「お金で幸せは買えない」これは多くのフィクションで言われている常套句である。この言葉が耳にした多くの人は、お金があっても満足できない大金持ちの物語を想像するだろう。最終的には愛が必要なのだと気付くのである。
しかし「お金で幸せは買えない」と、そう安易に断言してもいいのだろうか。心理学者のマイケル・ノートン氏はブリティッシュコロンビア大学教授のリズ・ダン氏と共に、お金と幸福の関連性について研究してきた。
Big Thinkによるインタビューにて、彼は「自分のための」出費と幸福は結びつかないことを発表。以下がその書き起こしである。
お金と幸せの関係性
ブリティッシュコロンビア大学に勤める私の仕事仲間、リズ・ダン教授と私は、「お金と幸せの関係性」について研究してきました。
お金と幸せの関係は一見シンプルに見えるかもしれません。というのは、「お金も幸せも、もっと欲しいものだから、お金が増えればさらに幸せになれる」考えがちだからです。
しかし実際のところ、お金と幸せの関係は、はるかに複雑でした。
「幸せはお金では買えない」と言われて驚く人はいません。ありふれた表現ですから。しかしこの常套句からは、どのような出費が人を幸せにして、何がそうしないのかわかりません。
「私物のために出費する人」が大多数を占めることがデータ上、頻繁に観察できました。もちろん、住宅ローンも払わなければなりませんし、車も必要です。衣類も、食物も必要不可欠。しかし人々は、自身のために出費しすぎているように見受けられます。
心理学者として最も注目すべき点は、自分自身のために使うお金は幸せとはまったく無縁であること。もちろん、私物の購入で不幸せになることはありません。私物をたくさん買うことによって惨めになるわけではありません。
ただ幸せには影響しない、というだけ。どれだけ私物に出費しようと、幸福度は変わらないように思えるのです。
利他的な出費
我々は、私物の購入が実りないものなら、「幸福度を増やす出費の正体とは?」という問いへの解を探求しました。
そこで我々が注目したのは、幸せに繋がらない自己中心的な出費ではなく、他人に何かを与えるために使うお金。例えば、募金をしたり、友人に昼食をおごったりプレゼントを買ったりすること。一般に、このタイプの出費は幸せに結びつくようです。
実験の一環として被験者にお金を与え、自分か他人のために使うようにと指示した時、私物に出費した人はごく平凡な1日を過ごしましたが、他人に出費した人はより幸福な1日を過ごしました。
「私物の購入は人を幸せにしない」というアイデアから、幸せにお金を使うための2つの相反する考え方を導き出せます。1つ目は「他人のための出費」。第2は「自分自身のための出費を私物から体験に変えること」。
体験による出費
過去10年間で多くの研究者たちは、一般的に体験を購入した時私物を購入するよりも幸せを得られることを証明しました。よく考えてみると、これには多くの理由が存在します。
その合理的な理由の一つは、自分自身のために物を購入した時、自分と物しか残らないから。スマホゲームをする自分でもなんでも、想像してみてください。多くの場合、それらは自分だけで完結します。
一方多くの体験は――1人のこともあるでしょうが――社交的な側面が根づいています。晩食でも、映画でも、ハイキングでも、なんでもいいのです。他人と時間を共有させてくれます。
時折、うっとうしく感じることもあるでしょうが、人と話すことによって実際に幸せを感じられることがわかりました。親しくない人との関わり合いでさえも、部屋にこもっているときよりかは幸せを得られるのです。
それゆえ、体験は面白いだけではなく、他人と時間を共有させてくれます。これが、経験が私物よりも幸せにしてくれる理由の1つ。
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