優雅な別荘から居心地のよい小屋やキャンピングカーまで、スタイルもさまざまに最高の休暇を過ごせる素敵な家をご紹介。
〈世界の暮らしとデザイン〉は、世界各地のHouzzから、住宅に関するさまざまなデザインやライフスタイルを紹介するシリーズ。
週末だけでも、1週間あるいはひと夏の長い休暇でも、休日を過ごせる別荘があれば、心と身体が解放される。羽を伸ばしてくつろぐ、ゆっくり考えごとをする、すばらしい眺めに心奪われる、いつもと違う冒険をしてみる、家族や友人とかけがえのない時間を過ごすーー別荘の形がどれも違うように、過ごし方もさまざま。東京湾からサンクトペテルブルクまで、今すぐ休暇をとりたくなるほど素敵な別荘をご紹介していこう。
贅沢な眺めを思う存分楽しむ日本の別荘
所在地: 千葉県富津市
所有者:東京在住のビジネスマンとその奥様
規模:116.43平方メートル(敷地は1869.82平方メートル)
設計:廣部剛司建築研究所
「内房に土地を買ったので別荘を建ててほしい」とクライアントに依頼された敷地は、海岸線から200メートルほどの高台の上。後ろは山が控える一方、目の前には船が行き交う東京湾の水平線が広がり、向こう岸の三浦半島越しに富士山も見えるという絶好のロケーションだった。水平方向に180度広がるパノラマを、空まで含めて楽しみたいというクライアントの要望に応え、建築家の廣部剛司さんは、海側に向かって大きく開かれた建物を設計した。
エントランスを入るといったん大きな袖壁で視界を遮られ、そこを抜けるとファサード全面を覆うガラス壁越しにすばらしい景色が広がる。東京の都心に暮らすオーナーは、車で1時間ほどの距離にあるこの別荘にしばしば滞在し、壮大な景色を眺めながらゆったりと過ごす。友人を招いて過ごすことも少なくないそうだ。別荘で過ごす本当に贅沢とは、仕事や日常の雑事に追われることなく、ただ自然に抱かれて穏やかに時を過ごすことにこそある、と思わせる週末住居だ。
費用をかけたところ、抑えたところ
オーナーからの要望の一つが「形は見たことのないものを、でも素材は素朴なものがいい」ということだった。そこで廣部さんは敷地の傾斜に寄り添うように、構造に関わる部分はすべて三角形を連ねるようにして構成した建物を設計し、この土地だからこそ成立する造形をつくりだした。一方で、素材は特別なものを使っていない。内部の仕上げもシナベニヤを使用しつつ、安っぽく見えないように丁寧に仕上げた。
ソリの上に立つ、ニュージーランドの海辺の家
所在地:ニュージーランドの北島、コロマンデル半島
所有者:夫婦と子ども3人
規模:40平方メートル。ベッドルームx2、バスルームx1
設計:〈クロッソン・クラーク・カーナチャン・アーキテクツ〉(Crosson Clarke Carnachan Architects)
砂地にじかに立つ、コンパクトな海辺の家。木製の2本の「ソリ」の上に建てられており、可動式になっている。海岸沿いで水浸しになる可能性がある立地のため、家を移動できるように設計するという建築条件があったためだ。
週末、この家へやってくると、オーナー一家はホイールを回し、「チェーンとクランクを使った装置」で縦に二つ折りできるシャッターを開ける。すると部屋から海が見わたせ、折りたたまれたシャッターはデッキのシェードになる。窓の上の大きなオーバーハングは、天候によって開ける角度を調整でき、留守の間は閉じておける。
費用をかけたところ、抑えたところ
設計チームはスペースを効率的に活用し、コストダウンを図った。例えば子ども用ベッドは3段ベッドにし、限られた面積で家族が快適に過ごせるよう工夫している。費用をかけたのは、木を使用した二つ折りのシャッターと、2階まで届くスチールフレームのガラス製ドア。この2つのおかげで、外のデッキが屋根つきのアウトドア空間になる。
好きなところで休暇を過ごせるアメリカのキャンプカーの家
