10月11日、アマゾンは電子書籍専用端末「Kindle」の最新モデル「Kindle Oasis 2017年モデル」を発表、予約を開始した。
この10月で、Kindleは日本参入5周年になる。5年前は「電子書籍はまず専用端末から」というイメージが強かった。だが、スマートフォンやタブレットが普及し、無料アプリから読めるようになった今、専用端末を発売するメーカーも少なくなっている。
だが、アマゾンはまだ専用端末にもこだわる。「メールやメッセージに邪魔されない、読書に没入する体験」を提供するためだ。そんなアマゾンがこだわる「高級専用端末」の実機をチェックしてみよう。
10月末より発売される「Kindle Oasis」新モデル。IPX8対応の防水になり、ディスプレイサイズは7インチに拡大した。価格は3万3980円から。ただし、Amazon Prime会員は4000円割り引かれ、3万円を切る。
安価になってスペックは大幅アップ!
Kindle Oasis 2017年モデルの実機。ディスプレイの見やすさが特徴。アマゾンの電子書籍専用端末「Kindle」は、ディスプレイに液晶や有機ELでなく、モノクロの電子ペーパーを採用しているのが特徴だ。
カラーが表示できないこと、書き換え速度が他のディスプレイほど早くないこと、書き換え時にちらつきが見えることがあるなどの欠点はあるものの、液晶などより紙に近い見栄えで目に優しく、消費電力も劇的に小さい……という特徴がある。そのため、バッテリー動作時間は「数週間」と、スマホなどに比べ桁違いに長く使える。
Kindleには普及型の安価なモデルと、読書にこだわる人向けの高級モデルがある。今回発表された「Kindle Oasis 2017年モデル」は高級モデルだ。Kindle Oasisは昨年も販売されており、片手で持ちやすいサイズが特徴だった。
だが、昨年のモデルは4万円を超える価格で少々高かった。今年のモデルは、もっとも安価なモデル(Wi-Fi、容量8GB)の場合で3万3980円(税込)と、昨年モデルよりも8000円以上安い。しかも、アマゾンの会員制サービス「Amazon Prime」の会員ならば、ここからさらに4000円引きとなる。だから、本体価格は実質2万9980円になるわけだ。
その分スペックが落ちたり、安っぽくなったりしたのか……というとそんなことはない。むしろ、スペック的には圧倒的に勝っている。
まず、ディスプレイサイズが6インチから7インチに大型化した。小説などではあまりインパクトがないが、コミックではとても効果が大きい。
見開きで見るにはまだ小さいが、それでもかなり読みやすくなった。ちなみに、Kindleは過去にアメリカで9.7インチモデルを一度出したことがあるものの、それ以外はずっと6インチを中心に展開している。7インチへの大型化はきわめて異例だ。
左が2016年モデル、右は2017年モデル。ディスプレイサイズの違いやボディの仕上げの違いが目立つ。 これまでKindleは防水機能を備えてこなったが、Oasisの2017年モデルは、IPX8対応の防水モデルになった。だから、お風呂に持ち込んで本を読む事もできる。
ボディはアルミの削り出しになり、十分高級感がある。2016年モデルは131g(Wi-Fi版)と軽く、付属のカバーがバッテリー内蔵になっており、組み合わせて使うことで長時間使える……という機能を持っていた。
2017年モデルはそのギミックがなくなり、ボディが60g重くなっているものの、ディスプレイの大型化などを考えれば、十分満足できるトレードオフと言える。
カバーは別売。レザーカバー(上列、7180円・税込)とファブリックカバー(下列、5280円・税込)がある。カバーは折り畳むことでスタンドにもなる。コミックを意識した改良点が満載
ページの「早送り」方法が変更に。スピードを変えつつページ送りできるので、目的の場所へ行き着くのが簡単になった。Oasis 2017年版は、特に「コミック」を意識した改善が目立つ。画面の大型化もそのひとつだが、機能面でも色々と改善がなされている。
特に気に入ったのは、ページめくりの高速化・快適化だ。電子書籍の欠点は、紙のように「パラパラとページをめくる」感覚に欠けることだ。すばやく目的のページにいきつくのが難しい。
だがOasis 2017年版では、画面を「長押し」してから、指を横に滑らせることで、ページの「早送り・早戻し」が出来る。ページを飛ばすスピードは、指を滑らせる距離によってきまる。
この辺は、動画を見てもらうのがわかりやすいだろう。この機能は、アップデートによって過去のKindleの一部にも提供されるのだが、動作の速いOasis 2017年版では特に有効な機能といえる。
また同様に、書籍がシリーズ毎に「自動でまとまる」のもうれしい。Kindleは単品書籍を想定して開発されている部分があり、日本のコミックのように「何十巻」もある作品の管理が苦手だった。
今もスマホアプリ版では、自分で「コレクション」を作り、手動で整理する必要がある。だが今後、専用端末版のKindleでは、シリーズ毎に書籍が自動でまとめて表示されるようになるため、手作業での整理がいらない。
2016年版では「4GB」だったストレージ容量が、「8GB」もしくは「32GB」に増えているのも、コミックに向いた変化である。文字ものの書籍なら4GBでも十分以上だが、コミックの場合容量が大きくなるため、最低でも8GBは欲しいところだった。
これらのハードウエアの変化は、「日本のコミックでのニーズを配慮したもの」(アマゾン担当者)なのだという。日本の電子書籍市場はコミックを中心に回っており、アマゾンでもコミックの電子書籍が売れている。
この9月には、日本独自のストアである「Kindleマンガストア」が作られたほどだ。「コミック派だから専用端末は不要」と思っていた人も、一考の価値がある製品になってきた……と筆者は考える。
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