前編でマーク・ザッカーバーグ氏は、2017年ハーバード大学卒業生へ向けて母校での思い出、新たな目的意識を作り出すことの大切さ、そのために地球規模の挑戦を一緒で行うことを話した。
新たな目的意識を作り出すために彼が挙げた3つの方法はこちら。
3つの方法
- 一緒に壮大で価値のあるプロジェクトをすること
- 全員が目的を追求する自由を得るために、「平等」を再定義すること
- 世界中でコミュニティを作ること
後編では「平等」の再定義、世界中でコミュニティを作ること、ザッカーバーグ氏の卒業生へ贈る言葉を紹介したい。
「君たちは、目的を必要とする世界へ入ろうとしている」
14:43より抜粋
平等の再定義
新たな目的意識を作り出すための2つ目の方法は、目的の追求に必要な“自由”を全員が持てるために、「平等」を再定義すること。
ハーバード大生の両親の多くは、生涯安定した職に就いていた。その反面、僕たちの世代全員は程度は違えど起業家的。プロジェクトを始めるにしても、役割を見つけるにしてもね。
起業家的な考えは素晴らしいことだ。起業家精神が、僕たちの進歩をとても促してくれたからね。起業文化は、新たなアイディアを試しやすい環境があってこそ繁栄する。
「Facebook」は僕が最初に作ったものではないよ。最初は、チャットシステム、ゲーム、勉強ツール、音楽プレーヤーなどを作っていた。これはありふれた話だ。
J.K.ローリング氏は、ハリーポッターを出版する前、12回も断られている。ビヨンセだって、「Halo」を完成させるまでに何百曲と作ったはずだ。
(会場笑)
偉大な成功は、失敗する自由を与えられたときに訪れる。今、私たちには誰かを傷つけかねない経済的不平等があるんだ。「誰か」にアイデアがあっても、それを歴史的な事業にする自由がなかったら僕ら全員の損失になる。
僕たちの社会は成功したときは報いるけど、みんなが多くのチャンスを手に入れられるようにする努力は現在全く行われていない……。その現実を正直に受け入れようじゃないか。
例えば、僕が10年で何十億も稼いでいる間、何百万人もの生徒は奨学金を返せず起業なんてもってのほか、という状態であるとき社会システムの“不条理さ”がわかる。
僕はたくさんの起業家を知っている。けど、利益を得られない可能性を気にして諦めた人を1人として見たことがない。その反面、失敗したときの人生が保障できず、夢を追うチャンスを与えられなかった人は多すぎる。
(会場拍手)
いいアイディアと努力だけで成功できないのは周知の事実だ。成功は運任せな部分もある。
もし、僕が若い頃から家族を支える必要があり、プログラミングをする余裕もなく、Facebookが失敗しても大丈夫ではなかったら、今日僕はここに立っていない。
素直な人たちは、大学を卒業することができた自分がどれだけ幸福なのかわかっている。1つ1つの世代が「平等」の定義を広げる。過去の世代は、投票権と公民権のために戦った。彼らには、ニューディール政策と偉大な社会政策もある。
そして今、新たな世代における社会を再定義するときが来た。
僕たちには、GDPのような「経済的なモノサシ」だけで進歩を計るのではなく、「何人が意義を感じられることができたか」で計るような社会が必要。みんなが新たなアイディアを試す余裕が持てるために、世界的なベーシックインカム(最低所得保障の一種)のような考えを研究するべきなんだ。
転職は何度もするだろうし、手頃な料金の保育、1つの企業に縛られない医療制度が必要。僕たち全員が失敗を犯すだろう。そう、僕たちを縛るよりも、自由にする社会が必要なんだ。そして、技術の進化とともに、教育に目を向け続ける社会が必要。
あと、当たり前のことだけど、全員に目的を追求する自由を与えるのはタダではできない。僕のような人間は投資するべきだ。そしてここにいる多くの人も成功するだろうから、投資しようではないか。