所在地:写真は米国テネシー州ディクソン郊外、パイニー・リバー・エスケープ(かつて農場だったキャンプ場)
所有者:ビル&キャシー・ジョンソン夫妻
規模:全長8.53メートル
ビル&キャシー・ジョンソン夫妻は、大のキャンプ好き。建築家の夫と不動産業を営む妻は、15歳でつきあい始めたころからずっとキャンプを楽しんできた。今年結婚34年を迎える2人は、1972年製のアビオン(Avion)のキャンプカーを手に入れるチャンスが巡ってきたとき、迷わず飛びついた。そして車に手を加え、テネシー周辺をまわってカヌーや釣りを楽しむための、移動式サマーハウスに造り替えた。
夫妻は内装を明るくしたいと考え、フロント部分にもワイドガラスを取り入れた。既存の内装はすべて入れ替えて一新。キャビネットは白くペイントし、床は新しくビニール材を張った。「できるかぎりオープンで広く感じられる空間にしたかったんです」とビルさん。
費用をかけたところ、抑えたところ
キャンプカー内部のレイアウト自体は変更せず、コストを抑えた。キッチン設備を含め、設備類はすべて従来の位置から動かしていない。お金をかけたのは、椅子の布地や床を耐久性の高いアウトドア仕様に変えた点、キッチンなどのハードウェアとカーテンを入れ替えた点。
スパのあるロシアの山小屋
所在地:ロシア、サンクトペテルブルク
所有者:家族
規模:218平方メートル
設計:〈iv7デザイン〉
メインフロアは、よくあるロシアの上流家庭の住宅風に見えるこちらのコテージ。実はプライベートのスパを備えた別荘だ。
内装は伝統的なロシアの山小屋風で、木の家具を多く取り入れ、大きな煙突があり、広い窓からは田園風景のパノラマが見わたせる。
地下のフロアは一転してハイテクだ。マッサージ室が2つ、冷気サウナ、フロート式テーブル(写真)、そして広いスパ付きのサウナを備えている。LEDを使ったクロモセラピー(色彩療法)のシステムも取り入れ、リラクゼーションのための空間になっている。
スパのある地下は、家族や友人が集まる場所でもある。この夏、オーナーは、敷地にスポーツができるパビリオン風の設備を新たに造り、よりアクティブな要素を加えるつもりだそう。母屋とは、屋根と壁で囲った橋で行き来できる構想だ。
アメリカの休日用ボートハウス
所在地:米国テキサス州レイク・ホーキンス
所有者:近くに自宅を持つ夫婦
規模:28平方メートル。ベッドルームx1、バスルームx1
設計:〈ライト‐ビルト〉
建築施工業を営むエリン・ライトさんと夫が、小さな家で暮らす心地よさを知ったのは、自宅を建てる前のことだった。2人は湖畔にこの小さなボートハウスを建て、自宅を建てる間、ここで生活した。広さ27.6平方メートルの家での暮らしは居心地のいいものだった。ベッドルーム、小さなキッチン、リビングエリア、シャワーのあるバスルーム、焼却式トイレを備え、最低限必要な設備はそろっていた。ライトさんは「なかったのは洗濯機と乾燥機くらいですが、なくてもなんとかなるものですね」と話す。
この家の要はデッキ。湖面に張り出して浮かぶデッキは十分な広さがあり、2人はここで一緒に過ごしたり、バーベキューをしたり、ここからパドルボードで湖へ出たりする。ボートハウスでの暮らしがとても気に入った2人。ボートハウスは2人にとってキャンプカーであり、くつろいで過ごす玄関ポーチであり、家からすぐの距離にあるゲストハウスでありセカンドハウスでもある。
費用をかけたところ、抑えたところ
アンティークの冷蔵庫を手に入れ、自分たちで修理して費用を抑えた。お金をかけたのは電動式のガレージ扉。
伝統的なイタリアの釣り小屋をアレンジ
所在地:イタリア、アブルッツォ州ペスカーラ
所有者:家族
規模:136平方メートル
設計:〈ストゥディオ・ゼロ85〉
