ふらりと立ち寄った書店で、赤い表紙に『女は覚悟を決めなさい』と書かれた本が平積みされていた。「私の人生は私が決める」という帯の言葉になんとなく惹かれた結果、気づけば衝動買い。
本を読んでみて、「女の会話はつまらない」と男女の友人が話していたことの原因がわかって、すっきりした。
2015年刊行のベストセラー『英雄の書』をはじめ、脳科学をもとにした書籍を数多く出している黒川伊保子氏の著書『女は覚悟を決めなさい』をもとに、“つまらない”の正体を考えてみよう。
女性は会話に「共感」を、男性は「問題解決」を求める
性別で考え方が異なるという話をする前に、「女性脳」「男性脳」の存在に否定派/肯定派、どちらの立場なのかを明示しておきたい。
本記事では参考にする黒川氏の本と同じく「脳の性差はある」という“肯定派”の立場で、“つまらない”の正体を考える。
黒川氏は本の中で、脳の性差を以下のように表現している。
- 女性脳「最初から答えを知っている賢者」
- 男性脳「永遠に答えを探し続ける冒険者」
RPGの登場人物だったら、最初からゲームをクリアしているか、永遠にクリアしないかの両極端。それくらい異なる。
これを読んでハッとしたのが「女性の試着あるある」。「ねぇ、どっちがいい?」と聞いておいて、自分の中では答えが決まっているというよくある話。
何故「女性“のみ”のあるある」なのか、ということの答えが黒川氏の唱える脳の性差が原因と考えると、「男性脳」「女性脳」の存在に合点がいく。
「つまらない」の原因は会話に求めるもののズレ
男性脳、女性脳が存在する前提で話を進めている黒川氏。彼女は、男性と女性で会話に求めるものにズレがある、と説く。
男女で異なる会話の目的
- 女性は「共感」のために会話をする
- 男性は「素早い問題解決」のために会話をする
黒川氏は、女性脳の最たる特徴を「共感欲求が高いこと」としている。共感されたい、共感したい——これだけを求めて生きていると言っても過言ではない、とまで本の中で断言。
本を読む以前から、「女性の会話に“わかる〜”って単語が何度も出てくる」という持論があった。この持論を知人の女性に話すと「わかる〜!」と返された。こうして私の共感欲求は満たされ、知人女性の共感欲求も満たされ、話はさらに盛り上がる。
これに対し、男性は何かが起きたときの思考スタイルは基本的に「問題解決型」。
恋人同士の会話で、彼女の愚痴に対して男性が「それは君も悪いよ。そういう言い方じゃなくて、もっとこう言えばよかったんじゃないかな?」と言ったとしよう。
それに対し、恐らく「あなたの意見なんて求めてない。私は今愚痴を聞いて、頷いてほしいだけなの!」と考える女性は一定数いるはず。というよりも、全く同じ話を友人から聞いたことがある。
つまらないの正体は「永遠に問題解決しないこと」「共感できないこと」
会話に求めるもののズレを理解したところで、つまらないの正体を明確にしよう。
女性の会話はつまらない、というのは男女どちらからも聞く意見。しかし、そのつまらないの正体は男女で異なる。
男性が女性の会話をつまらないと感じる理由
- 共感を求める会話に“オチ(問題解決)”が見えない→会話の「価値を見出せない」
女性が女性の会話をつまらないと感じる理由
- 対話相手の女性がする話に「共感できない」
男性がつまらない、と感じるのは「共感欲求を満たしあう会話」は「オチのない価値を感じにくい会話」。男性が問題解決以外で話す内容は、恐らく“男のロマン”なる趣味たちだろう。
女性がつまらないと感じる原因は、「共感できない」から。共感さえすれば、男性たちが繰り広げる趣味の話の輪に女性も加わっているだろう。
先ほどの私がした「女性の会話に“わかる〜”って単語が何度も出てくる」という話に「全然わからない」という意見を持った女性は、恐らく冷静に話を聞き始めてしまう。
「え?そうかな。私の周りはそんなことないけど」その人にとっての至極真っ当な意見を言ってしまえば、話を聞いて共感した女性たちは「その発言に共感できない」となってしまうのだ。
共感できない→モヤモヤする→意見を言う→共感している側がモヤモヤする。このモヤモヤこそが「つまらない」の正体だ。
共感できる会話であれば女性は共感欲求的な満足を得られる。共感できる相手と話し続けていれば、まさに「類は友を呼ぶ」状態となるだろう。
脳が活性化するとき、女性は“喋る”。男性は“ぼんやり”する。
女性は喋ることでストレスから解放される、と黒川氏は著書で何度も言っている。
とりとめのないお喋りの中に「感情にリンクした共感」があれば、女性にとってそれが学びになる、と黒川氏は説く。女性にとっての共感は「知的行為の核」なのだ。
喋り以外にも「感情にリンクした共感」は知的行為になることもある。その1つの例が「本」。
「わかる!」「あー、こういうことあるよね」という共感シーンが本にあったとしよう。本に登場したシーンと似ている状況に出くわしたとき、「そういえばこんなやり方で対処していたな」と、ふと思い出す。
女性にとっては、会話するように、共感しながら読めるエッセイや小説のほうが学びになるのかもしれない。
男性は「ぼんやり」して脳を活性化させる
突然だが、私の兄は無理やりテレビのチャンネルを変える。
しばらくして兄が携帯画面を見つめて、ぼーっとしだすタイミングでチャンネルを変えると「何変えてんだよ」と怒る……観てなかったじゃん!
ここで黒川氏の知見を拝借すると、男性脳には右左脳の連携を絶って、左右の脳をそれぞれ深く広く使って脳全体を活性化する技があるそうだ。
目の前のことをほとんど認知せず、自分の身体に起こっていることも自覚できない。「視界にテレビは映るけど、内容を認知していない」ということが起きる。
ぼんやり状態のとき、空間認識能力は究極に活性化し、直観力は最大に引き上げられる。そうすることで、脳の世界観をベースにした本質的な正解が降りてくる、と黒川氏は説く。
あのとき兄は、本質的な答えを得られたのだろうか。何はともあれ、本を読んでから男性がぼんやりしているときは放置することを心がけている。
男女脳論は、賛否両論ある。『女は覚悟を決めなさい』の著者、黒川伊保子氏も一般的な男女脳論を好んでいないそうだ。男脳の要素がある女性もいれば、女性脳の要素がある男性もいるだろう。
「男だからこれはできない」「女だからこれはできない」——今回の記事で伝えたいのは、そういうことではない。
男脳と女脳にはどんな思考の特性があるか?を理解する努力をすれば、きっとよりよいコミュニケーションが生まれるはず。
「理解できない」「これだから女性(あるいは男性)の話はつまらない」と思うのではなく、「こういう考え方なんだ」と解釈することに挑戦してみよう。
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