「タバコ対策後進国」と言われている日本。
WHO(世界保険機関)の評価基準で、受動喫煙防止対策、禁煙キャンペーン、タバコ販売や広告の禁止といった多数の項目において日本は先進国の中でも「最低レベルの判定」を受けている。
そんな世界的な喫煙国の日本も、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて「受動喫煙防止条例」について議論が繰り広げられている。
対立関係にあった「厚労省」と「自民党」
最近、ニュースで耳にすることも多くなった「受動喫煙防止条例」。神奈川県と兵庫県ではすでに条例が施行されている。神奈川県では、公共の空間がある施設を「第1種施設」「第2種施設」に区分し、1種では禁煙、2種では禁煙または分煙と規制している。
全国に先駆けて条例が施行される県もあるが、厳しすぎる厚生労働省の規制案に対して自民党が異を唱えているのが受動喫煙防止条例の現状だ。一体、厚労省と自民党はどんな点で対立をしているのだろうか。
厚労省案「飲食店内の受動喫煙お断り」
自民党が異を唱える厚労省の受動喫煙防止条例の内容は以下の通り。
- 医療施設、小中高校などの敷地内禁煙
- 大学、老人福祉施設、体育館、官公庁施設、バス、タクシーなどは屋内・車内禁煙(喫煙専用室設置も不可)
- 集会場、飲食店、事務所、鉄道などは屋内・車内禁煙(喫煙専用室の設置可)
- 広さが30平方メートル以下のスナック、バーでは喫煙許可
「原則として禁煙」というのが、厚労省の示す受動喫煙防止条例から感じられる。
アルコールを提供する小規模のバーやスナックでは喫煙を許可。しかし、今までに客に喫煙を許可していた小さな飲食店などでは、喫煙専用室を設置できずに“終日禁煙”を強いられそうだ。
サービス業の施設や建物内、駅、空港でタバコを吸えるのは「壁などで完全に仕切られたスペースのみ」となるのが、厚労省の提案する受動喫煙防止条例。
自民党案「飲食店はひとくくりにして考える」
面積、飲食店の種類を指定して一部の喫煙許可をしている厚労省。自民党は厚労省側の案に対して「飲食店の売上減になってしまう」と考えを示した。
- 一定の面積以下の飲食店では、喫煙の表示を義務付け
- 原則禁煙とする店の基準緩和
飲食店では「原則禁煙」とする厚労省に対し、自民党ではバーなど以外の飲食店でも「喫煙」「禁煙」の表示義務を果たせば喫煙可能とした。
厚労省の案よりも、喫煙者たちに優しい案の自民党。
厚労省は、喫煙可能な店で働く従業員の健康への配慮をする他に、オリンピック開催都市で屋内全面禁煙となっていたことから、自身の受動喫煙防止条例を曲げられないようだ。
小池都知事も参戦? 都議選争点の1つとなるか
オリンピックや国民の健康を考える厚労省。飲食店の売上減を懸念する自民党。譲れないものがある両者が攻防を繰り広げる中、東京都の小池知事も参戦した。
7月2日が投票日の都議選。豊洲市場問題はもとより、受動喫煙防止条例も都議選の争点の1つとなりそうだ。
小池都知事は、自身が率いる「都民ファーストの会」の公約に受動喫煙防止条例を盛り込むとのこと。公約の内容は厚労省の案に近いものにする考えで、「厚労省VS自民党」の行く末もわからなくなってきた。
白熱する「受動喫煙防止条例」に厚労省が譲歩
小池都知事参戦で、厚労省案に追い風か? と思った矢先、厚生労働大臣の塩崎氏が“譲歩”とも捉えられる発言をした。
「党の意見も踏まえて調整したい」。今まで頑なに厚労省案を曲げることのなかった塩崎氏がこのような発言をした背景には、5月15日(月)に乗り込んだ自民党の部会での話し合いがある。
部会で協議がまとまらず、「今の厚労省の案のままというわけにはいかないだろう」と塩崎氏は述べた。受動喫煙防止条例の決着は、自民党と厚労省の折衷案となるのだろうか。
愛煙家も嫌煙家も注目する「受動喫煙防止条例」。今回の都議選では、公約に受動喫煙に関することが盛り込まれることから注目度も高くなりそうだ。
2020年のオリンピック・パラリンピック開催まであと3年。日本の受動喫煙問題を解決するのは、「歩み寄り」なのだろうか。
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