この夏、どう過ごされましたか?
仕事が忙しかった方も、夏休みを満喫できた方も。もし、次に海外旅行をお考えなら、おすすめの町があるんです。
グルメ大国・フランスの、ルイ14世も愛した牡蠣の名産地、カンカルです。
ミルキーブルーの海に、小舟が行き交い、フランス語が聞こえる。美しい自然に抱かれたこの小さな町では、磯の香りがする日本の牡蠣とまた違う、シーフードクリームソースみたいにクリーミーな牡蠣が味わえます!
「牡蠣はあたるからなあ」とお思いのあなた、実は、フランスの牡蠣ってあたりにくいらしいんですよ。フランスでは牡蠣を生で食べることに数百年の歴史があり、生産者さんは毎日生で食べているそう。
牡蠣好きには天国、牡蠣が苦手でも牡蠣観が変わっちゃうかもしれない。牡蠣の世界的名産地・カンカルへの旅のレポートを、今回はお届けします!
カンカルって、どんなとこ?
カンカルは、フランス北西部の美しい港町(Googleマップはこちら)。
ここにはなんと年中無休の牡蠣市場があり、常時3〜7軒の牡蠣生産者が、目の前の海で育った牡蠣を、新鮮……どころか、元気に生きたままで販売しています。
カンカル中心街のバス停から、海へ向かって徒歩10分。いかにもフランスの港町らしい、しましまマリン柄の可愛いテントが見えてきたら、そこが牡蠣市場です。
しましまテントの前に並んでいるのは、昔のフランス人が作った、牡蠣たちのおうち。
夕方6時ごろ、潮が満ちると、牡蠣たちのおうちもすっかり海に沈みます。
カンカルの海は、牡蠣生産にぴったり。干潮時に人間が歩けるくらいの浅瀬が何kmも続いており、生産者によると「オーストラリアに次ぐ世界2位の遠浅の海」なんだとか。
海の透明度も、ご覧の通り。底に沈んでいるのは、キメの細かいマリンクレイです。
あったかくてミネラルたっぷりのマリンクレイは、天然のパック。はだしで歩くと、むにゅむにゅして気持ちいい。
足がツルツルになります。(※貝殻で怪我をしたり、はまり込んでしまったりしないよう、足元を確かめながらゆっくり歩いてくださいね!)
牡蠣市場(marche aux huîtres/マルシェ・オ・ジュイットル)
こちらが、牡蠣生産者のひとり、フレッドさん。
いかにも海の男!って感じですが、実は写真家としても活躍する、豪快かつ繊細なナイスガイです。(写真集:Infiniment Bretagne)
「日本からの取材かい? おれは写真家だけど、写真に撮られるのは苦手なんだよね〜……あれっ、でもこの写真は、なかなか悪くないねえ。おれの写真もぜひ見てくれよな。じゃ、ボン・デギュスタシオン(召し上がれ)!」
そんなフレッドさんが、ゴリゴリ音を立てて開けてくれた牡蠣がこちら。
12個も食べて、7ユーロ!(※2017年7月当時。1ユーロ120円として、約840円)
すぐ近くの露店では、フライドポテトや白ワイン、また、牡蠣殻に残ったおつゆを浸して食べるためのバター付きパンなんかも売られています。
これは、ポテトもつけて9ユーロ(約1080円)。
食べた後のお楽しみ
海辺で牡蠣を食べたら、その殻を海にポイっと放り投げるのがカンカル流。
牡蠣殻は波に砕かれ、また次の牡蠣が育つ栄養になります。レモンとお皿は買ったお店に返しましょう。
お腹いっぱい牡蠣を食べたら、高台に登って海を眺めるのもロマンチック。
カンカルは夏なら21時半ごろまで明るく、満潮が18時前後なので、18時ごろから海水浴を楽しむ人もいますよ。
3単語でいける! フランスでの牡蠣の買い方
さて、少し、フランスの牡蠣のことをご説明しましょう。
フランスの牡蠣は、0番から5番まで(N゜0〜N゜5)6段階に分けられています。数字が小さいほど、大きなサイズになります。
値札に書いてあるのは、販売単位。
- 「unité(ウニテ)」= 一個単位での販売
- 「dz(ドゥーズ)」=12個(1ダース)単位での販売
12個も食べられないなら、「ドゥミ・ドゥーズ(demi douze)」と言えば、6個(半ダース)で売ってくれます。お店によっては、6個ずつ2種類のハーフ&ハーフで用意してくれる場合もあります。
牡蠣市場では、その場で牡蠣を開けてもらう場合、1皿につき1ユーロの手数料がかかります(2017年7月現在)。半分に切られたレモンも、0.5ユーロでつけてくれます。
英語が通じる生産者さんも多いですが、せっかくなら、簡単なフランス語で!
欲しい牡蠣を指差して、
- 「サ」(ça/これ)
- 「ドゥーズ」(douze/12個)または「ドゥミ・ドゥーズ」(demi douze/6個)
- 「シルヴプレ」(s'il vous plaît/お願いします)
この3単語だけで、カタコトだけど通じますよ。
それから、もうひとつ。
フランスの牡蠣があたりにくいワケ
フランスの牡蠣は、貝毒がたまりにくい海域で育ち、生きたままの新鮮さで提供されるため、あたりにくいという特徴があります。
天然の生ものですから、「あたらない」と言い切ることはできませんが……。食べる人にアレルギーがない限り、まずお腹は壊さないでしょう。私も、3日間の滞在で、1日2食は牡蠣でした。
日本の生食用牡蠣は、食中毒を防ぐため、数日間、無菌状態の水槽で断食させ、お腹を空っぽにした状態で提供されます。ですがフランスでは、このステップを踏んでいないため、牡蠣が痩せません。
代わりに、REPHYという貝毒原因プランクトン監視システムで安全性を保っており、1984年以降は貝毒による中毒が報告されていないそうです(参考:フランス農業省)。
カンカルへの行き方
カンカルには鉄道の駅がないため、バス/車/フェリーのいずれかで向かうことになります。最寄りの駅はSaint-Malo(サンマロ)です。
- バス:Saint-Malo駅を出て右手の5番バスに乗車、約30分、Cancale-Egliseで下車。1.30ユーロ(約150円)。
- 車:Saint-Malo駅から約15分、15.2km。タクシーの場合30ユーロ前後(約3600円)
- フェリー:Saint-Malo港から約90分、compagnie corsaire社の船で21ユーロ(約2500円)。
パリからサンマロまでは、鉄道のほか、長距離バス「OUIBUS」も出ており、途中で車窓からモンサンミッシェルを見ることもできます(写真)。
日本のような素敵なサービスエリアには止まらないので、体力的にきつかったり、トイレなどの車内設備があまりよくなかったりはしますが、とにかく安く旅したい! という方にはいいかもしれません。
牡蠣の味も、海の色も。同じ地球なのに、こんなに違う。
遠い国に来てこその味覚、風景、そして人々との出会いが、カンカルになら、きっとあるはずです。
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