求人サイト「リクナビ」、旅行予約サイト「じゃらん」、不動産売買・賃貸「SUUMO」、ウェディング情報誌「ゼクシィ」など……多岐にわたる事業を展開する「株式会社リクルートホールディングス」。
主軸のビジネスが何なのかわからない同社に、なんとなく“ツワモノ揃いの会社”というイメージを抱いている人もいるかもしれない。
そんな新規事業を次々と成功させていくリクルート。
「リクルートだからこそできる=うちの会社には当てはまらない」というのは誤解であると、世界的なコンサル会社であるボストン コンサルティンググループの杉田浩章氏は自身の著書『リクルートのすごい構“創”力』にて述べている。
新規事業がうまくいかないのは「計画」のせい
第一線の戦略コンサルタントである杉田氏の著書『リクルートのすごい構“創”力』では、リクルートが新規事業を次々と成功させていく方法が紹介されている。
「新規事業が生まれない」「うまくいかない」——そう嘆く企業は少なくはないだろう。杉田氏は新規事業がうまくいっていない企業には、以下のような症状があると指摘している。
新規事業がうまくいかない企業の「5つの症状」
- PDSサイクルの「P」に時間をかけすぎている
- 計画が変えられない
- 時間をかけて計画を立てる割に、ツメが甘い
- 当事者も経営陣も本気ではない
- うまくいかなかったときに撤退の決断ができない
5つの症状に共通しているのは「計画」というポイント。
P(Plan:計画)、D(Do:実行)、S(See:検証)。計画に時間をかけすぎてしまうと、結果的にサイクルを回すのに時間がかかってしまう。
サイクルを回すのに時間がかかるのは新規事業にとっては弊害が大きすぎるのだ。
著者は「新規事業の成功には“数”と“スピード”が不可欠」としている。多くのアイデアを市場に出し、トライ&エラーで事業を洗練させていくことが新規事業には必要なのだ。
計画に時間をかけすぎたことで生じる「負のサイクル」
そのためにも、計画に時間を取られてはいけない。
「これだけ人とお金、時間をかけたのだから」と計画が変えられなくなり、明確な成功定義を決めないまま事業スタートして後戻り、軌道修正しないまま惰性で続く。
そのまま進んでいくと、やはり事業がうまくいかないことが多い。計画にリソースを割きすぎたばかりに「もう少し頑張ればなんとかなるのでは?」と諦めがつきにくくなってしまうのだ。
うまくいっていないにも関わらず撤退できない。新規事業の失敗、と判断できるだろう。
時間をかけすぎる原因は「本気じゃないから」
何故、計画に時間をかけすぎてしまうのか?
著者は新規事業の創造を「ギャンブル」のように捉えている経営陣が多い、と指摘。
新規事業を「ギャンブル」のように捉えている経営陣がいると、結果的に「成功確率が高く見える計画づくり」をしてしまう。
いいアイデアだったとしても「うまくいかないのでは?」「既存ビジネスと競合になるのでは?」と横槍が入り、トライすらできない。
外面のいい計画を時間をかけて作成したところで、誰も思い入れがない、志がないビジネスは成功しないのだ。
新規事業には1→10のノウハウがある
「計画」で停滞してしまう会社に対し、リクルートは5つの症状を発症しないための工夫がある、と著者は述べる。
新規事業開発を支える工夫
- リボンモデルで業界構造全体を捉えて、社内で議論する
- Pの段階で「何を検証するか」を議論してテストマーケティング、スモールスタートする
- PDSを回す期間は案件によっては日単位。市場に出したときにわかる改善点をすぐにPに反映させる
- 事業をスケールアップする「1→10」のノウハウを活用する
-
一定の段階まで来たら、予算組みと権限を新規事業開発のトップに渡す
- どの事業もうまくいっていない段階で必ず撤退する
- アイデアを出すこと、チャレンジすることが賞賛される文化がある
上記の工夫は、リクルート「だけ」が実践できるものではない。
他の企業でも真似できる、リクルートの新規事業を次々と立ち上げていく「構“創”力」の秘密が本書で明かされている。
今回は、リクルートの成長を支える「リボンモデル」について紹介したい。
リクルートのビジネス設計手法「リボンモデル」
著者がリクルートの「最大の強み」と明言しているリボンモデル。名前だけ聞いてもイメージできないだろう。
リボンモデルを一言で説明すると、産業構造全体を俯瞰できる思考のフレームワークだ。リクルートでは、このリボンモデルを用いてビジネス設計を行なっている。
名前の通り、蝶ネクタイのような型で思考を進めていくリボンモデル。
左側の三角が、個人や一般の消費者。右側の三角が企業や事業者。リクルートはその両者を結ぶ役割を担う。
新人から経営幹部に至る全てのリクルート社員がリボンモデルをきちんと理解し、日常的に使っていると本書では述べられている。
対象のビジネスがどれほどポテンシャルを秘めているか見極める
リボンモデルの使用目的はさまざま。
リボンモデルを使用する目的例
- 対象のビジネスがどれくらいのポテンシャルを秘めているのかを見極めるため
- 事業を成功させるために進むべき道を探索するため
リボンモデルを用いた思考では、消費者や企業を集めることからスタート。リボンの端の数が多ければ多いほど最終的な結び目も大きくなり、新規事業として収益を多くあげられるようになる。
集めた消費者や企業には何らかの働きかけをして、両者の行動を変化させて「動かす」。
動いた消費者と企業を、中央のマッチングポイントで結びつけるのがリクルートの役割だ。
収益を最大化させるためには、左右両端のリボンの幅を広げることとプロセスの途中での離脱率を下げることが必要になる。
「いかに左右のリボンを拡大するか?」「離脱させずに、どうやってコンバージョン率を上げるか?」「どうしたら結び目を最大化できるか?」。
リボンモデルを使うことで、事業過程で「リボンの両側」を再確認し、成功への道のりで迷子にならずに事業を進められるのだ。
“リクルートの基本”と言っても過言ではない「リボンモデル」の構築に沿わせるとリクルートのビジネスは3つのステージで表現できる、と著者は語る。
新規事業がうまくいかない、プロジェクトが停滞してしまっている……。そんな悩みを抱えている読者はぜひ、本書に書かれている3つのステージと9つのメソッドを参考にしてみてほしい。
新規事業を成功へ導くためのヒントが本書には詰まっている。
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