これらの理由で、僕とプリシラはチャン・ザッカーバーグイニシアチブ社を立ち上げ、公平な機会を推進するために財産をつぎ込んだんだ。
(会場拍手)
これらが僕らの世代全体が持つべき価値観。僕たちは財産をつぎ込むかどうかは問わず、いつやるかだけだったよ。
ミレニアル世代は、史上最高に慈悲深い世代だ。たったの1年で、4人中3人のミレニアル世代の人々が募金、10人中7人が他の募金活動のために集金した。お金を与えることだけが重要ではないんだ。時間を与えることもできる。
保証しよう——誰かに手を差し伸べるのは、週に1、2時間で十分だ。もしかしたら「結構な時間だな。そんな時間はないよ」と思っているかもしれない。僕もそうだった。
プリシラがハーバード大学を卒業した時、彼女は先生になった。僕と一緒に教育関連の仕事をする前に、僕には生徒を教育する経験が必要だと彼女に言われた。
最初は文句を言ったさ。「結構忙しいんだけど。会社経営してるし……」とね。それでも彼女は譲らなかった。
そして僕は、地元の少年少女クラブの放課後プログラムとして、起業について教えることにした。僕は商品開発とマーケティングを教えて、彼らは人種差別をされたり、家族の一員が刑務所にいながら育つのはどういうものか教えてくれた。
彼らに自分の学生生活について話し、彼らはいつの日か大学に行きたいという希望を話してくれたんだ。5年間、その子どもたちと毎月夕食を一緒にした。その中の1人は、僕ら夫婦のために真っ先にベビーシャワーを開いてくれたよ。そして来年、彼らは大学に行く。1人残らずにだ。「彼らの家族初」の大学生だよ。
(会場拍手)
誰でも人に手を差し伸べる時間を作れるんだ。全員に目的を追求する機会を与えよう。手を差し伸べることが正しいからというだけではない。偉大な夢を叶える人が増えれば、我々全体が得するからだ。「目的」は仕事だけから来るものではない。
世界中にコミュニティーを作ること
みんなに目的意識を作れる3つ目の方法は、コミュニティを作ること。僕たちの世代が「みんなのための目的」というときの“みんな”は、全世界の人々という意味だ。
挙手してください、ここにいる何人が他国から来ましたか? 手を挙げ続けてね。この中の誰が、彼らと友だち? 手を挙げて! そうこなくっちゃ!
僕らは繋がって育ってきたんだ。最近行われた世界中のミレニアル世代向けの調査によると、「ミレニアル世代の一番のアイデンティティ」という質問に対し、最も多かった回答は国籍、人種、宗教ではなく、「世界の住民」だった。これはすごいことだ。
すべての世代は、「ワン・オブ・アス」に含まれる人の輪を広げていった。僕らの世代にとって、その輪は世界全体を含む。人類の歴史の偉大な進化は——種族から町へ、町から国へ——と広がることを知っている。僕たちだけでは達成できないことを成すために広がるんだ。
最大の機会は今や世界にあることを僕たちは知っている。貧困、病気をなくす世代にもなりえるんだ。最大の課題を解決するには、他国間の協力が必要だということも知っている。
一国家だけで地球温暖化に対処すること、感染症を未然に防ぐことはできないからね。今前進するためには、町や国が一体となるだけではこと足りず、グローバルとして一体になることが必要。
けれども、僕らは不安定な時代に生きている。グローバル化から取り残されている人が世界中にいるんだ。僕らが自国での生活に満足していないなら、他の国の人々に構うのは難しい。自国へのストレスがあるからね。
これが現代の闘争だ。自由、異国への寛容さ、グローバルコミュニティ勢力対、権威主義、孤立主義、民族主義勢力のね。知識の流れ、貿易、移民の勢力対その足を引っ張る勢力。これは国家間の戦いではない。思想の戦いだ。グローバル・コネクション賛成派がどの国にもいる反面、それに反対する人もたくさんいる。
これらのことは、国際連合で決定されるわけでもない。局所的なところで、十分な数の人々が人生に目的と安定を持った場合にのみ起きる。そのとき初めて僕たちは外に目を向け、全人類のことを気に掛けることができる。
