プラッド・ピットが最新主演作をオンラインストリーミングサービスの最大手「Netflix」で製作、そして、全世界同時配信するというニュースが流れた時、映画ファンはかつてない程時代の変化をリアルに痛感したはず。
今もハリウッドを代表するアイドルスターが劇場からデジタル配信へ舵を切ろうとは? しかし、発表通り作品は完成し、世界同時配信開始日、5月26日までいよいよカウントダウンが始まった!
アフガンに降り立った熱血大将を待っていたのは?
さて、注目の「ウォー・マシーン:戦争は話術だ!」はブラックな笑いと痛烈な皮肉が交差する問題作だ。
実在の人物を描いたベストセラー小説に発想を得たという物語は、ピット扮する陸軍大将、グレン・マクマーンがいっこうに打開策が見えない2009年時点でのアフガニスタンに米軍新司令官として着任するところから始まる。
歴戦の勇士として名を馳せ、己の辞書に不可能などないと確信するグレンだったが、彼を待っていたのは出口のない戦争に疲弊し切った兵士たちと、カルザイ前アフガン大統領の当初の理想など忘れたかのように冷め切った対応だった。
来日会見でブラッド・ピットは語った
スリムになって相変わらず美しい笑顔を見せた会見でのピット。 オバマ前大統領ですら増員を渋る、言うなれば負け戦を、それでもあらゆる策を講じて勝利へと導こうとするポジティブと単細胞と無神経の権化のような人呼んで“ウォー・マシーン”のマクマーンが、めげずに日々の日課であるキャンプ内をガニ股でジョギングする姿は、登場する度に爆笑必至。
配信開始を目前に控えた5月22日の来日会見に臨んだブラッド・ピットはこのジョギングシーンについて、「監督(&脚本)のデビッド・ミショッドがあの走り方を伝授してくれたんだ。マクマーンがジョギングパンツのウエストを乳首の下までたくし上げているのは僕のアイデアだけどね(笑)」とコメントして、集まったメディアを和ませた。
ブラッド・ピット、キャラクターアクター説
ジョギングシーンだけではない。今や戦争に分かり易い勝利などあり得ない時代に、マクマーンの如き“戦う機械”を未だ製造してしまう戦争大国、アメリカの病根、またはシステムを乾いた笑いに絡めて描くのに、ピット以上の適役は結果的に思い当たらないのだ。
その意図してデフォルメされた怪演を目の当たりにすると、彼が“アイドルの風貌を持ったキャラクターアクター”と言われる理由が改めて理解できるはずだ。
Netflixは映像界のロックスター!!
ピット、ミショッド監督と共に会見の壇上に上がった、ピットもプロデューサーとして名を連ねる製作会社、「Plan B(「それでも夜は明ける」と「ムーンライト」でアカデミー作品賞(R)を受賞した独立プロダクション)」のプロデューサー、デデ・ガードナーは、同時にこうも言い切った。「こんなリスキーな企画に共鳴してくれたNetflixは映画界のロックスターだと思うわ!」。
それを受けて、もう一人のプロデューサー、ジェレミー・クライナーは、現在開催されている第70回カンヌ映画祭のコンペ部門にエントリーしているポン・ジュノ監督の最新作「オクジャ」もNetflixから配信されることを例に挙げ(6月28日全世界同時配信)、今後もストリーミングサービスとコラボしていく可能性に言及。
果たして、「ウォー・マシーン」はデジタルユーザーの間でどう受け止められるか? そして、今後ハリウッド映画はどの方向にシフトして行くのか? 映画の見方は本当に変わるのか? 11度目の来日を果たして、「今夜は東京で何を食べようかな?」と笑顔でリップサービスするブラッド・ピットを眺めながら、様々な“?”が頭をよぎった。
【作品情報】
Netflixオリジナル映画『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』
5月26日(金)より全世界同時オンラインストリーミング
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