DMM.comラボ エンジニア清酒 渉氏。開発だけでなく仕様の調整、チーム同士の連携を繋ぐ役割を担っている。現在は新規事業立ち上げ支援も行っている。
ビジネスシーンでよく使われるアルファベット3文字「KGI」と「KPI」。
あなたはその言葉の意味を、自信を持って説明できるだろうか。
エンジニアやデザイナー専門のエージェント「レバテック」を運営するレバレジーズ株式会社が主催する勉強会「ヒカ☆ラボ」で行われた「そのプロジェクト、ゴール決まっていますか?〜KGI、KPI設定の大切さ〜」に参加してきた。
イベント内容から、プロジェクトを回す上でのKGI、KPIを設定することの大切さと、そもそもの意味についてお伝えしたい。
プロジェクトの“目標設定”に必須な指標「KGI」「KPI」
そもそも「KGI」「KPI」とは何なのか。
清酒氏が教えてくれたのは「KGI」「CSF」「KPI」この3つの関係性。
勉強会では図を使って説明していなかったが、解釈をするとピラミッドのような関係性の3つのワード。
KGIは「最終的に達成したい目標(ゴール)」のこと。
「どんなゴールにするのか?」「ゴール地点では年間いくらの売上が出ているか?」といった具体的な最終目標だ。
そんなKGIのことを、清酒氏は“キャリアプラン”に例えて話をした。
3年後になりたい自分像が「KGI」
KGIをキャリアプランに例えた話は「今から3年後どうなっていたいですか?」という質問からスタート。
独立をしたい、年収600万円稼ぎたい、転職をしてキャリアアップをしていたい、など、答えは人それぞれ異なる。
「3年後にどうなっていたいか?という姿がKGIです」とKGIの説明を結んだ。
KGI設定では「遠い未来」のことを考えない
KGIを設定するとき、遠い未来での目標を決めてもうまくいかない。
「例えば、ECサイトを作るということになった場合に年間売上100億円達成させたいです!というのは先の話。3年後の年間売上目標は大体いくらか?と、3年単位で考えてみましょう」と、ECサイト作りを例えに事業におけるKGI設定のヒントを提示。
KPIを考える前にまずはKGI達成に必要なものの洗い出しをする
いの一番にKPIを設定するのではなく、以下の順序を踏むと良いとのこと。
- ①KGIの設定
- ②KGI達成に必要なもの(CSF)の洗い出し
- ③CSFを元にKPIを設定する
ゴールを達成するために必要な「CSF(直訳すると“致命的な成功要因”)」。
KGI達成のために必要な要因のことだ。
先ほどのキャリアプランの例を使って、3年後のなりたい自分(KGI)を“結婚している自分”だとしよう。
その場合のCSFは、結婚相手を見つける、結婚式や一緒に住むための資金として300万円貯める、などが考えられる。
このCSF達成にあたって、“結婚相手を見つけるプロジェクト”、“結婚資金を貯めるプロジェクト”が成立する。
KPIとは『結婚前提に付き合える彼女(彼氏)ができる』『貯金0だから1年で100万円貯める』などといった、プロジェクト成功の定義のことなのだ。
プロジェクトの“成功の定義”を明確化させるKGI/CSF/KPI
1つのKGIに対していくつかCSFを洗い出し、プロジェクトを作り出す。その後に、プロジェクトの成功定義=KPIを設定する。
KPIを達成することで、“そもそも何故プロジェクトをスタートしたのか”という壁に当たらなくなるのだ。
“明確な成功”を共有するためにもKGI、CSF、KPIは必要ということがわかる。
そうなるとリーダーは、KPIを設定していれば組織に対して“この数字だけを達成すればいい”と、明確な成功を定義づけることができる。
「KPIを設定しなければ、プロジェクトは成功しません。何故なら成功の定義が決まっていないのだから」。
後からKPIを決めて、数字をとって……となってしまうと現場が燃えてしまう、と次の失敗談の予告を交えながらKGIとKPIの説明を結んだ。
KPIとKGIを設定しなかったらどうなったのか
清酒氏は、KGIとKPIを設定せずに失敗した体験談を2つ紹介した。
KPI、KGIを設定して開発者と企画者の“目標”を一致させる
KGIやKPIはチーム内での共通認識として持つべき指標である。
1つ目の体験談は、要求、要件定義書に記されたことを満たして、期限も予算も守ってリリースしたのに“プロジェクト失敗”と言われたという話。
