「シビック」といえば、ホンダの代名詞的な存在でもある基幹となる重要な車種。初期型の登場から45年という同社の単一車種としては最も長い歴史を誇る。
だが、先代モデルは海外では発売されたものの、日本には投入されなかった。10代目となる今回の新型モデルも、北米では2015年11月にリリースされ、欧州・アジアでも順次発売。母国・日本への投入は最後となった。北米カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど高い評価を得ているモデルに試乗し、支持される理由を探ってみた。
全車共通となる新型プラットフォームを採用
1972年の初期型モデル登場から長い間、ホンダの基軸モデルとして多くの国で展開されてきた「シビック」は、その過程で販売される地域に合わせて独自の進化を遂げてきた。
特に先代モデルである9代目は、北米ではサイズのやや大きなセダンが、欧州では少しコンパクトなハッチバックが人気であったため、それぞれに異なるプラットフォームを使用していた。
だが、10代目に当たる今回のモデルではプラットフォームを一新。セダンとハッチバック、そしてそれをベースとした高性能モデルの「タイプR」に至るまで、全て同一のプラットフォームを採用している。
ちなみに「タイプR」は320馬力という最高出力を発揮し、今年の4月24日にはドイツのニュルブルクリンク北コースにて“市販FFモデル最速”となるタイムを記録しているが、このタイムにも、軽量で高剛性なこのプラットフォームが大きく寄与しているという。
コンセプトである“操る喜び”を試乗で実感
新型「シビック」のグランドコンセプトとして掲げられているのは“操る喜び”。過去の歴代モデルもレースでの活躍や、「タイプR」の存在によって“走りが良い”というイメージは強かったが、それをさらに昇華させた性能はサーキットで行われた試乗で実感することができた。
ドライバーズシートに着くと、近年人気のSUVなどに比べるとグッと低い着座位置がやる気にさせてくれる。アイポイントが下がるのに合わせて、ボンネットなども低く抑えられているので視界も良好だ。
エンジンは1.5LのVTECターボで、セダンが173馬力、よりスポーティに仕上げられたハッチバックで182馬力(ともにホンダによる社内測定値)と大きな数値ではないが、サイズアップした車体をいとも簡単に加速させてくれる。
変速機構はCVTで、こちらもスポーティなイメージはないが、少し勢いよくアクセルを踏み込むとロスのない俊敏な加速感が味わえる。
これは予想していたより、ずっとスポーティな乗り味だ。
ロー&ワイドな車体が生み出すコーナーリング性能
特に感心したのはコーナーリング性能。今回試乗したのは、通常グレードのセダンとハッチバックのため、足回りは特に固められてはいないのだが、高い速度からハンドルを切ってもスッと思った通りに舵角が付いてくれる。
サスペンションは硬さは感じないものの、荷重によって沈み込んだところでしっかりと踏ん張ってくれるので、安心してコーナーに入っていける。
思いのままに向きが変わって、安心感も高いのだから、その走りが面白くないわけがない。ついついペースは上がってしまうが、それでも何の不安もなく走れるのはベースとなるプラットフォームの完成度の高さによるものだろう。
新型「シビック」のデザインコンセプトは“ロー&ワイド”というだけあり、全幅は1800mmとかなり広い。
かつてのコンパクトなハッチバックというイメージが強い人にとっては、少し違和感を覚える大きさかもしれないが、幅が広く、そして低く構えられた車体はカッコイイと思えるデザイン。コーナーリング性能にも、このワイドな車体は大きく貢献していると思われる。
多くの部分が共通するセダンとハッチバックだが、車体後部のデザイン以外にも、バンパーのルックスやセンターマフラーを採用するなどハッチバックはかなりスポーティなイメージ。
実際に、パワーもやや高められていて、ドライブしていると排気音も元気がいいため、ハッチバックのほうがハンドルを握った際の高揚感は大きい。
新型「シビック」の属するCセグメントと呼ばれる車格は、欧州車ではフォルクスワーゲンの「ゴルフ」やルノーの「メガーヌ」など走りには定評のある実力派揃いの激戦区。
こうしたライバルと競い合うために磨かれた基本性能の高さは、今回の試乗(「タイプR」はおあずけだった)でも十分に感じることができた。北米カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した評価の高さは、このレベルアップした基本性能によるものなのだろう。
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