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トロントの壮大なLGBTプライドパレードへようこそ

キャシー

2017/07/03(最終更新日:2017/07/03)


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今年は愛犬と共にプライドパレードを歩いたわ。
 はじめまして。キャシーよ。

 私は2008年にカナダ、トロントに留学し、いつの間にか住み着いて、今は某高等教育機関でダイバーシティ促進、人権教育、LGBT支援をする傍ら執筆活動をしているゲイ・アクティビストよ。

 初めて参加したトロントのド派手なプライドパレードに圧倒されたのをまだ昨日のことのように憶えているが、今年でトロント・プライドに参加するのも10年目。

世界最大規模のプライドパレードをレポート

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トロントのドラァグクイーンであるソフォンダ・コックスのパフォーマンスは必見。
 トロント・プライドは世界最大規模のプライドだ。プライド月間である六月はトロント各地で数百以上のプライド関連イベントが開催される。

 プライドステージで豪華なドラァグ・パフォーマンスを見たり、プライドパーティで朝まで踊ったり、ファミリープライドのような子供連れで参加できるイベントもあって、とにかく素敵な時期である。

 プライドの最中に外を歩けばどこもレインボーに染まっていて、街中がとても刺激的なエナジーに包まれる。トロント・プライドを締めくくる最終日のプライドパレードはカナダ首相のジャスティン・トルドーも参加し、ダウンタウンが人で埋め尽くされる。
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トロントのヤングストリートでプライドパレードを見る観客たち。
 トロント・プライドは1981年にデモ運動として始まった。警察によるゲイコミュニティの弾圧に耐えられず、「Enough is Enough」というスローガンと共に、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の市民権を勝ち取るために多くの人たちが立ち上がった。

 そして、1986年にカナダ人権憲章に性的指向が追加されて、同性愛者の権利が保護されるようになり、2005年には同性婚も合法化された。今年は人権憲章にジェンダー・アイデンティティとジェンダー・エクスプレッションも追加されて、トランスジェンダーの人たちの権利もやっと保護されるようになる。

 しかし、そんな歴史や社会背景はすっかり派手な広告に存在感を奪われてしまった。フェンスの向こうから大きな歓声を上げる観客たちやプライドパレードを楽しそうにマーチする参加者たちは、プライドの意味をどれだけ理解しているのだろうか。
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プライドパレードとはちょっと雰囲気が違うトランスマーチ。
 そんなプライドパレードの数日前に行われるトランスマーチは、トランスジェンダーのコミュニティが率いるより政治的なイベントの一つである。

 ゲイである自分はアライ(支援者)として歩道から毎年トランスマーチを応援している。今年もヤングストリートを歩くトランスマーチを写真に収めようとカメラを構えていると、隣に立っているスーツを着た数人のサラリーマンの会話が耳に入った。

「これ、パレードじゃなくてデモ行進じゃん」

 彼らは豪華なプライドパレードを期待していたようで、手作りのプラカードだらけのトランスマーチにがっかりしていた。一般的な視点からすれば、プライドはレインボーに着飾って騒ぐお祭りなのかもしれない。

 違うプライドイベントで出会った留学生の集団はプライドを「愛のお祭り」だと解釈していた。間違っているわけではないが、大事な部分が欠けている。プライドはLGBTコミュニティのデモ運動である。LGBTコミュニティに対する差別や偏見が完全に社会から消え去るまで、それは変わらない。変わってはいけない。多くのトランスジェンダーの人たちにとって、この社会は未だに生き辛い。必然的に、彼らが主役であるトランスマーチの政治色も強くなるのだ。
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ブルー、ピンク、ホワイトの旗はトランスコミュニティのシンボル。
 LGBTコミュニティの中のトランスジェンダーのコミュニティのように、マイノリティの中のマイノリティが市民権運動で取り残されるのは残念ながら珍しい現象ではない。ここ数年、プライドという場で人種差別に対する取り組みを強調する動きも活発になっている。

 今年、フィラデルフィアのプライドでは新しくデザインされたレインボーフラッグが発表された。1978年にギルバート・ベイカーによってデザインされた六色レインボーは長年LGBTコミュニティを象徴するシンボルとして世界中に広がった。

 そして、この新たなレインボーフラッグのデザインには、有色人種の存在を主張するためにブラックとブラウンの二色が追加された。この八色レインボーは賛否の声を集めつつも、LGBT運動に存在する根強い人種問題を浮き彫りにしている。
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トロント・プライドで新しいレインボーフラッグを掲げて歩く人たち。
 私が初めて歩いたプライドパレードは2007年の東京プライドである。日本でLGBTという言葉が浸透するかなり前のことだ。

 このプライドパレードは私のカミングアウトでもあって、実に魔法のような経験だった。ずっと自分を押し殺してきたゲイの若者にとって、こうやって公の場で肯定される意味は大きかった。

 10年後の今、こうしてトロントのプライドパレードを歩きながらセンチメンタルな気分に浸っている。10年前の自分と同じように肯定されて救われている人がきっとこのパレードを共に歩いているのだろう。そう考えると笑顔が溢れた。

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