「企画者が思い描いているぼんやりとした目標は、開発サイドに渡される要件定義書、要求定義書には書かれていないんです。“こういうことがしたいです”という要望を書くものですから……」と開発側のリアルな声を漏らした。
企画者のぼんやりした目標に対して、「現場ではデータベースやGoogle Analyticsを見れるから、現実の数値を知っているんです。だから、現実的にこの数値まで伸びるだろうと予測がつくのです」と語る。
企画者が“このプロジェクトをやったら売上が10倍になるぞ”と要件定義書にも書かずに頭の中で思い描いているのに対し、現実の数値を見ている現場は簡単に売上が上がるものではないと考えていて、共通認識が出来上がっていない場合、企画者と開発現場の間に温度差がある状態になる。
プロジェクトは企画者との温度差があるままリリース日を迎え、「なんで売上が上がってないの? かけた経費を回収できないじゃないか」とプロジェクト失敗を告げられたそうだ。
CSFを決めれば案件の目的がブレない
2つ目の体験談は、後付けで数字をとりたがるという話。
リリース後に「効果測定をしたいから、PDCA回せるように数字とっておいて」と一言だけ言われ、プロジェクトの目的もわからないまま数字をとることになってしまったという。
数字をとっている時のことついて「心が折れる。何のためにあのプロジェクトをやったのか? その時間あったら別のことできたんじゃないの。データ抜くのにも時間かかってしまうし……」と当時の心情を吐露した。
CSFを決めて、何のためにプロジェクトをやるのかをはっきりさせてからスタートすればKPIも定まる。
プロジェクトを成功させるために、KPIの数字だけに着目して進めていけば、後付けのデータとりの必要もなくなるのだ。
事業・サービスに関わる全員が「プロジェクトの目標」を認識する
体験談の最後に、プロジェクトを始めるうえで必要だった2つのことを話した。
プロジェクトや案件を回す上で大事なこと
- ①最初に何のためにプロジェクトをやるのか決める
- ②事業・サービスに関わる全員の間で「プロジェクトの目標」を共通認識にする
企画者も営業も運用も、1つの数値を目指してプロジェクトが動いている!とプロジェクトの目標を把握しておくべきなのだ。
前例のない新規事業のKGIを「仮置き」でも設定する
前例のない新規事業でどんな数字をKGIやKPIを設定すればいいか困ったときは、数字などは仮置きで目標を決めてしまおう、と大胆な提案をした。
「とりあえず売上をあげればいいや、というぼんやりした目標設定では、プロジェクトが適当になってしまうんです」。
目標を仮置きして、試験的にやってみることで具体的なKGIが決まるのだ。
KPIとKGIはサービスやプロダクトを成功させるために必要なこと。
それ以外にも「どういうことに自分たちはチャレンジすればいいのか?」という個人的な指標づくりをすることをアドバイスして、イベントは終了した。
エンジニア、クリエイターが無料で勉強できる「ヒカ☆ラボ」
勉強会後には参加者同士の交流会も。ドリンクを飲みながら、登壇者にも気軽に質問できる! レバレジーズ株式会社が開催するエンジニア、クリエイター向けの無料勉強会、ヒカリエ・ラボラトリー。略して「ヒカ☆ラボ」はその名前どおり、渋谷ヒカリエにて開催される。
技術向上をメインに、さまざまな企業のトップエンジニア・クリエイターから技術について学べる場を提供。IT以外にも、キャリアチェンジやフリーランス活動をテーマとした勉強会も開催中!
2011年より毎週火曜日と木曜日、年間で約50回開催されている。私の参加したKPIの勉強会ではおよそ60名が参加。エンジニア、デザイナー、マーケターなど幅広い職種の方が来場していた。
勉強会恒例の交流会も和気あいあいと、和やかな雰囲気で行われた。
今回の勉強会のテーマ「KGIとKPI」は、プロジェクトを回す立場のビジネスパーソンだけでなく、プロジェクトに加わるビジネスパーソン全員が知っておくべき知識。
事業のゴールに何を設定するのか。ゴールを達成するためには何が必要なのか。ゴール達成に必要なものを満たす数字は何か。
「目標」「ゴール」があると、進むべき道が明確になる。リーダーはKGIとKPIで事業成功までの道しるべをメンバーに示すために。プロジェクトメンバーは、目的意識を忘れないようにするために。
ゴールのないプロジェクトを進めていた方はぜひ、そのプロジェクトのKGIとKPIについて考えてみてほしい。
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