「ダークナイト」(08)や「インセプション」(10)で知られる現役最高峰のフィルムメーカー、クリストファー・ノーランが、初めて史実に基づいた戦争映画を監督し、すでに世界各国で絶賛の嵐が吹き荒れている。
早くも来年度のオスカー受賞すら取り沙汰される、今、最もホットな映画「ダンケルク」の日本公開まで、いよいよ後約1ヶ月となった。
SNSで最も話題に上がった「ダンケルク」
因みに、全米公開前の7月3日から1週間、TwitterやFacebookなどのSNS上で最も話題に上った本作(調査会社comScoreが14万件以上と発表)。
7月21日に全米3720館で公開された際には、25年ぶりの70mmフィルム上映という付加価値も付いて、オープニング興収第1位を獲得。
同日、監督の母国イギリスやフランスを始め、世界46ヶ国でも同じく初登場1位となる好スタートを切った。つまり、“今、最もホット”というキャッチは決して大袈裟ではないのだ。
それは“負け戦”のシンボルだった?
ダンケルクとは、ドーバー海峡を望むフランスの港町。第2次大戦下の1940年、ヒトラー率いるドイツ軍の猛攻を受け、イギリスとフランスの連合軍兵士、合わせて40万人が周囲をナチスに包囲され、ただ死を待つのみの状態となる。
そこで、時の英国首相、ウィンストン・チャーチルはすべての兵士たちをダンケルクから救い出すよう指示。ここに史上最大の救出作戦が開始される。
驚くべきは、この不可能に近いミッションにイギリス軍だけでなく、およそ900隻の民間船が自らの意思で加わったこと。
彼らの思いは“ダンケルク・スピリット“と呼ばれ、今なお英国人の誇りの原点として語り継がれている。
陸海空の3方向から描く救出のドラマ
戦争映画の名作は数多いが、ダンケルクについては、歴史上負け戦と位置付けされていることから、映画には不向きだと言われてきた。
しかし、ノーランはまず、全編を贅沢なラージフォーマット(65mm+IMAXフィルム)で撮影することを決断。
さらに、戦争映画には欠かせないCGI合成による戦闘シーンを極力排除することで、リアリティを追求。
また、話の構成は、単純に事の推移を追うのではなく、ダンケルクの砂浜に整列して救出されるのを待つ兵士たちを主軸にした“陸”、ダンケルクに向けてドーバー海峡を渡る民間人の行程に密着する“海”、上空で展開する英国空軍VSドイツ軍機のドッグファイトを描く“空”、以上3つのパーツに分け、それらが同じ時間軸の中で部分的に重なり合う多面的な手法を採っている。
兵士たちに空から襲いかかるエンジン音
特に、実際のダンケルクの沖合に今は朽ち果てた長い防波堤(ビーチは遠浅のため兵士たちは防波堤に並んで救出の船を待った)を克明に再生し、その上に俳優とエキストラを合わせた大量のエキストラを整列させ、そこに上空からドイツ軍機(スペイン空軍から本物の戦闘機を拝借)が奇襲を仕掛けるシーンは、陸海空が集中する本編中最大の見せ場。
一気に降下する戦闘機の機内カメラが映す海上の様子と、防波堤側から上空を見上げる地上カメラ映像とのカットバックは、終始聞こえてくる不気味な効果音、エンジン音とも相まって、体中が縮み上がるような錯覚に陥らせるのだ。
蘇る戦闘機スピットファイア
ノーランはさらに、第2次大戦で活躍した本物の戦闘機、スピットファイアを撮影用に3機購入。そのコックピットや翼上に取り付けたカメラがとらえるドッグファイトは、かつて見たことのない空中戦の臨場感を演出している。
また、被弾し、沈没していく船内(劇中に登場する船舶数十艇も9ヶ国から集められた本物)から寸前で脱出した兵士たちが、手で水を掻きながら海中に沈んでいくシーンは、高感度HDハンドヘルドカメラによる効果によって、観客も一緒に水没していくような恐怖に襲われる。
ラストで絶望感が達成感に変わる!
終始リアリズムに徹した映画がラストで辿り着くのは、多くの同胞の命と引き換えに、救出に関わったすべての人々を包み込む絶望の果ての達成感。
亡くなった人、助かった人、助けた人、彼らすべてにとってのダンケルクとは、今を生きる地球人にとっても、勝敗ではなく、決して諦めない勇気の象徴として記憶されるべきもの。
それを映像化するために、あらゆる技術と労力を惜しみなく投入した監督、クリストファー・ノーラン自身の作品への思いが、そこに集約されている。
出演者はイケメン揃いで監督の来日決定
来日するクリストファー・ノーラン監督 救出される兵士には、本作が映画デビューの新人、フィオン・ホワイトヘッドと、同じく、ワン・ダイレクションのメンバー、ハリー・スタイルズ、英国海軍中佐にケネス・ブラナー、民間ボートの船主にオスカー俳優のマーク・ライランス、英国空軍パイロットにはノーラン映画の常連、トム・ハーディという、各世代生え抜きのイケメン俳優たち。
ノーランとハーディは未だ布陣が明かされてない「007」シリーズの最新作でコラボするのではないかと噂されている。
また、監督は妻でプロデューサーのエマ・トーマスと共に、「ダンケルク」の日本公開前の8月23日、7年ぶりの来日を果たす予定だ。
【作品情報】
「ダンケルク」
9月9日(土)より全国ロードショー
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