ケータイの料金は、キャリア間の大きな競争軸の1つ。スマホが一般的になり、端末の均一化が進む中、以前より、各社とも料金に工夫を凝らすようになった。
特に、料金的に新たな仕組みが導入されやすい時期が、iPhone発売のタイミングだ。
ご存知のとおり、iPhoneは日本でもっとも人気のある端末。以前よりも注目度は下がっているものの、依然として売れ行きはいい。このiPhoneに合わせ、新たな料金プランを導入すれば、認知度を広げやすく、キャリアにとってもメリットが多い。
例えば、昨年はソフトバンクが20GB、30GBのギガモンスターを導入。大容量プランは3社に広がり、一気にスタンダードになった。
KDDI「アップグレードプログラムEX」
端末代を最大半額に抑えるアップグレードプログラムEX。今年のiPhone 8、8 Plusで注目されたのは、「端末の負担をいかに抑えるか」ということだった。きっかけとなったのは、auの「アップグレードプログラムEX」。
KDDIはiPhoneの発売に先立ち、まずはAndroid向けに分離プランと呼ばれる「auピタットプラン」「auフラットプラン」を開始した。ただ、分離プランは端末に対する割引が出ない。この負担感を抑えるために同時に導入されたのが、アップグレードプログラムEXだ。
アップグレードプログラムEXは、端末の割賦を従来の24回から48回に延ばし、毎月の負担額を半分に減らすというもの。
ただ、これだと単に支払い回数が増えただけで、支払いの総額は変わらない。端末代金を支払いきってから機種変更する人が多いことを考えると、買い替えサイクルが延びてしまいかねない。そこでKDDIは、端末の下取りを条件に、2年で残債を免除。タイミングをピッタリ合わせて機種変更すれば、端末代が最大で半額になる。
さらに、KDDIはiPhone 8、8 Plusに合わせ、ヘビーユーザー向けの「アップルグレードプログラムEX(a)」も導入した。
このプログラムは毎年iPhoneを買い替える人向けで、アップグレードプログラムEXとは異なり、分割払いの回数は24回のまま。代わりに、1年で残債が免除される格好だ。iPhoneユーザーは、この2つのアップグレードの中から、好きな方を選択できる。
iPhoneに合わせ、1年で残債が免除されるプログラムも始まった。対抗するソフトバンク、NTTドコモの新プラン
ソフトバンクは月月サポートがつくのが特徴。これに対抗したのが、ソフトバンク。同社はiPhone 8、8 Plusと同時に「半額サポート for iPhone」を開始した。
特徴はauのアップグレードプログラムEXに近く、24回払いを48回払いにし、2年目以降の機種変更で残債をチャラにするというものだが、大きな違いは、「月月サポート」と呼ばれる端末代の割引がなくならないことにある。
auのアップグレードプログラムはauピタットプランやauフラットプランが必須だったが、ソフトバンクの場合は、料金プランまで変更する必要はないというわけだ。
残債免除を打ち出したauとソフトバンクに対し、NTTドコモのアプローチは少々異なる。2社に遅れて「機種変更応援プログラム」を導入したNTTドコモだが、仕組みはdポイントで還元するというもの。
2社と異なり、残債自体は免除されず、ついたdポイントで次の機種の代金を支払うことができる。あくまで“機種変更を応援する”というスタンスで、13カ月目が最大の4万ポイントで、以降1カ月ごとに2000ポイントずつ減っていく仕組み。26カ月経つと、ポイントは支払われない。
3社が端末買い替えプログラムを導入した背景には、総務省のガイドラインが見え隠れする。このガイドラインによって、端末の実質価格が「2年前の同程度の機種の下取り価格」と規定された。元々の端末価格が高いiPhoneに大幅な値引きをすることが、難しくなってしまったのだ。
ただ、そのままだとユーザーの負担が増えてしまう。そこで、値引きではなく、残債の免除という形で買い替えを促進したのだ。
一見お得なように思えるこれらのプログラムだが、対象は同一キャリ内で機種変更する場合。番号ポータビリティでキャリアを変えてしまうと、残債は免除されない。また、現在使用中の端末は、下取りに出さなければならない。
事実上、iPhoneは所有からリースに近い形になったといえるだろう。キャリアの縛りが強くなり、乗り換えがしづらくなっている点にも、注意が必要だ。
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