インフルエンサーになるために必要なのは“忍耐力”
先ほど、経済評価社会におけるタレントを「手の届くトモダチ」というように表現したが、「手の届くトモダチ」になるためにはどうすればいいのだろうか?
ライブ配信サービス SHOWROOMやYouTubeで「手の届くトモダチ」として売れっ子になるための秘訣を中村氏から伝授してもらおう。
毎日同じ時間、毎日投稿することが大事!
中村氏は「手の届くトモダチ」になるためには「毎日投稿して自分のクラスタの人たちと触れ合うことが大事だ」と話した。
これはSHOWROOMにおける「手の届くトモダチ」になる手段だが、YouTuberにおいても“はじめしゃちょー”など、投稿を毎日欠かさず行なっているクリエーターは多い。
どれだけ売れっ子になっても、日課のように動画を投稿したり、配信したりすることが重要であるようだ。
ここまでの話から、評価経済社会において活躍するための方法をまとめてみた。「手の届くトモダチ」になるためには、“忍耐力”が必要そうだ。
評価経済社会で活躍できる「手の届くトモダチ」になる方法
- (1)自分のキャラを立たせる
- (2)忍耐強く毎日投稿して、クラスタと触れ合う機会を増やす
YouTuberの人気テク“モーニングルーティン”からわかるファン増加のコツ
また、HIKAKINやはじめしゃちょーといった人気YouTuberが所属するUUUM株式会社が手がける、ユーザー参加型のオーディションプラットフォーム「のちスタ」を一緒に作っていると中村氏。
「のちスタ」の話題から「女性はYouTubeでどんなコンテンツを出せばいいのか」という方向へと展開。
人気YouTuberを多数抱えるUUUMにアドバイスを求めると「モーニングルーティンとか鉄板です!」と答えられたそう。
モーニングルーティンとは言葉のとおりで、朝自分がやっていることそのまま撮影して編集した動画のことをいう。
「それ面白いの?」と思う男性が多いかもしれないが、モーニングルーティン動画の中には130万PVを超えているものもあるようだ。
たしかに、日常的な場面を日課のように見ていると、不思議と親近感のようなものを感じてくるかもしれない。
「せっかく動画をアップするのだから、珠玉の芸をしなければ」ではなく、自分自身そのままを連日コンスタントに発信し、ファンを雪だるま式に増やしているのが、いまのクリエイターたちなのだ。
タレントに求められるモノが変わった10年。カルチャーはどう移ろうのか?
当イベントが行われた「2017年11月21日」は、メディアとカルチャーにおいて大きな変化が起きた日であった。
というのも、1993年に創刊されて以降、原宿系女子に愛されてきたファッション誌『Zipper』が休刊を発表した一方で、しばらくサイトを閉鎖していた女性向けファッションWebメディア「MERY」が同日に復活したのである。
一つの時代の終わりを悲しむ声や当時を懐かしむ声がSNS上に溢れる裏では、MERY復活に喜ぶ声が上がるなど、女性ファッションという一つのカルチャーにおける多大な衝撃を与えた日だったのだ。
2つのニュースをふまえ、『Zipper』を含む青文字系カルチャーを生み出した中川氏は、カルチャーの変化についてどう考えているのだろうか。
今までのやり方とこれからのやり方の「過渡期」
ストリートカルチャーのスターを排出してきた雑誌について「重要な存在」であると考える中川氏。今回の2つのニュースには「時代の変化」を感じざるをえなかったようだ。
移ろいゆく時代の中、自分ができることは何か?と考えたとき「自分たちはカルチャーを作っていく存在だから、もう一度“雑誌の未来”を作りたい」と中川氏は話した。
ストリートカルチャーにおいては、今までの正攻法ではなく、これからのカルチャーにおける新たな一手を考えなければいけないようである。
ビジネスに役立つエンタメ力が身につく「QREATOR SCHOOL」
多種多様な業界でエンタメ力を武器に活躍する人たちが先生!
「ASOBI LABO Vol.1」ではアソビシステムの代表取締役・中川悠介氏とPARTYのクリエイティブディレクター・中村洋基氏が登壇したが、QREATOR SCHOOLでは、今後も多種多様な業界のQREATORたちがイベントを行う予定だ。
チャレンジをし続ける“面白い大人たち“に出会えるイベントになっているので、新しいモノ好きで、様々な業界や職種の話を聞きたいビジネスパーソンは、ぜひ足を運んでみて好奇心を刺激してもらってほしい。
イベントの提供元である株式会社FIREBUGでは、テレビ番組の企画や、企業をプロデュースしている。
同社が今までに築いたネットワークによって集めたQREATORたちが、どんなイベントを開催していくのか、本記事を読んでイベントに興味を持った方はぜひチェックしてみてほしい。
【プロフィール】
■中川悠介:アソビシステム株式会社 代表取締役。大学卒業後、2007年にアソビシステムを設立。原宿を拠点にファッション・音楽・ライフスタイルなどを発信。現在はインバウンド施策「もしもしにっぽん」も運営。
■中村洋基:PARTY クリエイティブディレクター。2000年に株式会社電通に入社。2011年に独立しPARTYを設立。2017年マイクロファンディングSNS「VALU」をリリース。
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