最善策は、今すぐ地域コミュニティを作ることだ。どんな人でも、コミュニティから意義を感じることができる。そのコミュニティが家族やスポーツチーム、教会や音楽グループだったとしても、自分が大きな何かの一員であり、孤独ではないと感じさせてくれる。視野を広げる力を授けてくれるんだ。
だからこそ、近年、グループに所属する人が1/4以下になったことが一大事なんだよ。それは、多くの人々が新たな目的を探さなければならない、ということだ。僕はコミュニティーの再建が可能だということを知っている。君たちの多くがもう既にそうしているからね。
今日卒業する、アグネス・イゴイェに会った。アグネス、どこにいるんだい?(イゴイェ氏、手をあげる)彼女は幼少期、紛争地帯のウガンダで人身売買を誘導していた。彼女は今、コミュニティの安全のために何千もの警察官、保安官を訓練している。
(会場拍手)
またもや今日卒業する、ケイラ・オークリー、ニハ・ジェーンに会った。立ってくれ、君たち! この2人は、慢性疾患に苦しむ人々と、彼女たちのコミュニティにいるボランティアを繋ぐ非営利団体を始めたんだ。
(会場拍手)
ケネディスクール(ハーバード大学の公共政策大学院)を卒業するデビッド・ラズ・アズナールとも会った。デビッド、立って! 彼はメキシコシティをラテンアメリカ初の同性結婚ができる市にするために闘い、成功した元市会議員だ。
(会場拍手)
僕もコミュニティの再建をした人間の1人だよ。いち生徒が、コミュニティを一つ一つ繋げて、全世界を繋げるまでそれを続けるんだ。変革は局所で起きる。地球規模の変化でさえも、小さなところから始まるんだ。僕らのような人たちからね。
僕らの世代がさらに繋がれるかどうか、最大のチャンスを活かせるかどうかの挑戦の終着点は、コミュニティーを作る能力と全人類が目的意識を持つ世界を作る能力だ。
(会場拍手)
最後に
2017年卒業のみんな、君たちは「目的」を必要としている世界に入ろうとしている。それを作れるかどうかは君たち次第だ。「本当にできるかな?」と思っているかもしれないね。僕が先ほど言った、少年少女クラブを教育した話を覚えているかい?
ある日の放課後、僕は彼らに大学のことを話していた。優等生の1人が挙手し、「僕は不法移民だから大学に行けるかわからない。入学させてくれるかわからないんだ」と言った。去年、彼の誕生日に朝食を一緒にし、誕生日プレゼントを用意するために何が欲しいか聞いたんだ。
彼はクラスメートの苦労や困難について語り始め、最終的に「社会正義の本が欲しい」と言った。たまげたよ。皮肉屋になっても仕方のない生い立ちの彼が、そう言ったんだ。「自分のホーム」と彼が呼ぶ国が、大学に行く夢を妨げるかもしれないのに。
彼は自分を哀れむことはなかった。自分のことを考えてさえいなかった。彼はより大きな「目的意識」を持ち、人々はそれについていくことだろう。
彼に迷惑をかけたくないから名前は出せないけど(恐らく彼が不法移民のため)、このことは僕らの現在の状況を物語っている。自分の未来も見えない高校3年生が世界の前進に一役買うことができるのなら、僕らもそうしなければならないだろう。
(会場拍手)
君たちが最後にあの門をくぐる前に、メモリアル・チャーチの前にいる今、僕には“祈り”が思い浮かぶ。大きな問題に直面したときに常に言い、娘を寝かせるときに彼女の将来を考えながら歌う。
「先代に祝福を与えた力の源よ、我々の人生に祝福を与える勇気を見つけられるように、どうかお手伝いください」
君たちが、人生に祝福を与えるような勇気を見つけられることを願います。2017年卒業のみなさん、おめでとうございます! 卒業後も頑張って!
(会場拍手喝采)
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