最近、ロボット技術の進化は目まぐるしい。ロボットに不可欠である人工知能は、囲碁でトッププロ棋士に勝利を収めた。数々のボードゲームの中でも、手順が殊に複雑であると言われている囲碁で、このような快挙を成し遂げて「しまった」AIは、今後人間に対してどのような脅威を振るうのだろうか。
我々が一番心配するべきは、人間が不要となってしまうことなのだ。つまり、ロボットによる自動化で、大半の職がなくなってしまうことである。この懸念については、世界的に有名な物理学者スティーヴン・ホーキング氏、PayPal社の前身となるX.com社を創立したイーロン・マスク氏が声を上げ、解決策を提案した。
そして、進化するロボットに対し、Microsoft社の共同創業者であり、慈善活動に大いに携わっているビル・ゲイツ氏が米Quartzによるインタビューで、ロボット税に賛同した。今回は、長年科学技術に携わってきたこれら3人によるコメントの和訳・書き起こしを行う。
仕事をロボットが担ったら、人間の存在意義は?
スティーヴン・ホーキングが綴るロボット技術の脅威
これは英The Guardianでの、ホーキング氏の投稿記事から抜粋したものだ。
工場の自動化は既に従来の製造業を潰している。そして、人工知能の到来により、この「職の奪取」は中流階級にまで及び、最も優れた介護職、クリエイティブ職、監督職しか残さない。
このことはまた、既に世界中で拡張している社会格差を更に付勢する。インターネットとそれを可能にする基盤(プラットフォーム)は、ごく少数の人々に、僅かな人員で莫大な利益を得ることを可能にする。これは、避けられない。これが発達なのだから。しかし、これは社会的に見ても破滅的なのだ。
彼は、今人々が技術で世界を滅ぼすためにしか使えておらず、それを避ける能力は備わっていないと指摘する。技術に脅かされる様々な問題(環境問題、経済的格差の拡大、就職難など)を解決するには、世界が一丸となり、富裕層に集中している資源を共有する必要があると書く。
職だけではなく、産業全体が消えつつある今、我々は新たな世界の為に人々が再教育を受けるように導き、彼らがそれを受けている間、経済的支援を行わなければいけない。
イーロン・マスクの意見
※動画22:41~27:22より抜粋(この対談は世界政府サミット2017、ドバイにて行われた)。
マスク:しかし、高い失業率はどうする? これは大規模な社会問題になる。最終的には、全世界でなんらかの形の最低所得保障が必要だと思う。そうせざるえない。
ーー全世界での最低所得保障ですか? それは、全世界の失業した人々に支払われるということですよね。ロボットや機械が職を奪うからですか?
マスク:今後、ロボットが人間を上回らない仕事は徐々に減っていく。この読みが当たっているのだとしたら、解決策を練る必要がある。そこで私は、全世界の最低所得保障が必要だと思う。
財とサービスの産出量はとても増える。だから、自動化によりそれらは豊富になるだろう。殆どの商品がとても安価になり、最低所得保障に行き着くのだ。しかし、更に困難な問題は人間の存在意義である。多くの人々は、自分の存在意義を仕事から見出す。
だから、自分が働くことが必要とされていなかったら、存在意義は? 自分は無用だと感じるだろうか。これは、より難しい問題である。
彼はこれに対抗する道筋は見えていると語る。その自らの考えをSFと称し、人間知能と人工知能の合併という解決策を提案した。
ビル・ゲイツが提唱するロボット税
この動画は米Quartzによるもので、このインタビュー記事の要点をまとめたものである。本稿では、インタビュー記事の和訳を行う。
ーーロボットに課税することについて、どう思いますか? これは、自動化により、製造業などで失業した人が職業訓練を受けるための基金を、国が確保するためのものです。例えば、ロボットを利用している工場に課税することを指します。
ゲイツ:オートメーション(自動化)に関する課税は間違いなく行われるだろう。現在
、労働者が工場で50,000ドルに見合う仕事をしたとして、その収入は課税され、所得税、社会保障税などが差し引かれる。ロボットが同じことをしたとして、同程度でロボットに課税すると思うのが普通だ。
そして、世界が必要としているのはこの機会を利用して、全ての財・サービスから労働者を解放し、高齢者へ働き掛け、教室の規模を収縮し、特別なケアを必要とする子供たちを手助けすることなんだ。
ほら、これらはどちらも人間特有の理解や共感が必要な分野だから。そして、我々は未だに、これらの分野で圧倒的な人員不足問題に窮している。だから、ロボットが人に代わって労働し、失業した人々を経済的に、職業訓練や実践の方向に他の職(上記にある分野)へと導けたら、人類は前進できるんだ。
それを現実にするための基金財源の一部となるのだから、ロボットへの所得税を断念することは出来ない。ロボットによる新たな生産性から、更なる税を生み出す方法はたくさんある。厳密にどう課税し、(税を)計測するかを、今議論したら興味深いだろう。
その税のいくらかは、労働者削減による利益から生まれてもいいだろう。また、ロボット税が、なんらかの直接的な形で徴収できてもいいと思う。税があるかもしれないからといって、ロボット会社が怒り狂うことはないと思うんだ。
ーーロボット税がイノベーション意欲を削がない方法を考えれますか?
ゲイツ:人々が「ロボットは、労働者を職から立ち退かせるから損失だ」と言っている現在、ロボット税を導入し、ロボットの普及速度を落すことに対して、多くの人は前向きだろう。そこから、ロボットの登場によりどの業界が大影響を受けるのか、どのような移行プランが上手くいって、どのような財源調達が必要となるのか考える時間ができる。
ロボットによる特定な分野での労働代替は、一度に来る。間違いなくこの20年間で、倉庫作業、運転業、清掃業などの多くの存在意義を持つ職種で、思いやりのある余剰な場面でのサービスは利益になる。それに準ずる政策を持つことが大切だ。
全体の人が、イノベーションがすることに対して、期待よりも恐怖が上回っていたら、とても良くない状態なんだ。それは、人類がロボットに出来る良いことへの発達を妨げることを意味するよ。
そして課税は、ロボットの一側面を禁止にするよりも、絶対に良い方法だ。イノベーションは多くの形を持つ。例えば、レストランでのセルフオーダーだ――あれはなんて呼ぶ? シリコンバレーからの機械で、人手を全く要せずともハンバーガーを生産できるものがある――本当さ(笑)!
ーーこれ(ロボット税による効果)を実現するためには、企業側というよりも、政府がどうにかしなければならないと思いますか?
ゲイツ:まあ、企業側にはそれは出来ないからね。格差社会についてどうにかしたいのなら、ロボットによりあぶれた労働力が、低収入の人々を支援する必要がある。つまりこれは、高齢者や身体障がい者への社会福祉を強化し、より多くの労働人員を教育分野に割くということだ。
その成果の一部は、「(恐らく国のことを指す)我々はより豊かになり、より多くの人々がものを購入するだろう」ともなるだろう。しかし、格差社会については、政府が絶対に大きな役割を担うことになる。税の素晴らしいところは、資源を手に入れたことと、それをどう使うかという問題を分離することなんだ。
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