この建物が立っている場所には、イタリアで「トラボッコ」と呼ばれる、桟橋状の張り出し部分がついた、魚釣りのための木造の小屋が建っていた。小屋は老朽化していたので取り壊し、新しく造り換えたのが、こちらのビーチハウスだ。典型的な別荘とは少し異なるが(例えばバスルームがないなど)、オーナー家族にとっては休暇用の家であり、夏の間は時間の許す限りここで過ごしている。
いろいろな楽しみ方のできるビーチハウスだが、ここは、静かにもの思いにふけったり、海を臨むテラスに友人を招いたりするには最高の場所だ。オフシーズンにはギャラリースペースとしても使用している。子どもたちはここでパジャマパーティを開くのがお気に入りだ。
イタリアでは、この種の小屋を建てるには厳しい建築規定がある。設計の際にはガイドラインに従わなければならず、とりわけ屋根の形と窓の大きさについては細かな決まりがある。伝統的なトラボッコは木造だが、こちらは金属と木、ミネラルウールを使用し、床は木材を寄木張りにした。湿気の影響を受けないための配慮だ。
設計チームはオーナーと相談し、家具や設備はあくまでシンプルにとどめ、何より主役であるすばらしい景色を引き立てるよう意識したそう。
費用をかけたところ、抑えたところ
過度な装飾をしなかった(したくなかった)ことで、家具類にかける費用は少なくて済んだ。結果として、もとのトラボッコの形を再現することに集中できた。総工費は25万ユーロ(約3400万円)。
廃屋だったスペインの馬小屋を改装
所在地:スペイン、エストレマドゥーラ州コマルカ・デ・ラ・ヴェラ
所有者:子どもが2人いる家族
規模:322平方メートル。土地約5.26万平方メートル
設計:〈アバトン・アルキテクトゥラ&コンストラクシオン〉
廃屋になっていた馬小屋は、休暇を過ごす別荘に生まれ変わった。オーナーはマドリッドの喧騒を離れ、週末や長めの休暇をカセレス県にあるこの家で過ごす。
リノベーションにあたり、どんな手を加える場合も環境に配慮して、水も電気もサステナブルに使用していける家にしたいとオーナーは考えた。夏の間は、蓄電池を組み合わせたソーラーパネルシステムで電源をまかない、冬は敷地を流れる2本の小川を利用して、タービンで発電するしくみにした。
どの部屋からもグレドス山脈の緑を望める。「太陽が出ているとき、いちばん美しいのは、水面に反射した光が家の中できらめくところです」と建築家のオーナーは話す。
建物とプールには、ともに周辺地域で採れる石を使っている。
費用をかけたところ、抑えたところ
ファサード部分に使われていた石と、屋根の赤いタイルは既存のものを活用し、コストを抑えた。エネルギー効率の優れたソーラーパネルと、水圧で発電するためのポンプとタービンには惜しまず投資した。
フランスの大自然の中にある木の家を2家族でシェア
所在地:フランス、ノルマンディー地方オンフルール近郊
所有者:友人同士の2家族
規模:48平方メートル。敷地約1.01万平方メートル
設計:〈ロード・アルシテクチュール〉
オンフルール近郊の草原に立つ休暇用の家を、2家族で共有。家の中に個人の持ちものがほとんどないのは、家具や備品もみな共有しているためだ。南側に面したテラスに出れば、太陽の下でゆったりとした時間が過ごせる。周囲の緑は自然のまま手を入れず、家が風景に溶け込むよう配慮した。スライド式の大きな窓を開け放てば、キッチンと外のテラスとがつながって、アウトドア気分を楽しめる。
家の中にはセーフティネットをつるし、オープンな空間を維持しながらゾーニングしている。
費用をかけたところ、抑えたところ
コストを抑えるため、壁と天井の仕上げは合板を使った。また2階の寝室エリアは列車や船のコンパートメント風に仕切り、プライバシーのためにカーテンを設けた。
費用をかけたのはリビングで、照明つきのバスタブも設けた。「ウェスタン映画のイメージです。カウボーイが馬に乗って帰ってきて、宿の部屋の真ん中にあるバスタブにつかっている場面を思い描いています」と設計を担当したアルノー・ラコステさんは話してくれた。
