今年3月に日本全国で公開され、2カ月間で興収50億円を突破した「SING/シング」は、今から10年前にハリウッドで設立されたアニメ・スタジオ、イルミネーション・エンターテインメントの製作だ。
ディズニー/ピクサー作品以外で国内興収50億円を突破したのは「ミニオンズ」(15)以来の快挙で、何とその「ミニオンズ」もイルミネーションの製作。つまり、今や同社は老舗スタジオを追い越してアニメ界の頂点を伺う勢いなのだ。
イルミネーションの強みは3つある!!
イルミネーションの強みは、第1に、かなり常識外れで個性的なキャラクター。「怪盗グルーの月泥棒」(10)では、アニメ界の王道を逸脱したスキンヘッドで目がつり上がった偏屈な怪盗軍団のリーダー、グルーを、物語の進行と共に魅力的なキャラに変え、グルーに仕えるバナナから作られた怪盗チーム、ミニオンは、その愛くるしいルックスが世界中の女子に大受け。後にスピンオフとして製作されたのが「ミニオンズ」だ。
最新作にも秘策が…
さて、グルーとミニオンが協力してまたも手強い犯罪者に挑むのが、シリーズ最新作「怪盗グルーのミニオン大脱走」。前作「怪盗グルーのミニオン危機一発」(13)で泥棒稼業から足を洗い、反悪党同盟の特別捜査官に転職し、ついでに相棒のルーシーと結婚したグルーの前に、かつての人気子役転じて怪盗となった強敵、バルタザールが登場。巨大ダイヤが絡んだ熾烈な強奪合戦が展開する。
イルミネーションの強み、第2は、アニメならではの大胆なイマジネーションとユーモアに裏打ちされたユニークなビジュアル。グルーとミニオンが潜入を試みるバルタザールの要塞は、海のど真ん中にそそり立つキューブ上のオブジェで、バルタザールの必殺武器は着地点で膨らむバブルガム爆弾。クライマックスでピンクのバブルガムがハリウッドを一気に飲み込んでいく様子は、怖いけれどガムなだけに笑える。悪党なのに主人公、ガムなのに怖い。この絶妙のバランスが、あくまで勧善懲悪が前提のディズニー/ピクサーにはないセンスだ。
ヒットの立役者はファレル・ウィリアムズ
そして、第3の強みこそがイルミネーションならでは。彼らが一貫してこだわって来たのが、映画を離れてヒットチャートを賑わす最新ポップソングの登用だ。そのミッションを請け負っているのがファレル・ウィリアムズ。
ファレルが「怪盗グルーのミニオン危機一発」のサントラに収録した“ハッピー”は、2014年に全米で最も売れた曲に認定され、ミュージック・ビデオは現時点で9億5,000万回以上の再生回数を記録。最新作でもファレルの新曲“イエロー・ライト”がエンティングを飾っている。
アプリも驚異のダウンロード数!
また、イルミネーションのフランチャイズはモバイルゲームやコンシューマープロダクツ、ソーシャルメディアなど、劇場の外でも拡散し続けている。
「怪盗グルー」シリーズの成功を受けて開発されたアプリ「怪盗グルーのミニオンラッシュ」は、ダウンロード回数8億回を超え、ゲーム史上5番目にランクイン。もはや、グルーとミニオンはアニメキャラの枠を超えた存在になりつつあるようだ。
【作品情報】
「怪盗グルーのミニオン大脱走」
7月21日(金)公開
配給:東宝東和
(C) UNIVERSAL STUDIOS
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう