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- +動機づけ面接の極意
ネゴシエーションに使えるテクニックは実に多種多様である。相手に譲歩したり、利点を列挙したり――なるほど、それが功を奏することもあるだろう。
しかし今回作家のダニエル・ピンク氏は斬新にも、「質問」で相手を説得するテクニックをBig Thinkによる動画で提唱。「質問」で相手を納得させる極意とは、はたしてどのようなものなのだろうか。
ピンク氏は過去に『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか(2010年)』を著作。
動機づけ面接の極意
ある状況を仮定しよう。君は親で、部屋をめちゃくちゃに散らかしているティーンエイジャーの娘がいる。部屋はまるで爆弾が投下されたように汚く、どうにか自室を掃除してほしい。掃除をするように娘を説得するんだ。さて、君はどうする?
お小遣いをあげることができる。短期間しか効力をなさないだろうけど。脅迫も可能だ――それも短期間しか意味がないけどね。熱心に掃除の意義を説くのも1つの手。
でも実際、イェール大学のマイク・パンタロン教授が実用化したカウンセリング書発祥のテクニックがある。それは「動機づけ面接」というもの。
先ほど述べた対策よりも効果的なのは2つの不合理の質問を聞くこと。マリアという娘がいて、部屋が汚いから掃除をしてほしいとしよう。そこでマリアに問うのは次の質問。
「マリア、1から10の内――1はまだまったく掃除はできない、10は掃除をする準備は万端だったとして、君の掃除へのモチベーションはどれだい?」とね。マリアの部屋が豚小屋である以上10や9はありえない。5も行かないかもしれない。多分2とかだろう。
予想通り彼女は「パパ、私は2よ」と答えた。ここで2つ目の質問が来る。これは実に興味深い反直感的な問いかけ。「マリア、2なんだね。ではなんでもっと低い番号を選ばなかったんだい?」とね。
親だったら――僕も3人の子どもを持つ身として激しく同感するけど――直感的にこう言いたくなる。怒って「なぜ2なんて言うんだ。9じゃなきゃダメだ」とね。
でもこう聞くんだ。「なぜもっと低い番号を選ばなかったの?」と。ここでマリアはなぜ1を選ばなかったか説明しなければならない。
「まあ、私はもう15歳だししっかりしなければならないわ。もし部屋をきれいに保てればもっと定刻通りに、もっと早く学校へ行けるかもしれない。そうすれば、友達ともっと過ごす時間ができる。パパもママも家のどこに何があるか把握していないからあてにならないわ」と。ここでは何が起きたのだろうか。
なぜもっと低い番号を選ばなかったか、という2つ目の質問でマリアは自身の行動理由をはっきり伝えることになる。これはセールスと説得の公理。相手のではなく自分自身の行動に理由を持つとき、人はその理由を更に深く信じ、更に強いこだわりを持って実行する。
さて、マリアから「パパ、1から10で私は1だわ」と答えられたとしよう。その発言は少し物事を複雑にするけど、その原因を探るのはすごく大切なんだ。マリアがそう言ったら、君はこう返そう。「それを2にするにはどうしたらいいかな?」と。
それは次のような発言を引き出す場合が多い。「パパたちが最初15分くらい手伝ってくれればなあ」「今夜ゴミ出しや夜食の準備をしなければ時間があるかも」とマリア。
人が1と言うときに多いのが、純粋な拒絶をしていない場合。それは実際的な問題に直面しているから。
1と言われたときはその問題を探り当てて、2にしようとするんだ。そのようにすることが勢いづけてくれるかもしれない。
僕が挙げた一例は子育てに関連しているけど、もっと普遍的な場面でも使えるよ。あまねくすべての説得場面で使えるわけではないけど、上司の説得には使える。
もしくは見込みが低い実際のセールス現場で、説得話術として使えるかもしれない。ゴミ箱を動かすのを拒否する隣人などにも使える。
ポイントは、我々が説得や動機づけは対人的であると思い込む傾向にあること。そして社会科学がすごく明確に教えてくれるのは、説得や動機付けは人が自分自身にすることであるということ。
そして説得者やモチベーターとしてするべきなのは、言動の状況をリセットし、説得対象者自身の行動理由を明らかにすること。そのほうがずっとうまくいく。
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