アルプスのふもとに立つオーストリアの別荘
所在地:オーストリア、フォアアールベルク州クルムバッハ
所有者:建築家の両親、その家族と友人
規模:115平方メートル
設計:〈ヨンダー・アルヒテクトゥール・ウント・デザイン〉
地元の人はこのモダンな別荘を、緻密なデザインにちなんで「蜂の家」と呼んでいる。フレームの構造は木製、基礎はコンクリートの建物だ。
ドイツの建築事務所〈ヨンダー・アルヒテクトゥール・ウント・デザイン〉の建築家、ベネディクト・ボッシュさんは、両親のためにこの家を建てた。両親は週末用の別荘として、あるときは2人で、あるときは家族や友人を招いて使っているという。8人が集まれるスペースがあるが、2人だけのときも居心地よく過ごせる空間だ。
家は森のそばにある丘の上に立ち、近くに他の家はない。オーナーはさえぎるもののない眺めを楽しんでいる。「周りの自然環境との視覚的な関係をどう構築するかが、設計の際の鍵になりました」とボッシュさん。小さく切り抜いたような窓や、パノラマビューが楽しめる大きな窓の存在で、建物と屋外とがひと続きになる。
内装は、大半を地元のモミ材で仕上げた(外装にも使用している)。一方、サウナなど一部には、かつてここにあった建物の木材を再利用している。
費用をかけたところ、抑えたところ
ボッシュさんは予算を14万6000ユーロと決め、予算内で質の高い家を建てると決めていた。「他の部分の水準を下げたおかげで実現できました」とボッシュさんは説明する。「例えば、セントラルヒーティングは入れずに、暖房はリビングに入れた薪ストーブだけにしました。衝撃音を遮る防音構造も省いています。リビングルームに広々とくつろげるオープンな空間の感じを出すため、そのぶん寝室スペースは高さを2.2メートルに削っています」
イギリスの小さな島にあるコテージ
所在地:イギリスのイングランド、グロスターシャー州サウス・サーニー
所有者:陶芸家のマウス・マーティンさん、飼い犬のシドとメイジー
規模:約30平方メートル。ベッドルームx1、バスルームx1
川の中に立つこのコテージ、元々は水車小屋の横にあった荷車用の小屋だった。建てられたのはなんと1750年ごろにさかのぼる古い小屋だ。現在はマウス・マーティンさんが休暇用の別荘として使っている。家へは川にかかる古い橋を渡っていく。「ここは本当に静かで平和です」とマーティンさん。「草の上をアヒルたちが歩いていて、川にはカワウソが2匹います。スクゥイークとホイッスルという名前をつけたんですよ」
家の中はすべて、リサイクルかアップサイクル(使わなくなったものを生かし、新しく価値あるものを作り出す)、あるいは再利用、手づくりしたものばかりだ。近所の人が古い納屋を片づけていたとき、こうした別荘づくりの計画が立ち上がった。「その人のお父さんが、いろいろとものを取っておく人だったんです。とにかくありとあらゆるものがありました。それがこの別荘計画を始めるきっかけになりました。古い素材を生かすのはとても楽しいですよ。今や世界の半分がプラスチックでできているような時代ですが、この家にはプラスチック製のものはありません!」
費用をかけたところ、抑えたところ
家具をユーズド品にし、できるだけアップサイクルすることで費用を抑えた。一方、〈ジェームズ・ハリス・コントラクティング〉に依頼して、石造りの壁を川沿いに設けてもらい、川が氾濫したときに家を守る対策をとった。
世界最大の住宅デザインプラットフォーム「Houzz(ハウズ)」では、住まい、暮らし、ライフスタイルに役立つ情報を発信中。
文:Houzz
記事提供:Houzz(ハウズ)
記事提供:Houzz(ハウズ)
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