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【書き起こし】Google社を創業したセルゲイ・ブリンが語る過去の失敗、早く失敗することの重要性

森澤

2017/05/22(最終更新日:2017/05/22)


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by jurvetson
 今や世界で最も利用率が高い検索エンジンであるGoogle。そんな名高いGoogle社は、98年にスタンフォード大学の2人の学生によって創業された。彼らの名前は、セルゲイ・ブリンとラリー・ページ。

 米ビジネスインサイダー誌によると、共同創業者ブリン氏は2016年時点で「世界で12番目に裕福な人」とのこと。今回のテーマであるブリン氏のスピーチは、壮大な挑戦を目的とするX社が提供したものである。

 彼はそのスピーチで、「早いうちに失敗する価値」について語った。Google社の共同創業者という栄冠を勝ち取った彼は、失敗をどのように捉えているのだろうか。

早期段階で失敗することが重要なんだ

1:39~より抜粋

学生時代のオンライン注文計画の話

 「皆さん今日はお越しいただきありがとうございます」と彼は先ず述べ、X社にいる人々に賛辞を贈った。

まず20年前、ただのスタンフォードに在籍する生徒だった頃のことを振り返りたい。この話は今まででに一度しか話したことがないから、多くの人は知らないでしょう。それはファックスに関する話で、ファックス1つでの失敗がどうやってGoogleを生んだか、という話だ。

僕がスタンフォード大学で学び始めた当初――つまり93年から94年あたり――Web業界は壮大で、人々はワクワクしていた。そして、僕とスタンフォードの友人が早い段階から練っていたのは、「Webは最高だ。僕らが本当に必要としているのは、Webを使ってピザをオンラインで注文出来るサービスだね」という計画だったんだ。現在なら、レストランによるオンラインデリバリーサービスは何百個もあるし、注文するのは大したことないだろう。

だけど、当時は凄く大きな事柄だった。それが出来たら最高だったんだ。僕らは院生で、お腹を空かす時もあったからね。僕らはオンラインサーバーを立ち上げる簡単なスクリプトを書いた。オンラインサーバーを立ち上げるのは、実は当時の方が容易だったよ。20行くらいのPerlスクリプトで済んだからね。

でも残念ながら昨今は、簡単なWebプログラムでも僕には出来ない。当時立ち上げたオンラインサーバーの機能は、食べたいものをチェックし、それをピザ屋のファックスへ送信するものだった。何故ファックスに送信するものにしたかというと、当時は限られた人しかウェブを利用していなく、ピザ屋はEメールのようなものを持っていなかったから。

そこで僕らはファックスを取り扱っているピザ屋の一覧を発見。当時はインターネットファックスサービスがあって——それがどう呼ばれていて、どう動いていたか忘れたけど——DNSを使った方法で番号を入力すると……あら不思議、ファックスはそこへ送られる。

それで、初期の動作テストとして、僕らでピザを頼むことにしたんだ。Webサーバーを起動し、トッピング込みで食べたいピザをチェックし、決定を押した。そしてそれが、スクリプトを起動してインターネットファックスサービスに送られる。恐らくそれがピザ屋へ送信されただろうとして、僕らは待ち続け、次第にお腹が空いてきた。

何時間かして、僕は耐えられずにピザ屋を電話し、「注文をファックスしたはずだけど、配達してくれないの?」と聞いたんだ。そしたら相手が「少々お待ちください。ファックスを見に行ってきます」と答える。そこで初めて、たとえファックスを持っていても彼らはそれを確認しないから、この計画は上手く行かないと気付いたんだ。その結果、このアイデアは失敗に終わった。

それから、僕はラリー・ページと一緒にデータマイニング、ウェブのリンク構造の作業をし、やがてGoogleが生まれた。

オンラインデリバリーサービスの失敗が生んだこと

計画が失敗したのは、実は僕にとってとても幸運なことだったんだ。当時、そのファックスプロジェクトが実施された可能性もある。そして、「これは素晴らしいアイデアだ」ってなり、他の注文方法を模索するのに力を沢山入れてたかもしれない。

これは、人生やその過程の気まぐれな部分の1つだ。しかし、挑戦や問題、重要性は「成功する確率」とあまり関係ないことを最近になって気付いた。そして、更に高い目標を追求して、それに失敗したとしても、その過程にある全ての副次的影響というのはそれだけで一層価値があり、重要になり得る。

それで、僕は本当に大事だと感じるもの——世界中の人々がどのような情報でも得られるようにすること——に行き着けたのをとても嬉しく思う。このことを全世界の人に伝えられる方法があればな、と思うんだ。

この場に出席している皆さんがこういう思想を持っているのは明白だけど、大きな効果を生むと思う何かに打ち込むことは、とてもやりがいのあることなんだ。そして少し難しいことだけど、それに付随させる情熱は、成功する確率を上げるほどに活気を生む。

早期段階で失敗する大切さ

他に、僕らがGoogleで他の会社や人々を観察することから次第に気付いたのは、開発サイクルと、物事を早く変更できることの重要性だ。何故なら、間違いなく失敗をするし、間違えたアイディアを持つことになるから。でも、直ぐに失敗することが重要なんだ。あの時、試運転が上手く行かなくて良かった。

仮に、長期間の開発サイクルが欲しいとして、何十年、何十億ドルもかけるのは早期の失敗方法としては良くない。その過程で多くの学びを得たいとしても、それを達成できる可能性はとても低い。Google Glass(グーグルグラス)では、僕らは「毎月、完全に新しいハードウェアとソフトウェアを開発する」という思想を取り入れた。

それを7つのバージョンくらいまで続けた。完全に忠実にとは言えないけどね。残念ながら、開発スピードは販売に近づく(注:これは2013年のスピーチ)に連れて徐々に遅くなったが、その繰り返しは重大な効果があったと思う。1つ1つで僕らは多くのことを学んだ。

物事を早く進めないほうが良い理由は沢山ある――肝心なツールが完成するのに時間かかるし、エンジニアが適切なデザインを作る時間を設けられなくなったり、あれこれと直ぐに変わったりね。早い開発サイクルではない方が良い理由は、何百個もあるんだ。でも、最終的に、僕は早い開発サイクルで良かったと思う。そして、僕は様々な種類の製品でそれを多く見てきた。

そして究極的には、早い開発サイクルは“本当に大切な変更”をさせてくれる。その商品で大切だと思っていた要素は、「もしかしたら真に重要な事柄ではない。そして僕らが翌月取り入れようとしている要素が、この製品の本当に大切なエッセンスになるかもしれない」ということもあるんだ。

何はともあれ、ここにいる皆さんの様々なプロジェクトの成功を願いたい。ここにいる皆さんの情熱は、素晴らしい。あなた方のプロジェクトが大きくなり、アイディアが実現することを楽しみにしています。ありがとうございました。

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